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あんず
ももこ
あんず
ももこ
あんず
ももこ
先を歩く女の子たちは
楽しそうに歌う
山本 陸
山本 陸
久しぶりに祖父母の家にやってきた
田舎はすでに秋めいていて
目の前の山の紅葉が綺麗だった。
あんず
ももこ
あんず
ももこ
あんず
ももこ
山本 陸
山本 陸
山本 陸
祖父母の家
祖父
祖母
山本 陸
祖母
山本 陸
こうして祖父母の家に来るのは
何年ぶりだろうか
高校生活が忙しい
大学受験が忙しい
就職活動が忙しい
そう言って長い間
疎遠になっていたように思う。
久しぶりに会った祖父母は
すっかり年老いたように見えた。
祖父
祖母
祖父
祖父は思い出したように
謝って頭を掻いた。
祖父
山本 陸
夏枝は俺は母親だ。
山本 陸
山本 陸
祖父
祖母
山本 陸
祖父
祖母
山本 陸
仕事を辞めた。
たった二年で辞めるやつがあるか。
親父にはそう言われたが
合わないものは
合わないんだ。
いろんなことが嫌になって
それで祖父母のところに転がり込んだ。
期間は一応
三日と決めている。
決めていないと
いつまでもぐずぐずと
ここにいるような気がしたからだ。
さつき
あんず
ももこ
かえで
神社の中を駆け回る子供たち
俺も昔はそうやって駆け回っていた。
年に数回しか来ない俺と
ここの子供たちは仲良くしてくれた。
山本 陸
顔を思い出したとしても
子供の顔なので
今とはきっと別人になっているのだろう。
あんず
山本 陸
さつき
山本 陸
かえで
ももこ
山本 陸
あんず
山本 陸
さつき
山本 陸
そう言って歌い出すと
子供たちも一斉に歌い出す。
この歌は親から子に
脈々と受け継がれる歌
この歌を歌うと
イビツナ様が守ってくれる
そういう謂れのある歌。
だから親は子に
この歌を歌って聞かせる。
俺は母さんから聞かされて
覚えた。
みのる
さつき
そこに他の子よりも
少し体格の良い男の子が現れた。
みのる
みのる
あんず
みのる
みのる
そう言って男の子が
賽銭箱を蹴ろうとしたのを
慌てて止めた。
山本 陸
みのる
みのる
山本 陸
みのる
山本 陸
みのる
山本 陸
男の子はそう言うと
物凄い勢いで走り去った。
あんず
山本 陸
山本 陸
ももこ
山本 陸
さつき
あんず
山本 陸
さつき
ここの子供たちは素直で良い子だ。
みんなで社(やしろ)に向かって頭を下げて
それから境内をちょっと掃除して帰った。
イビツナ様の悪口を言ってはいけない。
それは昔から言われていることで
悪口を言うと”あっち”
つまり
死後の世界に連れて行かれる。
そう言われている
実際連れて行かれた人を
見たわけではないが
この集落では
その言葉が今でも信じられている。
本当に”あっち”の世界に連れて行かれるなんて
俺は信じていなかった。
そう
翌日
あの男の子が死んだという
話しを聞くまでは。
朝から祖父母がバタバタと
忙しそうだった。
山本 陸
祖母
祖母は顔をしかめ
そして
山崎という家の子供が
亡くなったと言った。
山本 陸
嫌な予感がした。
山本 陸
祖父
山本 陸
俺は昨日あったことを話すと
祖父母は互いに顔を見合わせ
複雑な表情を浮かべた。
祖父
山本 陸
祖父
祖父
祖母
山本 陸
祖父
祖母
山本 陸
祖父母は世話しなく身支度を済ませると
慌ただしくと家を出て行った。
一人残された俺は
祖母が用意してくれた朝食を
