テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

一覧ページ

彼岸湊の事件簿

第5話 - 幕章その1 転校生後篇

2020年10月08日

#ミステリー

#探偵

#高校生

日向

昼休み教室

アリス

悠さんのお弁当美味しかったです！

悠

そうだろう？

アリス

はいなのです！！

アリス

わわっ！！

湊

…

2人の前を歩いていた湊が教室の出入口で立ち止まり、アリスが湊にぶつかる。

アリス

み、湊さん？どうかしたのですか？

湊

…

アリス

湊さん？

クラスメイトA

彼岸さんてさ〜調子乗り過ぎじゃない？

アリス

！！

クラスメイトが教室の一角で、湊のことについて話していた。

クラスメイトD

だよな〜。それにあいつがあの事件を解決したせいで桐生がいなくなって詰まらないんだよなぁ。

クラスメイトC

ねー、ちょっと事件を解決したからって調子乗り過ぎ。正直言って邪魔なんだよね。

アリス

事件？

アリスが湊の後ろで呟く。

アリス

何か…あったのですか？

悠

(…いずれ知ることになるだろう。話しておこう。)

悠

ああ、それはな…

悠が1週間の事件の事を話す。

クラスメイトC

あんたもそう思うよねー？

クラスメイトB

い、いや僕は…

クラスメイトD

今日転校して来た八雲を、坂下とか東雲の代わりとでも思ってんじゃねぇの？

湊

っ！！

湊が話をしているクラスメイト達に近付こうとする。

桜

あんた達！それは言い過ぎじゃない！？

そこに桜が現れる。

クラスメイトA

な、何よ桜…

桜

言い過ぎって言ってるの！

湊

島崎さん…

クラスメイトD

な、なんだよ急に…

クラスメイトD

だってあいつ全然、悲しんでるように見えねぇじゃん。

クラスメイトD

事件起こった時、楽しそうにしてたんじゃねぇかなぁ。

クラスメイトA

そうそう、ほんとはどーでもいいじゃない？2人の死なんて。

クラスメイトD

それにあんな目立たねぇ奴が殺人事件を解決出来るわけねぇよな！

クラスメイトC

確かに〜。本当は彼岸さんが2人を殺したんじゃないのかなぁ？

クラスメイトC

自分が人気者になる為に事件を起こすために！

桜

！そんなわけな…

アリス

湊さんがそんな事するはずないです！！

悠

今のは聞き捨てならないな。

クラスメイトD

な！？八雲！？

クラスメイトC

それに蘇芳君！？

クラスメイトC

…ってことはもしかして…

湊

…

湊は先に教室へ入っていった2人に近付く。

クラスメイトA

ひ、彼岸さん…

桜

もしかして…今の聞いてたの？

湊

うん。

桜

…

湊

島崎さん、さっきは私を庇ってくれてありがとう。

桜

…あ…

桜

ごめんね、彼岸さん、私…

湊

島崎さんが謝る必要ないよ。

悠

ああ、あんたは悪くない。

アリス

そうなのです！

悠

悪いのはこいつらだ。

クラスメイトD

っ！？なんだよ！

アリス

さっきの言葉取り消してください！

クラスメイトD

あ！？

アリス

湊さんが2人を殺したっていう発言です！！

クラスメイトD

はぁ？なんだよお前。

アリス

え？

クラスメイトD

なんで何も知らねぇお前が口挟んでんだよ！

アリス

い、いえ事件の事は悠さんから…

クラスメイトD

それが何も知らねぇって言ってんだよ！！

アリス

ひうっ…

クラスメイトA

こいつはね！事件翌日何気ない顔で過ごしていたのよ！？

クラスメイトC

うん、事件翌日に、2人が亡くなったって聞かされた私達でも悲しかったにねー。

クラスメイトA

だから、ほんとは悲しくないんじゃない？って真実を言ってるだけ。

桜

悲しくない訳がないじゃん！！

桜

だって親友が亡くなったんだよ！？

桜

本当は悲しいに決まってるわよ！

悠

ああ、こいつは間違いなく悲しんでるさ。

クラスメイトD

は？じゃあ証拠でもあんのかよ。

悠

湊の顔を見てればわかる。

悠

湊はここ1週間1度も笑っていなかった。

悠

それが証拠だ。

クラスメイトD

そんなの証拠になんねぇよ！俺らはあんまり話さねぇんだからさ。

悠

ふ、笑かすな。

クラスメイトD

は？

悠

さっきお前、アリスに

悠

何も知らない奴が口を挟むなって言っていたな。

悠

お前こそ湊の事全然知らねぇじゃないか。

クラスメイトD

っ！…じゃあ坂下の事はどうなんだよ。

クラスメイトA

