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あまみつつき

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あまみつつき 後編

♥

153

2020年10月07日

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鴉天狗

鴉天狗

なぜ、このお寺が“餘魅慈(よみじ)“寺と呼ばれているのか

鴉天狗

ご存知ですか?

アサミ

え?

突然のことに戸惑う

鴉天狗

“餘魅慈“は当て字なんですよ

鴉天狗

本来の“よみじ“は──

鴉天狗

黄泉の路と書いて、黄泉路

アサミ

…………

鴉天狗

文字通り、黄泉へ行くための道

鴉天狗

死者が迷わないための──

アサミ

…………

鴉天狗

満月の日はなぜか、うつし世と隠り世の境目が曖昧に

鴉天狗

なるんですよね

アサミ

…………

鴉天狗

それに2年前から、変な“噂“が立っちゃうし

鴉天狗

──だから、あなたは……

鴉天狗

その“噂“を耳にし、来られたのでしょう?

鴉天狗

鴉天狗

──阿左美(アサミ)リエさん

阿左美リエ

……!

鴉天狗

それとも、芸名の方の“玄野(くろの)リエ“さんと、お呼びした方がいいですかね?

阿左美リエ

……どうして、わたしの名前を…………?

鴉天狗

あなたのご主人、阿左美慎哉さんのピアノコンサートに何度か

鴉天狗

拝聴しに行ったことがありましてね

鴉天狗

そのときに……♪

阿左美リエ

あなたは、いったい……?

鴉天狗

さて、何者でしょうね〜

鴉天狗

鴉天狗

烏天狗を先祖に持つ

鴉天狗

元人間とだけ、申し上げておきましょうか

阿左美リエ

(……なんとなく)

阿左美リエ

(人間じゃないなとは、思ってたけれど──)

不思議と恐怖は感じない

鴉天狗

あ、でも、ちゃーんと

鴉天狗

人間のふりをして

鴉天狗

正規ルートでお金を支払ってたので、ご安心ください

阿左美リエ

阿左美リエ

地方ロケで訪れるまで、餘魅慈寺なんて知らなかったし

阿左美リエ

たまたまだったの……

鴉天狗

…………

『満月の夜、餘魅慈寺に行けば、死んだ人に会える──』

阿左美リエ

宿泊先の同室で、新人マネージャーの子から

阿左美リエ

その“噂“を聞かされたとき……

阿左美リエ

もしかしたら、“あの人“に会えるかもしれないと思って…………

鴉天狗

鴉天狗

……お気持ちはわかりますが

鴉天狗

一度(ひとたび)死者となれば──

鴉天狗

生者と交わることは、許されません

阿左美リエ

……どんなに願っても?

鴉天狗

致しかねます

阿左美リエ

はっきり、言うのね……

鴉天狗

見張り番ですから

空が白けてきた

阿左美リエ

(……もうすぐ、夜明けだ)

鴉天狗

そろそろ、お帰りになられた方がいいですね

阿左美リエ

…………

鴉天狗

──片付けは私がしますので、大丈夫ですよ

鴉天狗

その前に──

黒い羽根を渡した

阿左美リエ

これは……

鴉天狗

お守りみたいなものです

鴉天狗

無事に戻れるように

阿左美リエ

鴉天狗

あなたが天寿をまっとうすることを──

鴉天狗

心から祈っています

鴉天狗

鴉天狗

彼女、似てたな

鴉天狗

──紅紫くんの面影に

阿左美リエ

…………

いつの間にか、旅館の前に立っていた

阿左美リエ

(どうやって、戻ってきたのかしら……?)

真理恵

真理恵

あ! いた……!

真理恵が駆け寄ってきた

真理恵

アサミさん! どこへ行かれてたんですか?

阿左美リエ

コンビニに

とっさにウソをついた

真理恵

起きたらいなくて、驚きましたよ

阿左美リエ

阿左美リエ

ごめんなさい

阿左美リエ

LIMEすべきだったわね

真理恵

何事もなくて、ホッとしました

真理恵

ところで──

真理恵

その綺麗な黒い羽根は、どうしたのですか?

阿左美リエ

これ?

阿左美リエ

阿左美リエ

ちょっとね

真理恵

ふたりは旅館の中へと入っていった

後日、自治体とお寺の関係者によって、餘魅慈寺の解体工事が開始された

スムーズに解体が進んでいるらしく、早ければ2ヶ月で終了予定らしい──

阿左美リエ

……もう二度と

阿左美リエ

……あそこへは、行けないのね

複雑な思いを抱えながら、ぼんやりと窓の外をながめた

この作品はいかがでしたか?

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コメント

5

ユーザー
ユーザー

慎哉さんのお嫁様……! お嫁様の面差しが紅紫さんに似ている時点で、「あの男……!!」となりましたw お嫁様、今回のことで振り切れたんでしょうか 彼女にも幸せになってほしいです

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