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月城奏汰 ツキシロカナタ
屋上のフェンスにもたれて、
君が空を見上げる。
雲はゆっくりと流れていて、
何もかもがどうでもよくなるぐらい、
青かった。
風宮透花 カゼミヤトウカ
ほんとは、決められないだけだ。
大人になることが、
どこか裏切りみたいに思えて。
月城奏汰 ツキシロカナタ
君は笑う。
月城奏汰 ツキシロカナタ
知ってる。
放課後の音楽室で
誰もいないのに歌っているところも。
歌い終わったあと、
少しだけ、
寂しそうな顔をすることも。
風宮透花 カゼミヤトウカ
意地悪みたいに聞いた。
月城奏汰 ツキシロカナタ
即答だった。
その潔さが、
眩しくて、少し怖かった。
月城奏汰 ツキシロカナタ
風が吹く。
スカートが揺れる。
前髪が目にかかる。
風宮透花 カゼミヤトウカ
本当は違う。
でも、"普通"って言えば、
何も失わずに済む気がした。
君は少しだけ眉を下げた。
月城奏汰 ツキシロカナタ
笑って言う。
月城奏汰 ツキシロカナタ
あるよ。
君の隣に、ずっといること。
でも、それは
君の未来を邪魔する未来かもしれない。
言えなかった。
月城奏汰 ツキシロカナタ
君が立ち上がる。
坂道を、自転車で下る。
ブレーキをかけずに、
風を切って走る。
月城奏汰 ツキシロカナタ
君が笑う。
その声が、風に混ざる。
息を吸い込む。
夏の匂い。
アスファルトの熱。
遠くの蝉の声。
月城奏汰 ツキシロカナタ
君が言う。
月城奏汰 ツキシロカナタ
意味がわからなくて、笑う。
月城奏汰 ツキシロカナタ
ああ、そうか、
この瞬間は、
二度と戻らない。
だから、
今を全部吸い込んでおきたいんだ。
坂の下で止まる。
息が上がる。
胸が痛い。
月城奏汰 ツキシロカナタ
君が真面目な声を出す。
月城奏汰 ツキシロカナタ
知ってた。
ずっと前から、
そうなるって、
風宮透花 カゼミヤトウカ
風が、止む。
さっきまであんなに強かったのに。
月城奏汰 ツキシロカナタ
できるよ
でも、それはきっと
"隣にいない"未来を選ぶことだ。
風宮透花 カゼミヤトウカ
それでも頷いた。
君は笑う。
あの日と同じ、
真っ直ぐな笑顔で。
帰り道。
一人で歩きながら、
さっき吸い込んだ
風を思い出す。
苦くて、甘くて、
少しだけ痛かった。
たぶん、これが青春なんだ。
完成しないまま、
形もないまま、
通り過ぎていく。
でもきっと、
あの日
君と風を食んだことだけは
一生、忘れない。