そんなの決まってんじゃん！

クラスメイトA

あんなどうでもいい人間が死んだところで悲しい訳がないって！

クラスメイトA

だって私も全然悲しくないからね〜。

湊

…

桜

！

桜

あんた！言っていいことと悪いことが…

湊

…どうでもよくない。

クラスメイトA

え？

湊

坂下さんはどうでもいい人間なんかじゃない。

クラスメイトA

あははっ！あんな居てもいなくてもいい分からない奴が？

クラスメイトA

それに彼女、虐められてたんだって？

クラスメイトA

そのせいで東雲さんを殺したらしいじゃない！

クラスメイトA

あんたは彼女を恨んでるんじゃないの？

クラスメイトA

その上、自殺して逃げたのよね！？

クラスメイトA

それって卑怯じゃないの？

クラスメイトA

そんな奴の事をあんたは庇うの？

湊

…確かに坂下さんは卑怯者かもね。

湊

それでも彼女は、自分の虐めの矛先が私に向かないようにとやってくれたこと。

湊

恨みたくても、恨めないよ。

クラスメイトA

だから親友を殺したことを許すって？馬鹿じゃないの？

湊

そこまでは言ってない。

湊

確かに坂下さんのしたことは許せない。

湊

でもね。

湊

いらない人間なんかじゃない。

湊

彼女のお陰で私は今こうやって普通に生活してる。

湊

もしかしたら私は桐生さんに酷いことをされてたかもしれない。

湊

そんなことにならないように、精一杯努力してくれた…

湊

まぁでも、坂下さんが選んだのは最悪の方法だったけどね。

湊

…そこは認める。

湊

けどそんな彼女をいらない人間なんて言わせない。

クラスメイトA

…

悠

湊…

桜

…彼岸さんにとっては東雲さん、坂下さん、どっちも大切な人だったんだね。

湊

うん。

湊

それに友達が虐められいた事を気付けなかった私も悪い。

湊

だからせめて、死んでもいいとは言われたくない。

クラスメイトA

…それ東雲さんの家族の前でも言えるの？

アリス

…あ…

湊

言えるよ。

湊は微笑んで答えた。

湊

だって私にとってはどっちも大切な人だから。

湊

その大切な人の名誉を守れるなら、私はどんなに罵られようと構わない。

悠

大丈夫、お前だけじゃない。俺だってその時は一緒に坂下を庇ってやる。

アリス

私もです！その人の事はあまり知らないですけど、湊さんの友達だったら私も守りたいです！

湊

ふふ、ありがとう2人共。

湊

でも2人も私の大切な人の中に入ってるから…その時は心苦しいな…。

悠

ふ、気にするな。お前も俺のその大切な人って言うのに入ってる。だから、な？

アリス

私も湊さんを守りたいです！その大切な人って言うのはよく分からないですけど、きっと湊さんもその大切な人の中に入ります！！

桜

はぁ、あんた達よくもまぁ、そんなクサイ事を…

桜

でもまぁ、嫌いじゃないね。

クラスメイトD

彼岸、俺少し言い過ぎたみたいだ。

クラスメイトD

ごめん、お前が悲しくないなんて言って。

湊

ううん、分かってくれればいいの。

湊

ありがとう、謝ってくれて。

クラスメイトD

お、おう。

クラスメイトD

蘇芳もごめんな。

悠

ふ、ノープロブレムだ。

クラスメイトD

八雲もごめん。キツく言っちまって。

アリス

いえ！のーぷろぶれむです！

クラスメイトB

僕もごめん…

クラスメイトB

直接は言ってないけど…もしかしたら彼岸さん、悲しくないのかなって思ってて…

湊

気にしないで。私あまりクラスの皆と話さないから、そう思うのは当然。

湊

それに何を思おうが、個人の自由。

湊

別に気に病むことはない。

クラスメイトC

わ、私もごめんなさい。

クラスメイトC

あなたが2人を殺したなんて酷いことを…

湊

そう結論に至るのも当然。

湊

こんな何処にでも居る物静かな高校生が、殺人事件を解決出来るなんて思わないもの。

クラスメイトA

な、何よ。皆なんでそんな素直に認めれるわけ！？

彼女は別に湊に恨みがある訳でも、結月に特別な感情がある訳でもない。

ただあそこまで言ってしまっては、後に引けなくなった、という訳だ。

桜

あんたもいい加減素直になりなよ。

桜

別に彼岸さんが嫌いって訳じゃないんでしょ？

クラスメイトA

ううっ…

クラスメイトA

わ、悪かったわよ。坂下をいらない人間って言って。

そう言うと、彼女は自分の席へと戻っていった。

悠

素直じゃないなぁ…

湊

そうだね。

湊

でも一応は謝ってくれたのかな。

桜

