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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

卯木家

自宅の前に立つ莉子

卯木莉子

(・・・・)

卯木莉子

(お母さんが
言ったように
警官が居る・・・)

警官

・・・・・

莉子の視線の先には 張り込みをしている警官の姿があった

卯木莉子

(お母さんに
言われた通りにしなきゃ)

卯木莉子

あ、あの・・・

警官

はい?

警官

どうかされましたか?

卯木莉子

わ、私・・・

卯木莉子

この家に住んでる
者なんですけど

警官

え?この家?

警官

あ!もしかしてあなたは

警官

卯木莉子さん?

卯木莉子

は、はい・・・

警官

大丈夫ですか!?

警官

確か今は恋人の家に
いらっしゃるんですよね?

卯木莉子

そ、そうなんですけど

卯木莉子

実は着替えを
取りに来て・・

警官

あ、そうでしたか!

卯木莉子

それで・・お母さんは?

警官

ご安心ください!

警官

今は今朝早くに
仕事に行かれましたので

警官

今は誰も居ません

卯木莉子

そうですか・・・

卯木莉子

よかった・・・

警官

私が見張ってますので
ご安心ください

卯木莉子

あ、ありがとう
ございます

卯木莉子

ではよろしく
お願いします

莉子は警官にお辞儀をすると 鍵を開けて家の中に入る

卯木千寿

・・・・

それを物陰が ひっそりと見つめる千寿

次の瞬間

警官

!!!!!!

千寿は警官の背後から近づき

アセトンを滲ませた布を 警官の口元に当てる

警官

なっ・・・・

警官はめまいを起こし その場に卒倒する

卯木千寿

少しの間
寝ててもらうわよ?

千寿はそう言うと 莉子の後を追って家の中に入る

警官

ま、待て・・・

警官は薄れゆく意識で 千寿の後を追おうとするが 足元がおぼつかず、倒れ込む

卯木千寿

さぁ莉子?

卯木莉子

・・・・・

卯木千寿

正座しなさい?

卯木莉子

は、はい・・・

莉子は千寿に 言われるがまま正座する

卯木千寿

裏切り者には
罰を与えなきゃね?

卯木莉子

・・・・・

莉子はうつみいたまま 口を開かない

卯木千寿

まず正直に白状
してもらおうかしら?

卯木千寿

いつから?

卯木千寿

正確にはいつから
お母さんの事を
裏切って

卯木千寿

外食してたの?

卯木莉子

お母さんが
泊まり込みの仕事を
始めた時期から

卯木千寿

はぁ〜呆れた・・・

卯木千寿

そんな前から?

卯木千寿

ならもう3年になるわね

卯木千寿

私が居ないからって
随分と好き勝手
やってたのね?

卯木千寿

口ではお母さんの味方!

卯木千寿

お母さんの側に居る!

卯木千寿

なんて詭弁垂れて

卯木千寿

裏では私の元から
離れる計画でも
企んでたんでしょ?

卯木莉子

ち、違う!私はただ

卯木千寿

口答えするな!!

千寿は莉子にグラスを投げつける

卯木莉子

っ!!!

そのグラスは莉子の額に直撃し そこから血が溢れ出る

卯木千寿

やっぱあなたには
アイツの汚れた
血が流れてるのね

卯木千寿

やっぱ親子ね

卯木莉子

なんで?

卯木千寿

はぁ?

卯木莉子

何で外食に
行ったからって

卯木莉子

お母さんの事を
裏切った事になるの?

卯木千寿

それは約束を──

卯木莉子

だからそれが
おかしいって言ってるの!

卯木千寿

おかいしですって?

卯木莉子

私・・言ったよね?

卯木莉子

お母さんの側に居るって

卯木莉子

それなのに私を
外食禁止にして
縛り付ける理由って何?

卯木千寿

私・・ただあなたを

卯木莉子

私を護るためだ!
なんて詭弁言わないでよ?

卯木千寿

何ですって?

卯木莉子

私・・わかるよ?

卯木千寿

わかる?

卯木莉子

自分の為だよね?

卯木千寿

・・・・・

卯木莉子

自分が一人に
なりたくない

卯木莉子

誰かと一緒にいたい

卯木莉子

誰かに必要とされたい

卯木莉子

だから私をこの家に
縛り付けるんでしょ?

卯木千寿

・・・・・

卯木莉子

それに
お父さんの不倫相手は

卯木莉子

いつも皆んなで行ってた
レストランの店員だった

卯木千寿

・・・・・

卯木莉子

お母さんの中で
外食に行くイコール

卯木莉子

自分の元から人が
離れて行くって

卯木莉子

そういう解釈に
なってるんでしょ?

