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おっ母さん

……ほんに、堪忍な?

おっ母さん

長女やからって、苦労ばっかりさせて

ハツ

ええんよ

ハツ

おっ母さんは、悪うない

ハツ

(悪いんわ……)

ハツ

(借金残して死んでしもた、お父ちゃんや)

ハツ

借金さえ、のうなれば

ハツ

おっ母さんは、実家の反物屋に帰れる

ハツ

ええ話やないの

ハツ

うちの幸せは、おっ母さんたちが幸せになること

ハツ

せやから、これでええんよ

ハツ

(うちさえ我慢すれば、みんな幸せになれるんやから……)

借金を返すため

私は遊郭に 売られることになった

おっ母さん

最後に……

おっ母さん

美味しいもん、食べようか?

ハツ

……うん

母が連れってくれたのは

甘味処やった

おっ母さん

なんでも、好きなもの食べてね

ハツ

ホンマに!?
ええのん?

おっ母さん

当たり前やんか

ハツ

うち、こんなご馳走、初めてや!

ハツ

こんな、エエもん食べてるって知ったら

ハツ

キイチもコトも、怒りよるかもね

ハツ

ふふっ

おっ母さん

……ハツ

おっ母さん

今ならまだ、逃げれる

おっ母さん

ホンマに、これでええの?

ハツ

ハツ

おっ母さん

ハツ

うちは嫁にいった

ハツ

キイチとコトには、そう伝えておいて

おっ母さん

ハツ……

母は泣いた

堪忍な、堪忍なと

小ちゃい子どもみたいに

遊郭での暮らしは……

それはそれは 酷いもんやった

番頭はん

ほれ、次のお客さんや

番頭はん

お前さんに会いたいゆう客が、ぎょうさん居てはる

番頭はん

お前さん、人気やな。
きびきび働いておくれやす

ハツ

へえ……

身体が穢れるごとに

一枚、一枚、 着るものが増えていく

髪を結われ

高い下駄を履かされ

飾り付けられる、私

ハツ

(まるで……)

ハツ

(お人形さんや)

男に汚されるたび

その身を湯で洗われる

肌が白さを増すごと

ハツ

(化粧が落ちひん……)

心は

ハツ

(洗っても洗っても……)

ハツ

(化粧の匂いも、男の匂いも落ちひん……!)

醜う、穢れていった

そんな月日が 数年、流れた頃

 

好きやで?

 

ホンマに、好きや……

私を「好き」と 言うてくれる人がでけた

ハツ

ほんざんすか?

ハツ

主さんが、おっせえすと

ハツ

嬉しゅうありんす

 

なあ、いつ嫁に来てくれるんや?

 

俺は、いつでもええんやで

ハツ

まあまあ。
よしておくんなまし

ハツ

あちきは、ただの遊女でござりんす

ハツ

見なんし……?

私は着物をちらりと めくって見せたった

 

わ、あわわ……

ハツ

ふふっ。
お上品な町娘なら

ハツ

こんなこと、できまへんえ?

半ば挑発するように

流し目で男を見つめたる

ハツ

(イヤイヤ始めた仕事やのに……)

ハツ

(今では、頭のてっぺんから爪先まで、立派な遊女やわ)

 

そんなこと気にせえへん

ハツ

あちきは、普通のおなごやありんせん

ハツ

わかっておくれなんし……?

ハツ

(遊女を見受けするには、大金が必要や)

ハツ

(こないな若い客人に、払える額やない)

 

お、オレは!
呉服屋の跡取りやで

 

金なら、いくらでも払うよってに……!

ハツ

では、おさらばえ?

 

待って──

バタン

ハツ

堪忍な……

自分も「好きや」と 言えたら

どんなにか 楽になれたやろ?

だけど、私は遊女

店に買われた身

惚れた腫れたで 此処からは出て行けん

ハツ

わかっておくれなんし……

ハツ

身を売って生きとる人間に

ハツ

あんさんの優しさは、眩しすぎるんよ……

ハツ

ああ、おっ母さんに会いたい……

ハツ

みんな、元気にしとるやろうか?

ハツ

うちの分も……

家族の無事を願うのが 私の日課

そして、心の支えやった

次の日

 

こりもせんと、また遊びに来ました

男はまた、遊郭へ やって来た

 

今夜も……よろしおすか?

ハツ

へえ……

ハツ

(お花代は頂いてる。断る権利は、私にはない……)

男と重ね合う肌

伝わる温もり

そして、汗の匂い

その全てが 愛おしかった

ハツ

(この人が、初めてや……)

ハツ

(家族でもないのに、愛おしいと思えたんわ)

ハツ

主さん、生まれはどこでござりんす?

深い意味なんかない

ただの気まぐれ

でも、それが

運命の分かれ道になった

 

へえ。自分は、○○村の出身です

ハツ

ほんざんすか!?

ハツ

(私と、同じ村や……)

嫌な予感がした

昔から、嫌なことほど よく当たる

ハツ

あちきの記憶では、あの村は農村でありんす

ハツ

呉服屋なんて、在りましたかいな?

 

ああ、オレは養子なんですよ

ハツ

養子、どすか?

 

母親の実家が、
反物屋でして

 

その縁で、子が居らん呉服商人と再婚したんです

ハツ

反物屋の実家……

ハツ

再婚……

ハツ

(私が遊郭に売られたのは……)

ハツ

(再婚するのに、ジャマやったから……?)

長い長い 遊郭での暮らしは

私の認識を歪ませ

狂わせていた

ハツ

キイチ……?

 

はじめて、ですね?

 

オレこと、名前で呼んでくれるんわ……

ハツ

なっ……!

ハツ

もう、お会いすることは出来まへん!

 

ええっ!?

 

どうして急に!?

ハツ

堪忍しておくんなまし……

ハツ

(なんで、今まで気づかんかったんや!?)

ハツ

(この人は、私の……)

 

何でです!?

 

オレ、なんか失礼なこと、しでかしましたか?

ハツ

いいえ。主さんは、何にも悪いことなどござりんせん

ハツ

全て、あちきのワガママでござりんす……

ハツ

堪忍え?

立ち去ろうとする 私の足を

男が、つかんだ

ハツ

離しておくんなまし……

 

お前も……
オレを捨てるんか?

 

お前も、
他の男がええんか!

ハツ

は、離して、おくんなまし……!

 

ええいっ!
黙れ、黙れ!!

 

男に媚びるしか出来ん、遊女風情が!!

 

オレがお前のために、どれだけ貢いできたか!

 

オレの女になれ!

 

オレだけの女に!!

ハツ

きゃ……っ!

足を引っ張られ 私は尻もちをついた

 

離さへんで!

男は馬乗りになり

ギリギリと 私の首を絞める

ハツ

うぐっ……

ハツ

(所詮)

ハツ

(遊女は、籠の鳥)

ハツ

堪忍……え……?

どうせ、何処にも 逃げれんのやったら

全てを闇に 葬り去りたい

ハツ

(好いとうよ……)

ほんに愛する、弟の

手の……中で……

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351

コメント

10

ユーザー

報われない想いが交錯する物語…。その中でキャラクターの個性がしっかり立ってて、ストーリーに没入してました。お見事でした😢

ユーザー
ユーザー

最高です… 少し難しい話でしたが、読ませていただきました‪.ᐟ‪.ᐟ

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