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好きな人の幸せを願うために自分のタヒを選ぶ…… 桜花ちゃんは本当にこれで良かったのかな……?でも、うちが桜花ちゃんだったら同じ選択をしてた、かもしれない……?かな……?
「ねえ、桜花?」
「…俺さ…。」
長月のある昼のこと。
公園の小さな白いベンチで
二人で座る、あなたと私。
付かず離れず、
…絶妙な距離を保ちながら
私たちは会話を交わす。
その言葉の続きを 聞きたかった、のに…。
…どうして、なの…?
突然強い頭痛に襲われて
意識が朦朧として_
君の姿は水彩絵の具のように 段々とぼやけて_
頭が真っ白になって_
あなたの姿も、名前も、 好きなものも、嫌いなものも
…あなたの、声も_
朦朧と意識に 飲み込まれるように
私の頭の中から
すっと静かに消えてゆく…。
咲鵺、私ね。
失いたくなかった。
失うのが怖かった。
…スイーツのような 甘い香りに誘われて
ふと目を開ける。
…目の前に居たのは、 大きな黒い翼を持った
恐ろしい死神_
…ではなく。
翼も無い、大きな鎌も無い…
いたって普通の人間たった。
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
…あるかもしれない。
だって私は_
…あれ?
…何で、だっけ…?
…まあ、いいや。
桜花
桜花
…顔が赤く染まってゆくのを
感じて、私は慌てて 話題を変える。
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
さっきから、ここにいると 私の姿、形が見えなくて
歩いても、歩いていない みたいに感じていた。
歩いている、というよりかは 浮いているような感覚がした。
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
普通の人間に見えたその人は
何やら厚めの古本を手にして
真っ白なページを めくってゆく。
すると…
はんぶんこして食べた、 ハンバーガーの味。
映画館で泣いていた、 君の泣き顔。
クリスマスの日に感じた、 君の手の温もり。
色んな思い出が、色んな君が
頭の中で複雑に絡み合って_
一つのページへと 近づいてゆく。
ページを一つめくるごとに
段々と鳥肌が立ってゆく。
ああ、やっぱり私…
知るのが、怖いんだ。
あの日の、事を。
でも…
知らなきゃ、ダメなんだ。
もう、後には引けない…!
前に行くしか…ないんだ…!!
…着いちゃった。
もう、何があってもいい。
どんな事を知ってもいい。
だから_
教えて、咲鵺。
「あははっ!!」
「桜花、やっぱりバカじゃん」
楽しそうに笑う、 君の声が響く。
そうだ。
この後、だ…!!
ふと、隣を見ると
あの人は静かに、ただ真剣に その状況をみつめていた。
「ねえ、桜花?」
私の鼓動だけが、どくどくと 鳴り響く…。
「…俺さ…。」
「…死神、なんだ。」
桜花
桜花
ああ………!!!!
そうだ。そうだった…。
彼は、死神だったんだ。
途端に、
私の頭の中を、あの日の記憶が 駆け巡る…!!
あなたは死神。
死神になるには、誰かを 殺さなくてはならない。
あなたは全てを告げてくれた。
あなたは最初、私の 警戒心を無くす為に
私に近づいた事、
それなのにいずれ殺す 相手である
私に急速に 惹かれてしまった事、
私を殺さない為に わざと嫌われて
別の人を選ぼうとした事、
人を殺さなくてはならない 期限が今日で終わりの事、…
そして彼は言った。
「俺にお前は殺せない。」
「お前を本気で愛してしまったから…」と。
最後に彼は言った。
「だから、俺は自殺する」と…
あなたは私を殺す事を諦めて
大きな鎌を自分に向けて
振り翳そうとした。
だから私は_______
あなたに抱きついて 自ら死を選んだ…。
その瞬間、私の中から 赤い液体が飛び散った。
痛かった。
怖かった。
でも…。
それ以上に、あなたの いないこの世で
何事もなかったかのように 幸せに暮らしている自分が…
あなたについての 「記憶」を失った自分の方が
よっぽど怖かった。
そこで、ページは途切れた。
気がつけば、涙が溢れていた。
やっぱり、知らない方が 良かったのかもしれない…。
…いや。
これで良かったんだ。
咲鵺の事、思い出せたから。
咲鵺の事、大好きだから。
…あなたには、私じゃなくて
夢を追いかけてほしいから。
どんなに悔やんだって、
どんなに苦しんだって、
過去なんてどうせ 変えられない。
だから私は、彼に言った。
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
桜花
…と。