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ぐらなーとぅむ・かのん

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ぐらなーとぅむ・かのん

2 - ぐらなーとぅむ・かのん 中編

♥

60

2021年01月14日

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3日後

全然、人間が通らねー……

ため息をつく

『……食べないの? ……わたしを』

…………

ちょうど、腹減ったし

一応、行ってみるか

あ──

また、来たんだ?

わたしを食べに?

……いや、オレは──

ぐうぅぅぅ

……!

お腹、空いてるんだね

いいよ、わたしを食べて──

は?

思わず耳を疑った

(なんだ、こいつ……)

何言ってんだ? お前

オレはお前の親父を、喰ったんだぞ?

怖くねーのか?

怖くないって、言ったら……

ウソになるけれど

だったら、なんで逃げねーんだ?

一応、心配してくれるんだ?

(ホント、なんなんだ……こいつは?)

──ちっ

苛立ちを隠さず、その場から離れようとした

待って

ガシッ

腕を掴まれる

どこへ、行くつもりなの?

どこだって、いいだろ

つーか、離せよ

お前には関係ねーだろが

──カナデ

……?

カナデ

わたしの名前は、“お前“じゃない!

カナデ

カナデっていうの!

カナデ

覚えておいて!

…………

カナデ

それにあなたの腕、離すつもりはないから!

生まれて初めて鬼は困惑した

──非常食

カナデ

え?

非常食を喰いに行くだけに

決まってんだろ!

カナデ

人を……?

石榴だ!

カナデ

──石榴なら、たくさんなってるところ知ってるよ

ぐいっ

カナデ

こっち

あ、おい……!?

強引に腕を引っ張られる

いつもなら、簡単に振り解けるはずなのに…………

──なぜか、できなかった

カナデ

おいしい?

……ああ

カナデ

よかった

…………

(さっきから、調子が狂いっぱなしだ…………)

石榴を食べ終えた

カナデ

もういいの?

……ああ

しばらく、沈黙が漂う

(なんだか、気まずい……)

カナデ

ねぇ──

ん?

カナデ

あなたの名前、なんて言うの?

…………名前なんて、ねーよ

カナデ

え?

名無し

カナデ

べつに不都合なんか、感じたことねーし

カナデ

──じゃあ

カナデ

わたしがあなたの名前、付けてもいい?

……へ?

カナデ

ちょっと待ってて──

考え込むようにうつむく

カナデ

カナデ

セイ

……セイ?

カナデ

今日から、あなたの名前はセイ

おい、勝手に…………

カナデ

よろしくね、セイ

…………

ため息をつく

翌朝

ぱちり

セイ(鬼)

…………?

セイ(鬼)

ああ、そうか…………

あのあと、無理矢理泊まらせられて──

セイ(鬼)

(鬼を家に招いて、どうすんだよ…………)

セイ(鬼)

(ってか、オレが鬼だということ、忘れてんじゃねーか?)

セイ(鬼)

(しかも、名前までつけられたし…………)

セイ(鬼)

セイ(鬼)

あいつは……?

引戸が開いた

カナデ

あ、起きてたんだ

セイ(鬼)

…………

竹かごのしょいこを背負っていた

カナデ

木の実を拾ってきたんだ

カナデ

カナデ

お腹、空いてない?

カナデ

空いてたら、わたしを食べても──

セイ(鬼)

石榴でいい

カナデの言葉を遮った

カナデ

石榴だけで足りる?

セイ(鬼)

……そういうお前は、粥だけで平気なのか?

カナデ

大丈夫。あと、それから

カナデ

わたしの名前はカナデ

セイ(鬼)

…………

食事を終えると、一息入れる

セイ(鬼)

セイ(鬼)

その腕の痣──

腕に痣が付けられていた

カナデ

あ、これ……

セイ(鬼)

あの親父に付けられたのか?

カナデ

うん、まあ……

痣を袖で隠す

セイ(鬼)

……ろくでもねーな

カナデ

たしかに、ろくでもなかったよ

カナデ

なんで、一緒にいるんだろうって思ったし

セイ(鬼)

…………

カナデ

逃げればよかったんだけど…………

カナデ

カナデ

なかなか、できなくってね……

カナデ

ほかに行くところなんて、ないから……

セイ(鬼)

…………

数週間後──

もうすぐ冬の季節がやってくる

セイ(鬼)

(なんだかんだで、居着いちまった…………)

今朝

カナデ

『セイ、ご飯だよ』

握り飯と川魚、石榴を置く

セイ(鬼)

『──また、粥だけなのか?』

セイ(鬼)

『昨日もそれだけだろ?』

カナデ

『わたしのことは、気にしないで』

カナデ

『ちゃんと山菜も入ってるから、大丈夫』

カナデは粥を口に運んだ

この数週間、人間は喰っていない──

セイ(鬼)

(……今んとこ、平気だけど…………)

セイ(鬼)

(……そろそろ、潮時だな……)

セイ(鬼)

(あいつが戻る前に……)

カナデ

カナデ

どこに行くの?

セイ(鬼)

(もう、戻ってきたのかよ)

カナデ

ねぇ……

セイ(鬼)

…………

何も答えず、そのまま出ていこうとした

ガシッ

セイ(鬼)

──離せよ

カナデ

答えてくれるまで、離さない……

セイ(鬼)

どこ行こうか、オレの勝手だろ

カナデ

出ていくなら、わたしを喰べてからにして

セイ(鬼)

……なんで、そうまでして

セイ(鬼)

自分を喰わせようと、するんだ?

カナデ

カナデ

……ろくな生きかたを、してこなかったから

セイ(鬼)

…………

カナデ

最後くらい、いいことでもしようかなって────

セイ(鬼)

……なんだよ? “最後くらい“って……

カナデ

カナデ

わたしね、病をわずらってるんだ……

セイ(鬼)

は?

カナデ

治らないんだって…………

セイ(鬼)

……ウソつけ

セイ(鬼)

全然わずらってるようには、見えねーぞ

カナデ

ウソだったら、どれだけよかったか────

悲しそうにほほ笑む

ぐらなーとぅむ・かのん

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