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学校の校舎裏にある駐車場に

辿り着くと、しゃがみ込みながら

スマホをいじる幼なじみ見つけた。

川本 遥

琉聖、お待たせ

声を掛けると

琉聖は顔を上げた。

そして、そのタレ目がちな

二重の瞳で私の姿を

認めるなり眉を寄せる。

片岡 琉聖

おっそい

片岡 琉聖

何やってんだー

文句を口にしながら

立ち上がる琉聖に、私は

苦笑して唇を動かした。

川本 遥

ごめん、ちょっとした

川本 遥

アクシデントがあって

片岡 琉聖

アクシデントって?

尋ねながら、琉聖はスマホを

紺色のズボンのポケットに入れる。

私はその動作を目で追いながら

川本 遥

階段から落ちそうになったの

と話した。

そうすれば、琉聖の瞳が

丸くなって。

片岡 琉聖

は?怪我は?

川本 遥

ないよ。横谷先生に

川本 遥

助けてもらったから

答えると、琉聖は

ちょっと嫌そうな顔をして

自転車に鍵を差した。

片岡 琉聖

横谷か。俺、あいつ苦手

うん、知ってる。

横谷先生は女子ウケはいいけど

男子ウケが悪い。

女子ウケがいいのは言わずもがな

容姿が主な原因なんだけど

男子ウケが悪い原因は

真面目さが仇と

なっているからしい。

琉聖に至っては、1年の時に

何度も制服の着方について

注意されていたようだった。

ちなみに、現在も琉聖の

制服の着こなしは

正しいものではない。

指定されているネクタイは

してないし、ブレザーじゃなくて

パーカー羽織ってるし。

うちの高校は口うるさくない方

だけど、それでも琉聖は

学年の中でもなかなかに

自由人間かも。

別に不良とかじゃないんだけど…

こう……なんか、チャラい

というかお調子者というか。

でも、性格は悪くないし

友達も多い。

こうやって……

片岡 琉聖

よし、後ろ乗れ

川本 遥

うん

都合が合えば自転車で

私を家まで送ってくれたりも

する優しいところもあったり。

琉聖の腰に手を回すと

自転車がゆっくり加速を始める。

ペダルを漕ぐ琉聖を見れば

ゆるくパーマのかかった

ショートレイヤーが風に

揺らいでいた。

川本 遥

琉聖、髪色変えた?

片岡 琉聖

おう!少し明るくした

お日様の光を受けた髪は

確かに以前より

明るめのブラウンだ。

私もそろそろ美容室行きたいな

と思い、左手で

ミディアムロングの髪に触れる。

その時、タイミング悪く

自転車が揺れて、私は急いで

琉聖の腰にしがみついた。

琉聖お気に入りの自転車は

漕ぎやすいらしく

それを表すかのようにすいすいと

住宅街を走り抜けていく。

4月の穏やかな気候の中

感じる風はとても心地がいい。

片岡 琉聖

そーだ、遥

川本 遥

んー?

片岡 琉聖

明日は俺、バイトあるから

片岡 琉聖

送ってやれねーぞ?

川本 遥

うん。私も明日は

川本 遥

妹のとこ行ってくるし

前を向いたまま

話しかけてくる琉聖に

明日の予定を声にすれば、彼は

片岡 琉聖

そっか

と呟くように言って。

片岡 琉聖

そろそろ退院できそーなの?

妹の経過を聞いてきた。

川本 遥

んー、暫くは

川本 遥

無理みたいな話だったよ

先日、親から聞いた

お医者さんの言葉を

思い出しながら話すと

琉聖は少し優しい口調で

片岡 琉聖

卒業式には

片岡 琉聖

間に合うといいな

と言ってくれた。

間に合って欲しい。

死に至る病じゃないけど

卒業式くらいはちゃんと

出席させてあげたい。

そして、できることなら

早く普通の生活を。

私はそう願いながらゆっくりと

暮れ行く空を見上げた。

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