あはは…そうみたいだね…

アリス

これで一件落着なのです！

悠

みたいだな。

悠

それじゃ俺達も席へ戻るか！

湊

そうだね、そろそろチャイムも鳴るし。

アリス

です！

湊達も自分の席へと戻っていった。

放課後中庭

今日の授業も難なく終わり、いつも通り湊は中庭で、悠を待っていた。

湊

ごめんねアリス。付き合わせちゃって。

アリス

いえいえ！私も湊さん達と一緒に帰りたいですから！

湊

迎えとかは来ないの？

湊

リムジンとかで。

アリス

りむじん？

湊

うん、あの長細い車。

アリス

あー！あれですか！

アリス

最初はそれで迎えに来させるってお母さんが言ってましたけど、私が断りました。

湊

アリスも断ってるのね。

アリス

も？

湊

うん。姉さんと兄さんも、息苦しいから嫌だって、断ってるらしいの。

アリス

ほえー、湊さんって兄弟いたんですね！

アリス

…えっと、それじゃあ…湊さんの家もお金持ちなんですか！？

湊

うん、ってなんで驚いてるの？

アリス

ほえ？

湊

アリスの家もお金持ちでしょ。

アリス

あ、そうでした。

アリス

それじゃあ湊さんもいわゆる、お嬢様なのですか？

湊

まぁ、戸籍上はそうなるのかな。

アリス

こせきじょう？

湊

うん。私の育ちはちょっと変わってるの。

アリス

それでも一応お嬢様なんですよね！？

湊

一応ね。

アリス

ほわぁ…！凄いです！お嬢様名探偵です！

湊

何なの、お嬢様名探偵って…

アリス

あ、間違えました。

アリス

漫才お嬢様名探偵ですね！

湊

言い直さなくていい。

湊

それと更に意味不明になってる。

湊

っていうかお嬢様名探偵でも無いし！

アリス

ほわぁ…これが俗に言う、1人漫才なんですね…

アリス

感動しました！！

湊

感動しなくていい。

そんなたわいない話をしていると、湊の携帯に一通のメールが届いた。

メール

新着メール1件

湊

ん、誰からだろう…

湊

あ、姉さんから…

アリス

噂をすれば、ですね！

湊

…

内容は親族会議の日程だった。

アリス

どんな内容ですか？

湊

…親族会議の日程だよ。

アリス

ほわぁ…！親族会議！いいですね！

湊

アリスの所は無いの？

アリス

はい！両親以外の家族と呼べる人は、父方のおばあちゃんとおじいちゃんぐらいですから、そういった大袈裟な物は無いんです。

湊

へぇ、ごちゃごちゃしてなくて羨ましいわ。

アリス

湊さんの所は多そうですね。

湊

多いよ。

湊

じゃなきゃ親族会議なんて開かない。

アリス

どのぐらい集まられるんですか？

湊

えっと…

湊

まず、おじい様でしょ。

湊

次は次男家の家で3人。

湊

長女家で2人。

湊

次女家で3人。

湊

で、長男家の私と姉さんと兄さん。

湊

それと親族ではないけれど、おじい様に仕えてるメイド2人ね。

湊

合計で14人。

アリス

ほわぁ、私の家族の約3倍です！

アリス

あれ、でも…

湊

…

アリス

湊さんの所だけ…

湊

うん、私は両親がいないの。

アリス

あ…

アリス

…いつ頃から…ですか？

湊

私が8歳の頃よ。

アリス

じゃあ約10年になるのですか…

湊

正確には私は今16だから、8年前ね。

湊

まぁ、後1年ちょいで10年になるんだけれど。

アリス

寂しく…ないのですか？

湊

うん、殆どね。

湊

悠が居てくれたから。

アリス

悠さんとは長いお付き合いなんですね〜。

湊

うん。

湊

でも…

アリス

でも？

湊

ううん、なんでもない。

アリス

？

湊

っていうか、悠。

湊

そろそろ出てきたら？

アリス

ふぇ？

悠

なんだ、気付いていたのか。

アリス

わわっ！悠さん！

悠

何故気付いた？

湊

西校舎の入口から悠の姿が見えた。

アリス

流石、漫才お嬢様名探偵です！！！
洞察力も優れてますね！

湊

悠の姿は一目で分かる。

湊

あと、”それ”禁止。

アリスはしゅんとする。

湊

いつからいたの？

悠

そうだなぁ。

悠

確かお前の肩書きが、漫才お嬢様名探偵になる頃だったか。

湊

嘘。その時はまだ悠の姿は見てない。

湊

あと。

湊

もう一度言うけど、”それ”禁止。

悠もアリスと並び、しゅんとした。

湊

本当は、姉さんのメールが届いた頃でしょ。

悠

ああ、そうだ。

悠

で、いつなんだ？

湊

今週の週末。

