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#大衆食堂
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#追放
――――今年の8月も猛暑だ。 優華(ゆうか)の勤める『大衆食堂時家(ときいえ)』は冷房が効いているが、ホールでお料理を運んでいるとすぐに汗だくになる。
優華
真木野優華(まきのゆうか)31才は今日もワンルームマンションでササっとお化粧をしデニムパンツに、ピンク色のカットソーを着た。フリルがふんだんに使われたお気に入り。本当はミニスカートを履きたいが、食堂の仕事には向かない。足元は紺色のスニーカー。
職場までは徒歩20分。運動になるから良いのだ。日々歩いているせいもあってかグラマーだが引き締まったウエストの優華。おしゃれをすればかなりイケる女なんじゃないかと自負している。
優華
優華の艶やかな黒髪がキュッと瑞々しく結ばれた。白地に紺の水玉模様のシュシュで飾る。
優華
誰もいない部屋に必ず元気に言って出て行く。
――――今日も駅前は人だらけ。 優華は都心のZ区民だ。
優華
スーツを着た派手な雰囲気の男性が近寄って来る。
和彦
優華
即立ち去ろうとする優華に茶髪のセンターパーツヘアーのイケメンが言う。見るからにチャラいけど、クールな男前!
和彦
優華
風俗のスカウトね!? あたしがブランド物の服とか着ていないから喰いつくとでも思ったのかしら! なんか気分悪
10メートル以上歩き振り返るとその男性はまだこちらを見ていた。
やだ、怪し過ぎ!
――――容赦なく照り付けるおひさまのもと、汗を拭いつつようやく『大衆食堂時家』に到着した優華。
大将
優華
毎日朝9時が優華の始業時刻。お店が開くのは10時。 オープンまでテーブルを拭き床のモップ掛けやちょっとした窓拭きなどをする。
このお店のランチタイムは大将夫婦と優華とバイト君2人で回す。大都会特有の小さめの店舗なのでお客が多くてもなんとか回せるのだ。
さっそくエプロンを着け掃除に取り掛かる優華。
ママさん
大将の妻であるママさんだ。
優華
ママさん
優華
優華がテーブルをアルコール消毒しつつ答える。
耕太
そこに出勤してきたのは大学生のアルバイトの耕太(こうた)だ。今日のスタッフは大将と、ママ、優華と耕太、そしてマイペースで遅刻の常習犯・フリーターである隆(たかし)という顔ぶれ。
優華
優華が問う。
耕太
優華
朝の茶髪で高級そうな時計を付けていたスカウトマンがパッと脳裏に浮かぶ優華。
優華
耕太
優華
耕太
優華
耕太
大将
と、煮物の鍋の前で大将。 続けて大将が言う。
大将
耕太
大将
***
その日の夕方までも店はてんてこ舞いだった。この店にはいろんなお客が来る。カップルや家族連れも来るが、朝まで飲んでいた玄人の女性やホストなども多い。
優華
夕方は少しだけ、ほんの少しだけ暑さがマシだが。
駅前の色街辺りの人の流れが加速して見える。8月の17時過ぎはまだまだ明るいけれども。
和彦
優華
明るい声で男性に声を掛けられた優華。右隣にいつの間に、いた! 今朝のスカウトマン。
和彦
優華
一言残し優華は立ち去った。
むー。ムカムカする。容姿を認められているのかなっていう喜びよりも、軽薄に見られてるんじゃないかって感じ、ムカつく。それに超鬱陶しい!
なにもなくても仕事で疲れているところ、しつこくされイライラ。
優華はシャンプーをし、フワッフワの泡に包まれた体を丁度良い温度のシャワーで洗い流した。 バスタブに浸かりホッとした時、なぜか優華は思い出した。あのスカウトマンを。
うん、カッコよくはあったなー……
優華
ザバッと湯船から出た。
――――そして翌朝。
優華
外は暑いが、やる気満々で目覚めの良い優華。 朝のシャワーですっきり。
優華
ハムエッグトーストに美味しいコーヒーを戴いて、と……さて出勤。
優華
今朝は蒸し暑い。
そういえば明後日ぐらいが雨って言ってたっけ、天気予報で
いつもの駅前を軽快に歩いて行く優華。
和彦
や、やけに元気な男の人の声。この声って……?
振り向くとやはりそう。例のキャバクラスカウトの人。
和彦
優華
和彦
優華
こうやって世の女性たちを言いくるめてんのね! けしからん
和彦
優華
プイッと優華は『時家』を目指した。
今日の優華は20メートル先で振り返った。 今日もこっちを見ていた怪し過ぎる音無和彦とやら。
***
優華
隆
優華
彼女が嬢の仕事をするという件だな……
心配そうに耕太を見る優華。
耕太
大将
耕太
優華
たしかあのスカウトマンが言っていた店名……
ママさん
大将
耕太
大将
耕太
ママさん
優華
大将
そうやってみんなで耕太を慰めている間に時家のオープン時刻がやって来た。
じゃあ、あの和彦とかいう人も怪しい人ではないということかな……? あ、あたし、なに気にしてるんだろう。お仕事お仕事!
さっそくカップル客の入店だ。その後に家族連れが3組も立て続けに入って来た。
優華
優華
手際の良い優華の生き生きとした美声が響き渡る。
優華
伝票を厨房の前の台に置いて行く。
今日は特別忙しい、オープンから1時間経った。
優華
やはり顔色の曇っている耕太へと隙を見て声を掛ける優華。
耕太
優華
隆
優華
――――今日のランチタイムも大繁盛の『大衆食堂時家』であった。夏休みのせいだろう、小学生の子どもを連れた家族のお客が多かった。
17時からは夜のバイトの人と交代だ。
帰路を辿る優華。
夕方になって湿度が増してるな~。やっぱ明後日は降るのかなー……。あ!
あれに見えるはスカウトマン、和彦。
スカウトマンというものはだいたいなんとしても『イイ娘』を見つけるためキョロキョロしていそうだが、今の和彦は人待ち顔だ。
優華は忍者さながらなるべく気配を消し行こうとした。
和彦
なんだろ、憎めない感じ
優華
和彦
その和彦の言葉に間髪入れず返事をする優華。
優華
和彦
いつになく真剣なまなざしの和彦。
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