ゆっくりと食べ始めた。
村長
祖母
村上
祖母
篠原
村長
村上
祖父
村上
篠原
村長
祖父
村長
篠原
村長
篠原
祖母
村長
祖父
祖父
村長
村上
村長
村長
いつも静かな集落は
途端に忙しそうな様相を見せる。
通夜や葬式の準備に追われる人々。
しかし、
ふと俺は疑問に思って
帰って来た祖母に尋ねた。
山本 陸
祖母
山本 陸
祖母
祖母は眉間の皺を
より一層深くして答えた。
山本 陸
祖母
祖母
酷いモノだったそうだ。
鉤爪のようなもので腹を裂かれ
中身が引きずり出されていたそうだ。
熊の仕業、とも考えられたが
鉤爪の大きさから熊ではないと
断定したらしい。
祖母
祖母
山本 陸
祖母
祖母
山本 陸
祖母
山本 陸
祖母
祖母
祖母
山本 陸
祖母
山本 陸
祖母
祖母
祖母
山本 陸
祖母
山本 陸
祖母
祖母
祖母
山本 陸
祖母
山本 陸
かえで
篠原
かえで
村長
篠原
篠原
かえで
村長
かえで
村長
村長
男の子は部屋を見渡す。
部屋の四方と
畳、天井にお札が貼ってある。
お札には
文字のような
紋様のようなものが描かれていた。
村長
村長はお札を一枚
男の子に手渡す。
村長
かえで
篠原
村長
村長
篠原
村長はそっと部屋を出て行く。
篠原
かえで
かえで
篠原
かえで
篠原
かえで
かえで
かえで
篠原
篠原
かえで
ガタガタ!
かえで
篠原
かえで
ガタガタ!
ガタガタ!
イビツナ様
かえで
篠原
かえで
イビツナ様
ガタガタガタ!
ドンドンドン!!
イビツナ様
かえで
篠原
イビツナ様
イビツナ様
かえで
かえで
ドンッ!
ドンッ!
ドンッ!
イビツナ様
イビツナ様
かえで
ガンッ!!
篠原
かえで
篠原
かえで
篠原
かえで
篠原
かえで
主
三郎
主
三郎
三郎
主
三郎
主
三郎
主
三郎
主
三郎
三郎
主
三郎
三郎
主
三郎
主
三郎
主
翌朝
俺は一人神社に向かった。
すると境内から声が聞こえてきた。
三郎
三郎
三郎
境内にいたのは
和服を身に纏った男性が一人。
三郎
三郎
三郎
三郎
その男性は
社を見上げていたが
俺の気配に気が付いたのか
歌を止め
ゆっくりと振り返った。
年齢は三十代後半だろうか。
切れ長の一重が
俺の姿を捉えて
笑みを浮かべた。
三郎
山本 陸
三郎
山本 陸
三郎
山本 陸
三郎
山本 陸
三郎
山本 陸
山本 陸
三郎
山本 陸
三郎
三郎
山本 陸
そう言って三郎さんは
視線を社に向ける。
山本 陸
三郎
三郎は笑みを含んだ声音で言い
首を横に振った。
三郎
山本 陸
三郎
三郎
山本 陸
三郎
くるりと振り返り、
三郎さんはこっちに向かって歩き出す。
三郎
山本 陸
三郎
山本 陸
山本 陸
理解出来なかった。
ただ蹴っただけた。
それだけでどうして殺されなければならないのか。
過去に亡くなった人もそうだ
ただ落書きしただけで
何故殺されなければならなかったのか。
三郎
三郎
三郎
三郎
山本 陸
三郎さんが横を通り抜けて歩き出したので、
自然とその後を追う。
三郎
山本 陸
三郎
三郎
三郎
三郎
三郎
三郎
山本 陸
三郎
三郎
三郎
三郎
言われて思い出す。
そう言えば
過去に大きな水害に見舞われたこともないし、
土砂崩れも起きない。
台風が来ても甚大な被害を
こうむったことさえなかった。
山本 陸
にわかには信じ難かった。
三郎
三郎
三郎
三郎
山本 陸
三郎
そういって三郎さんは
どこか楽しそうに笑った。