湊

だから金曜日の夜には出発する。

悠

了解。それまでに準備しておく。

アリス

ふぇ？悠さんも行くんですか？

悠

ああ。

アリス

…

アリス

もしかして、湊さんをくださいって！

アリス

言いに行くおつもりですか！？

湊

私はそれでも良いけど、今回は違う。

悠

ふむ、何だか聞き捨てならない言葉が聞こえたが、違うな。

アリス

じゃ、じゃあ…

湊

お見合いでも、結婚式の日程相談でも、結婚式でもないから。

アリス

違うのですか…

湊

まぁ、私はそれでも良いけど。

悠

またまた聞き捨てならない言葉が聞こえたが…まあいいか。

アリス

じゃあなんで悠さんは？

湊

毎年ついて行って貰ってるの。

湊

さっきも言った通り私の育ちは、他の親族の人達とは少し異なるから、一人で行くのが気まずい。

悠

だからこの俺がついて行ってるって訳だ。

アリス

なるほど！

アリス

じゃあ湊さんの親族の方は、皆悠さんの事を知ってるって訳ですね！

アリス

これは結婚する時にスムーズになりますね！

湊

うん。いい事だよね。

悠

おい、また聞こえたぞ。

湊

…気のせい。

悠

そうか、気のせいか。

アリス

気のせいじゃないと思いますよ？

悠

なに！？

悠

と漫才はここまでにしておこうか。

湊

私は本気なんだけど。

悠

またこれも気のせいだろう。

アリス

これが俗に言う…無限ループ…！！

悠

…話が進まないし、そろそろいいか？

湊

うん、満足。

悠

よし、それじゃあ金曜日の夜だな。

湊

そう。

アリス

金曜日の夜に出発するってことは、結構遠いんですか？

湊

うん、本家は孤島にあるんだよ。

湊

飛行機で船乗り場まで行くから、前日の夜に出発しないと午前中には付けないの。

アリス

孤島…！

悠

なんか目が輝いてないか？

湊

…アリスも行きたいの？

アリス

え！い、いえそんなことは…

口ではそう言っているが、顔には行きたいと書いてあった。

悠

表情と言動が合ってないぞ。

湊

…良かったらアリスも来る？

アリス

え！？良いのですか？

アリス

あ、で、でも、私、湊さんの親族じゃないですし…

湊

ふふ、そんなの今更。

悠

ああ、現に俺も毎年行ってるからな。大丈夫だろ。

アリス

じゃあ…一緒に行きたいです！！

湊

うん、じゃあ金曜日の夜私の家に来て。

湊

場所はメールで送るね。

悠

じゃあメアド交換しとかないとな。

湊

あ、そうだね。

湊

アリス携帯持ってる？

アリス

はいです！

湊と悠は、携帯番号とメールアドレスをアリスと交換した。

悠

よしこれでいいな。

湊

あ。

悠

ん？どうした？

湊

アリスの両親許してくれるのかな。

湊

だってアリスお嬢様でしょ？

悠

そういえばそうだな。

悠

アリス、どうなんだ？

アリス

多分許してくれると思います！

アリス

電話して聞いてみましょうか？

湊

そうね。

湊

アリス、お願いできる？

アリス

モチのロンです！！

悠

独特なセンスだな…

アリスは両親に電話した。

返事は清々しい程の許しだった。

悠

…

湊

…

アリス

…？どうしました？

湊

ううん…

悠

ああ、なんと言うか…

悠

大企業の元締めがあんな軽くていいのか？

湊

うん…すごい軽いノリで許したよね…

アリス

ふぇ？

悠

まぁ、許しが出たし良いんじゃないか？

湊

…そうだね。

アリス

？

アリス

どうかしましたか？

悠

…

悠

はぁ、いや何でもない。

悠

それじゃあ帰るか。

湊

そうだね。

アリス

はい！れっつごーです！

湊

…そこはgo home だと思う。

そこから3人は学校を出て、無事に帰宅したのだった。

幕章1 転校生篇 END

彼岸湊の事件簿

作品ページ

次の話を読む

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

日向

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

彼岸湊の事件簿

第5話 - 幕章その1 転校生後篇

作者の他の作品すべて見る

#ミステリーの新着小説
一覧

関連するタグ

彼岸 湊の事件簿

第5話 - 幕章その1 転校生後篇

作者の他の作品すべて見る

#ミステリーの新着小説一覧

関連するタグ

彼岸湊の事件簿

#ミステリーの新着小説
一覧