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…普通……

阿部亮平

普通の恋愛をしたかった、凪沙に、
俺は普通をあげれない。

桜井凪沙

…え

なんで……って思ったけど、その言葉をすぐ理解した。 だって…… 亮平さんは……

阿部亮平

俺は芸能人だから。

桜井凪沙

……

なんも言葉は出てこなかった。 なんて返せばいいのか分からない。

阿部亮平

一緒に手を繋いで、
外を歩くことも、出来ない。

そんなの……

阿部亮平

旅行にだって行けないし、
会えない日も沢山ある。

そんなこと……

阿部亮平

だから嘘をついた……

桜井凪沙

え…?

阿部亮平

凪沙から離れようとした。

限界って……言ってたのは…… 私といるのがしんどいって……

桜井凪沙

あの言葉は……

阿部亮平

限界って言ったのは本当。

それは、本当なの……? 悲しいよ。 苦しいよ。

阿部亮平

凪沙から離れるのが嫌で、苦しくて、
辛くて…

桜井凪沙

…え?

阿部亮平

もう、凪沙が気持ち伝えて来る前から、
俺は凪沙のことが好きだった。

なに……待って…… 理解が追いつかない。

阿部亮平

限界って言ったのは、
そっちの意味じゃなくて……

桜井凪沙

………

涙が溢れてくる… こんな風に亮平さんが自分のこと話してくれるのは初めて。

阿部亮平

凪沙のことが好きで……

大好きで……

もう、何を失ってもいい。

阿部亮平

想いを伝えることが出来ないのが、
死ぬほど辛かったんだ……

嬉しくて……嬉しくて…… 胸が痛くなるほど、亮平さんのことが 大好きだ。

もう、何もいらない。 だから…… その代わりに……

桜井凪沙

……好きです

阿部亮平

でも……

桜井凪沙

要りません。

阿部亮平

え……?

桜井凪沙

普通なんて要りません。

ただ……ただ…… 1つだけ……

桜井凪沙

私は、亮平さんと一緒に居れるだけで幸せです。

真っ直ぐ亮平さんに想いを伝えた。 一緒に居たい。 ずっと一緒に居たい。 すると…… 私の手を引っ張り、ぎゅっと抱きしめてくれる。

阿部亮平

……いいの?

桜井凪沙

……え

阿部亮平

たくさん泣かせるかもしれない。

阿部亮平

今までだって、たくさん傷つけたのに……

うん。 たくさん泣いたし……たくさん傷ついた。 でも……それ以上に……

桜井凪沙

亮平さんと一緒にいたい!

……

亮平さんが下を向いて、微笑む。 ……え…… 私の頭に、ポンッと手を置き……

阿部亮平

強くなったね。

桜井凪沙

…え?

頭を優しく撫でてくれる。

阿部亮平

強くなったよ。

桜井凪沙

強く…?

阿部亮平

凪沙から想いを伝えて来るなんて、
思ってもなかった。

桜井凪沙

……

阿部亮平

俺が離れようとする度に、
凪沙はどんどん強くなるから……

亮平さんも辛かったんだよね…… でも、私……

阿部亮平

初めて会った時には、想像も出来なかった。

初めて会った時……

阿部亮平

ありがとう、待っててくれて。

桜井凪沙

…あ……

阿部亮平

なに……?

桜井凪沙

私と亮平さんが、初めて会ったのはいつですか?

聞きたくても、聞けなかったこと… 教えてくれるか……なぁ……

阿部亮平

話すよ。

全部話すって約束したでしょ?

桜井凪沙

……

阿部亮平

そんな不安な顔しないで。

え……私そんなに強ばってたかなぁ…… やっとだ…… これを聞けば、亮平さんに近づける気がする。

なんか緊張するな……

阿部亮平

俺がデビューする前だから、結構前の話しなんだけどね……

……… デビューする前……ってことは…… 5年くらい前の話?

阿部亮平

俺と、今日の、テレビ局で会ったの覚えてる?

テレビ局……ってことは… 5年くらい前だし、私がまだ、今の会社に就職してない時。

……

桜井凪沙

私が今の会社で働く前に……

セットデザイナーをしてて……

…思い出せない。 すると……

阿部亮平

あっ、そういうことね。

桜井凪沙

……え?

阿部亮平

テレビのセットデザイナーしてたよね?

桜井凪沙

……そうです。

その時は、まだ仕事に慣れてなくて3年ぐらい。 苦戦していたからテレビ局にいても、 セットを運ぶくらいで…… 芸能人に会ったこととかは1度もない……

いわゆる、下っ端だった。

阿部亮平

廊下で、蹲ってた人覚えてない?

桜井凪沙

……えっ?

……廊下で? え……もしかして…… あ、いや…………

あっ……!

桜井凪沙

阿部亮平

思い出した?

分かったかも…… 私が……

桜井凪沙

あの時……の……

阿部亮平

うん。
多分、同じこと考えてるよ。

亮平さんの名前…… いや、私の名前だって教えてないのに…… なんで、私のこと覚えてたの?

なんで、私って……分かったの? もう5年以上前の話だよ?

阿部亮平

あの時……

俺を助けてくれたでしょ?

桜井凪沙

いや……あれは……

助けたというか……

あれは、助けたうちに入るのか?

阿部亮平

あの日も……

雨が降ってて。

桜井凪沙

……

阿部亮平

俺、元々、偏頭痛持ちで……

その日も体調悪くて…

私と、初めて会った日の話しをし始めた。 確かに、雨が降っていた……

阿部亮平

1人で、楽屋に向ってた時に、あまりにも体調悪るすぎて耐えれなくて……
その場にしゃがみ込んだの…

阿部亮平

そしたらさ……誰かに声をかけられたの。

桜井凪沙

……

阿部亮平

俺は、上を向くこと出来なかったんだけど……

阿部亮平

「大丈夫ですか?」って声をかけてくれた子がいて……

私が思っていた話と一致する。

阿部亮平

その子、ずっとソワソワしてて……
焦っていて、結果的には持っていた、
新品の水を、俺のそばに、そっとおいてくれたんだ。

あっ……そうだった。 どうしたらいいのか分からなくて。 助けを求めようとしたけど…… 近くに誰もいなくて……

桜井凪沙

……

阿部亮平

見えたんだ。

桜井凪沙

え?

阿部亮平

俺、下しか見てなかったけど……

その子が首から下げていた名札が……

阿部亮平

その名札に書いてあった名前がね……

桜井凪沙

……

阿部亮平

「桜井凪沙」だった。

私の名前…… ずっと覚えててくれたの…?

阿部亮平

その後、凪沙は「ちょっと待っててください」って言って、どこかに走って行っちゃって……

そう、誰かを探しに行った…… 1人じゃあ何も出来なかったから…… でも、その後……

桜井凪沙

戻って来たら、亮平さんいなかったです……

阿部亮平

そう。ごめんね。
誰か呼びに行ったんでしょ?

あの後、ずっと、大丈夫かなって心配してた……

桜井凪沙

なんで……

阿部亮平

凪沙が声をかけてくれる前に、メンバーに電話してて、助けに来てくれて。

桜井凪沙

そうだったんですね。
良かったです。

良かった……助けてくれるメンバーがいて。 私じゃあ頼りないし。 こんな小さなことなのに、私のこと覚えててくれたの?

……嬉しい。

私を探し続けてくれた人……

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