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#大衆食堂
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#追放
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優華
和彦
ハ
凍り付く優華。見ず知らずの女性にそんなこと言う? 演劇部じゃないんだから。
優華
和彦
お、なにやらいつものおちゃらけムードと様子が違うぞ、兄さん。
和彦
しつっこい
言葉を遮る優華。
優華
うつむき、しゅんとした様子の和彦スカウトマン。
あ、ちょっと強く言い過ぎちゃったかな……。な~んかこの悪質スカウトマン、ほっとけない。なんで?
和彦
優華
こんなチャラ男が謝るんだ。まあ、人を見た目で判断するのは良くないよね……
優華
和彦
出勤の時のようにしばらく行き、振り返った優華。 和彦はやはり優華のほうを見ていた。
あ、また。見てるよね、こっち。粘着質タイプ? もう、良い、良い! 気にしないっ
――――なんだか……帰宅後も和彦のことが気になってソワソワ落ち着かない優華である。
「はい、お気をつけて」だってさ。やっぱ悪い人じゃないのかな~? 謝って来たし。にしてもなぜスカウトなんかやってんだろ
時家が大忙しだったせいか、お風呂を上がるとバタンキューの優華であった。
――――翌朝。お天気、曇り。
遠目にも和彦のことが分かるようになってしまった優華。まあかなり派手なので目立つ男なのだが。
いる!
今日もくノ一(くのいち)のように息を押し殺し、和彦の近くを行く優華。
きのうはお兄さん、神妙な面持ちだったけど……どーせ、また声掛けて来るんだろうな~。諦めてるよ、あたし
ところが、優華が通り行くことを知ってか知らずか、和彦はキョロキョロと嬢の卵を探すスカウト活動に精を出している風だ。
あれ? なんか拍子抜け……。ハ! これが手口かもしれない! 女の子の気を引くための……
疑り深い女だと自分でも思う。しかし、気を抜くもんかと急ぎ足でその場を去って行く優華。
ママさん
優華
大将
厨房からガラス戸の外を眺め大将が言う。
耕太
優華
耕太の顔色が良く、彼女の店の話、折り合いがついたのかな? と考え、あえて優華は舞衣子ちゃんのキャバクラの話題を控えた。
隆
隆がやって来た。そして即座に耕太のもとへ駆け寄る。
隆
耕太
大将
耕太
そっか~。耕太君、偉いな
優華はなにも言わず窓拭きを始めた。
本当にひと雨来そうな空の色。
あ、傘がないー
仕事は出来るがちょこちょこっとしたドジをする優華だ。
12時前からポツポツと雨が降り出した。
優華
ママさん
優華
大将
ちなみに耕太は自転車でカッパ。常にカバー付きである自転車のカゴに入れているらしい。のんびり屋の隆は意外にも自分用の置き傘を店に置いている。
優華
大将
優華
***
『大衆食堂時家』は天候のせいかお昼間、お客さんが少なめだった。
ママさん
優華
ニッコリ微笑む優華。
ママさん
優華
隆
大将
優華
大将
優華
ママさん
優華
8月の夕暮れ、いつもならもっと明るい空だが今日は低く雲が垂れこめている。 店外を道行く人々に目をやれば、多くの人が傘をさしているが、さしていない人も結構いる。
優華
大将
早歩きで帰り道を急ぐ優華。最初は良かった、小降りでね、最初は。
店を出、7分ぐらい歩いた所、丁度駅前に来る頃、ピカッ! と空がギザギザの光の模様をつけ、雷様の太鼓が轟いた。と思ったら、一気に土砂降りだ。
優華
優華が走り出そうとしたその時だ。
和彦
スカウトマンの和彦だ。
自分が使っていた傘を、そのまま優華に差し掛け渡そうとする。
優華
和彦
大き目のビニール傘を半ば強引に握らされた優華。 和彦は風のように消えて行った。びしょ濡れになりながら。
傘というシェルターを手に入れた優華はそれまでの早歩きから解放され、少し落ち着いた足取りとなった。
悪いことしちゃったな~。風邪ひかないかな、お兄さん……。マジで良い人かも、顔も好みだし
と……妙に高鳴る優華。
***
優華は帰宅すると、バサバサと傘の飛沫(しぶき)をマンション前の軒下で落とし、自室の302号室へと階段を上った。エレベーターのない5階建マンションだ。
優華
早速バスルームへ直行である。
散々だったお天気にくたびれた体をピカピカに磨き、湯船につかった。
優華
浴室にバスソルトの香りが立ち込める。イランイランがお気に入り。
体がリラックスする。
和彦さん、か……
雨に打たれ去って行く時の、引き締まった体を思い浮かべたりしちゃって優華は、自分を突然スカウトしなくなった和彦のことばかり考える。
――――そして翌朝。 きのうの雨が嘘のように空は鮮やかな青。
優華
優華は出勤直前に、和彦から借りた乾いた傘の留め具をクルクルと巻き、ボタンをパチンと留めた。
優華
いつものように部屋を出た。 今日頑張れば明日は休日だ。
明日、家事とストレッチが終わったらなにをしようかな~。お家映画でもしようかなー
なんて考えつつ通勤の道を行く優華。
もちろん手には和彦の傘。
優華
和彦がいつもの場所にいるが、20代と思わしきキャピキャピした女性に声を掛けている。
チクリ! え、あれ? あたし嫉妬してんの? なんでだろう……
優華が少しゆっくり時家の方向へ向かい、和彦の10メートルぐらい手前を歩いていると、不意に和彦が振り返り、優華に気づいたようだ。 和彦からにこやかに会釈をした。
優華も頭を下げた。
まるで待っているかのように、和彦は歩く優華を見つめている。
やだ、なんか恥ずかしい。てか、傘を待っているのよね。うんうん
ちょっぴり緊張する優華。
優華
和彦
優華
和彦
あ! 隆君は置き傘置いているよな、それ良いかも
ずうずうしくも思いついた優華。
優華
和彦
優華
和彦
優華