卯木莉子

だから外食禁止にして

卯木莉子

こんなにも私を
縛り付けるんでしょ?

卯木千寿

・・・・・

卯木莉子

そうなんでしょ!?

卯木千寿

ふふふふ

卯木千寿

あははははは

千寿は腹を抱えて高笑いする

卯木莉子

何がおかしいの?

卯木千寿

全然違う!全く違う!

卯木千寿

あはははは!

卯木莉子

ち、違う?

卯木千寿

一人になりたくない?

卯木千寿

誰かと一緒にいたい?

卯木千寿

馬鹿みたい!

卯木千寿

あはははは!

卯木莉子

違うの?

卯木千寿

私にはね──

卯木千寿

あなたが必要なのよ

卯木莉子

だからそれは──

卯木千寿

あなたが居れば──

卯木千寿

あの人の面影を
感じる事が出来るの

卯木莉子

え!?

千寿の言葉を聞いた莉子は 目を見開く

卯木莉子

それ・・どういう意味?

卯木千寿

まんまの意味よ

卯木千寿

私ね──

卯木千寿

まだお父さんの事を
愛してるのよ

卯木莉子

なに・・それ

卯木千寿

あなたは私と
お父さんとの間に
生まれた子供

卯木千寿

いわば二人の
愛の結晶なのよ

卯木莉子

・・・・・

卯木千寿

そんなアナタが居れば

卯木千寿

私はあの人の面影を
常に感じながら
生きていける

卯木千寿

だから私はあなたを
側に置いておきたかった

卯木莉子

なによそれ・・・

卯木莉子

私はお母さんの
道具じゃない!!

卯木千寿

それに私は元々子供を
産むつもりなんて
さらさら無かったのよ

卯木千寿

けどあの人がどうしても
子供が欲しいって言うから
仕方なく産んだのよ

卯木莉子

・・・・・

卯木千寿

でもやっぱり
産むんじゃなかったわ

卯木千寿

あなたを産んで
しまったがために

卯木千寿

私第一だったあの人が
娘第一に変わってしまった

卯木莉子

・・・・・

卯木千寿

やっぱりテキトーな
理由作って

卯木千寿

断るんだったわ

卯木莉子

・・けないで

卯木千寿

なぁに?

卯木莉子

ふざけないで
って言ってるの!

莉子は涙ながらに 母に訴えかける

卯木千寿

ふざけてないわ

卯木千寿

至って真面目よ?

卯木莉子

それがふざけてる
って言ってるの!

卯木千寿

・・・・・

卯木莉子

なに?私なんか
はなっから
要らなかったの?

卯木莉子

愛情はなかったの?

卯木千寿

愛情はあったわよ

卯木千寿

自分がお腹を
痛めて産んだ
我が子だもん

卯木莉子

嘘つかないで!

卯木千寿

いやね莉子

卯木千寿

これは嘘偽らざる
私の本心よ?

卯木莉子

だったらなんで
実の娘を前にして

卯木莉子

そんな酷い事を
眉ひとつ動かさずに
平然と言えるの?

卯木千寿

・・・・・

卯木莉子

信じた私が馬鹿
だったって事なんだね

卯木莉子

いつかはお母さんも
変わってくれる

卯木莉子

そう・・思って

卯木莉子

そう・・信じて

卯木莉子

今までお母さんの
言う通りに生きてきた

卯木千寿

・・・・・

卯木莉子

でも結局お母さん
変わんなかった!

卯木千寿

やめて・・・

卯木莉子

変わって
くれなかった!

卯木千寿

やめて・・・

卯木莉子

結局お母さんは
私の事なんか見てなかった

卯木莉子

だからお父さんは──

卯木千寿

やめろって
言ってんのよ!

千寿は包丁を手にして 莉子に突きつける

卯木莉子

お母さん・・・

卯木千寿

あの人と同じ事
言わないで!

卯木莉子

だって同じ気持ちだもん

卯木千寿

なんですって?

卯木莉子

確かに不倫をした
お父さんは許せない

卯木莉子

けど──

卯木莉子

今ならお父さんの
気持ちが分かる

卯木千寿

・・・・・

卯木莉子

やっぱりお母さんは

卯木莉子

いつも自分主体なんだよ

卯木莉子

どんなときも自分自分

卯木千寿

黙れ!!!

