テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
225
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第4話 〚歪んだ想いの行き先〛
西園寺恒一(さいおんじ こういち)は
澪を中学二年の頃から 見ていた。
運動会の練習。
苦手そうに走りながらも、
必死に前を向く澪。
その姿を見た瞬間、
胸の奥が、強く揺れた。
西園寺 恒一
それから恒一は、
澪を「見守っているつもり」で、
毎日その姿を 追うようになった。
登校時間。
下校の道。
図書室へ向かう背中。
それが、
普通じゃないことだと 気づかないまま。
その日も、 本棚の陰から澪を見ていた。
だが――
澪の隣にいたのは、
橘海翔だった。
二人きりの図書室。
ノートを覗き込む距離。
自然すぎる空気。
西園寺 恒一
胸が焼けるように熱くなる。
西園寺 恒一
澪が先に図書室を出る。
恒一は、 物陰に隠れて気配を消した。
少しして、
海翔が一人で出てくる。
その前に、 恒一は立ちはだかった。
西園寺 恒一
海翔が振り向いた、その瞬間。
拳が、振り抜かれる。
鈍い音。
海翔は、壁に身体を預けるように してよろけた。
額から、血がにじむ。
橘 海翔
西園寺 恒一
西園寺 恒一
恒一の声は、震えていた。
海翔は、殴り返さなかった。
額を押さえながら、 ただ静かに恒一を見る。
橘 海翔
橘 海翔
低く、はっきりした声。
その一言が、
恒一の理性を、 かろうじて止めた。
西園寺 恒一
恒一は舌打ちし、
その場を去っていく。
廊下に残された海翔は、
ゆっくりと壁から離れた。
血が、指先につく。
橘 海翔
橘 海翔
その決意が、
この事件の始まりになることを、
まだ誰も知らなかった。
翌朝。
澪は、胸の奥に引っかかる違和感を 抱えながら教室に入った。
理由は分からない。
ただ、昨日からずっと、 胸がざわついている。
白雪 澪
席に着き、本を開く。
けれど文字が、 頭に入ってこない。
橘 海翔
声に顔を上げると、
橘海翔が立っていた。
いつも通りの表情。
いつも通りの声。
……でも。
白雪 澪
澪の視線が、 彼の前髪の奥に引き寄せられる。
少し不自然な前髪。
見え隠れする、白いガーゼ。
白雪 澪
海翔は一瞬、 言葉に詰まった。
橘 海翔
橘 海翔
笑って誤魔化す。
けれど。
――頭の奥が、きりっと痛んだ。
予知。
昨日の夕方。
暗い廊下。
恒一の歪んだ目。
振り下ろされる拳。
床に落ちる血。
澪の手が、震える。
白雪 澪
小さく、でも確かに。
白雪 澪
海翔は、 驚いたように澪を見る。
橘 海翔
澪は、ぎゅっと拳を握った。
白雪 澪
教室のざわめきが、 遠くなる。
海翔は、少し黙ったあと、
静かに言った。
橘 海翔
橘 海翔
その言葉が、
澪の胸を強く締めつけた。
白雪 澪
白雪 澪
白雪 澪
澪の声が、かすれる。
海翔は、はっとして首を振った。
橘 海翔
橘 海翔
白雪 澪
澪の視界が、滲む。
その瞬間。
予知が、 もう一度流れ込んだ。
――見えない視線。
――教室の外。
――こちらを見つめる、誰か。
澪は、確信した。
白雪 澪
白雪 澪
澪は、勇気を振り絞って言った。
白雪 澪
白雪 澪
海翔は、少しだけ目を伏せ
それから、優しく笑った。
橘 海翔
その笑顔が、 澪には、少し苦しそうに見えた。
教室の外。
廊下の角。
西園寺恒一は、
二人の様子を、黙って見ていた。
西園寺 恒一
その視線は、 まだ、離れていなかった。
放課後。
澪は、 一人で下校するはずだった。
けれど、校門を出た瞬間、
背中に――
ぴり、とした感覚が走る。
白雪 澪
ずっと。
振り返っても、誰もいない。
通り過ぎる生徒たち。
いつもと変わらない風景。
それなのに。
白雪 澪
確信に近い感覚だった。
澪は足早に歩き、
途中で方向を変える。
――コンビニの角。
――曲がり角。
――人通りが多い道。
それでも、
その“気配”は消えなかった。
白雪 澪
胸が、苦しくなる。
そのとき。
村上 えま
振り向くと、
村上えま、石田しおり、河野みさと が並んで立っていた。
石田 しおり
河野 みさと
その言葉に、
張り詰めていたものが、 ふっと緩む。
白雪 澪
四人で歩き出すと、
不思議と、背中の視線は遠のいた。
えまが、ちらっと澪を見る。
村上 えま
澪は、少し迷ってから
小さく息を吸った。
白雪 澪
白雪 澪
しおりが、すっと表情を変える。
石田 しおり
みさとは、冗談めかして言う。
河野 みさと
四人で立ち止まる。
澪は、海翔の額のガーゼを 思い出した。
昨日の予知。
暗い廊下。
歪んだ目。
白雪 澪
その一言で、
えまの目が、すっと鋭くなる。
村上 えま
白雪 澪
えまは、拳をぎゅっと握った。
村上 えま
村上 えま
白雪 澪
村上 えま
しおりが、静かに頷く。
石田 しおり
石田 しおり
みさとも、珍しく真剣な顔。
河野 みさと
河野 みさと
その言葉に、 澪の胸が、じんわり温かくなる。
白雪 澪
その夜。
澪は、部屋で本を開いたまま、
ふと、窓の外を見る。
街灯の下。
人影は、ない。
――けれど。
予知が、微かに流れた。
校門の影。
電柱の後ろ。
名前を呼ぶ、低い声。
澪は、ぎゅっと胸元を押さえた。
白雪 澪
白雪 澪