卯木莉子

自分を見て欲しいなら
相手も見てよ!!

卯木莉子

私を見てよ!!!

卯木千寿

うるさい!うるさい!

卯木千寿

うるさい!うるさい!

卯木千寿

ちょっと男を
知ったくらいで

卯木千寿

偉そうな事
言ってんじゃないわよ

卯木莉子

確かに私は
音弥くんか初めて
付き合った彼氏だよ

卯木莉子

でも音弥くんは
私を愛してくれてる

卯木莉子

秘密を知っても
全部を受け入れてくれた

卯木莉子

お母さんなんかと
違って!!

卯木千寿

・・・・・

卯木莉子

私もそんな音弥くん
の事を愛してるの!

卯木千寿

はぁ〜・・・

卯木千寿

なんか疲れたわ

千寿は気が抜けたように 包丁を手から落とす

卯木莉子

え?

卯木千寿

なんかごめんね

卯木千寿

莉子ちゃん

卯木莉子

お、お母さん?

先ほどまで怒りに満ち満ちた 表情だったのにも関わらず

何かに解放されたような 清々しい表情をしている千寿に 莉子は首をかしげる

卯木千寿

もう・・何もかも
どうでもよくなっちゃった

卯木莉子

(どうしたの?急に)

卯木千寿

確かに私は自分主体
かもしれないわね

卯木莉子

お母さん?

卯木千寿

ねぇ?莉子ちゃん?

卯木千寿

私と──

卯木千寿

無理心中しない?

卯木莉子

!!!!!

卯木莉子

む、無理心中?

卯木莉子

何を馬鹿な事
言ってるの?

卯木千寿

いやね、真面目よ?

卯木千寿

このまま生きていても

卯木千寿

あの人は私の元に
戻ってこないだろうし

卯木千寿

莉子ちゃんとこのまま

卯木千寿

今まで通りの
親子関係を続けるなんて
無理な話でしょ?

卯木莉子

やめてよお母さん!

卯木千寿

ごめんなさいね?

卯木千寿

こんな人がお母さんで

卯木莉子

・・・・

卯木千寿

今まで辛かったわよね?

卯木千寿

でももう大丈夫よ?
すぐ解放されるからね?

卯木莉子

(ダメだ!)

卯木莉子

(お母さん・・本気だ)

莉子は藁にもすがる思いで スマホを取り出して 音弥に電話をかける

プルルルルル

多良木音弥

ん?電話?

多良木音弥

誰からだろ?

音弥はスマホの ディスプレイを確認する

多良木音弥

莉子さん?
何かあったのかな?

多良木音弥

もしもし?莉子さん?

多良木音弥

どうかし──

卯木莉子

助けて!

卯木莉子

おか

そこで通話は途切れた

多良木音弥

え!?

多良木音弥

なんだ?今の電話

多良木音弥

助けてって・・・

多良木音弥

それに・・おか?

多良木音弥

!!!!!!!

多良木音弥

まずい!!!!!

音弥は血相を変えて 家から飛び出す

音弥は卯木家までの道のりを走る

多良木音弥

(まずい!)

多良木音弥

(莉子さんにお母さんが
接触してきだんだ!)

多良木音弥

(やっぱり
無理矢理にでも)

多良木音弥

(仕事を
休ませるべきだった)

多良木音弥

(くそ!くそ!)

多良木音弥

(待ってくれ!
莉子さん!)

多良木音弥

(無事でいてくれ!)

多良木音弥

(頼むから!!!)

卯木千寿

愛しの彼氏にSOS
なんてさせないわよ

卯木莉子

お母さん・・・

卯木千寿

これから一緒に
楽になるんだから

卯木千寿

助けを呼ぶ
必要なんてないでしょ?

卯木莉子

やめてよ・・・

卯木莉子

お母さん・・・

卯木千寿

止めないわ

卯木千寿

もう・・無理なの

卯木莉子

無理じゃない!

卯木千寿

無理なのよっ!!!

卯木莉子

私たち・・

卯木莉子

まだやり直せるよ

卯木千寿

うるさい!うるさい!

卯木千寿

そう言って
泣き落とせば

卯木千寿

私が躊躇うとでも
思ってるんでしょ!?

卯木千寿

そうはいかないわ!

卯木莉子

なんで分かって
くれないの!

卯木莉子

私はお母さんから──

莉子の言葉を遮るように

莉子さん!!

莉子さん!!

居るんでしょ!?

莉子さん!!

音弥の声が響き渡る

大食いの彼女には秘密がある

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