ノノ
太郎くんってさぁ
ノノ
もう、死んでるよね?
サタン
ああ、そうだ
サタン
そのことでお主に相談がある
ノノ
…お迎えが来ないってこと?
サタンは大きく頷いて見せた。
ノノ
うーん…
ノノ
どういう経緯であの子はサタンのところに来たの?
サタン
それは……
・
・
サタン
実は、去年の十一月ごろから我を呼ぶ声が聞こえておってな
サタン
ずっと、気にはしておったのだ
ノノ
どうしてすぐに呼び声に応えなったの?
サタン
うむ
サタン
我ら上級悪魔はそう簡単に呼べるモノではないし
サタン
呼ばれただけで応えられるモノでもないのだ
ノノ
そうなんだ
ノノ
タナキエルは呼ばれたらホイホイ応えてたけどね
タナキエル
は?俺がいつホイホイ応えたって?
ノノ
え、あの、魔法整体師
タナキエル
!!
タナキエル
思い出した!
タナキエル
思い出したから!それ以上言うな!
サタン
??
ノノ
え~
ノノはニヤニヤと楽しそうに笑う。
タナキエル
ったく、本題に戻るぞ
ノノ
はぁい!
タナキエル
上級悪魔を呼び出すには
タナキエル
通行料がいるんだよ
ノノ
通行料……
ノノ
つまり、贄(にえ)ってこと?
サタン
うむ、その通りだ
サタン
その時点では強い想いを持った何者かが我を呼んでおる
サタン
それだけに過ぎなかった
サタン
それはさほど珍しいことは出なかったし
サタン
気に留めることもなかったのだが
ノノ
通行料が支払われたんだね
サタン
うむ
ノノ
それが太郎くん?
ノノ
あ、いや、それは違うよね
ノノ
太郎くんの魂は綺麗だから…
ノノ
太郎くんがサタンと契約したわけじゃないってことだし
サタン
……
ノノ
ん?
サタン
そうか、太郎の魂は我の穢れを受けておらんのか
ノノ
うん、それはね、大丈夫!
ノノ
私が保障するよ
ノノはニコッと笑って見せた。
ノノ
ただね、サタンの魂に寄り添い過ぎているところはあるかも
サタン
我の魂に?
ノノ
うん
ノノ
太郎くんの心の拠り所がサタンになっている
ノノ
そう言った方がいいかな?
ノノ
でも、けして良いことじゃないんだよ
ノノ
このままずっとサタンの側にいれば
ノノ
おそらく、太郎くんの魂は悪化しちゃう
サタン
悪化?
ノノ
そう
ノノ
悪霊になっちゃうってこと
ノノ
そうなると最悪、”処刑班”が来て消滅させられちゃうかも
サタン
なんと!?
ノノ
まぁ…サタンが側にいるからそれは無いと思うけどぉ
サタン
う、うぅむ……
ノノ
あ、話しを戻すけど
ノノ
サタンを呼び出したのは誰なの?
サタン
……
サタン
おそらく、という推測でしかないのだが
ノノ
うん
サタン
我を呼び出したのは太郎自身なのだ
ノノ
でも、太郎くんの魂はサタンと契約していないよ
サタン
そこが我もよくわかっていないところでな
サタン
我はあの日……12月24日、呼ばれ
サタン
通行料が支払われ
サタン
道が開いた
サタン
ならばそれに応えなければならん
サタン
ずっと我を呼んでいた
サタン
あのか細い声の主を一度見て見たいと思っておったのでな
サタン
しかし、そこに生きた者は一人としていなかった
ノノ
ん?どういうこと?
サタン
太郎の側に居た者たちは何者かに殺害されておった
サタン
おそらく、それが通行料になったのだろう
ノノ
じゃあ、太郎くんも?
サタン
いや、あやつは……
サタン
ベランダで餓死しておった
ノノ
へ?
サタン
どういう経緯でベランダにおったのかはわからん
サタン
だが、二人が殺害される瞬間まで太郎はギリギリ生きておった
サタン
そして、二人が殺害されてほどなくして亡くなった
サタン
そのタイミングで我が太郎の前に現れた、ということだ
ノノ
ほ、ほぉ…??
ノノは首を傾げる。
サタン
こればかりは我も上手く説明が出来ん
ノノ
えっと…えーっと…
ノノ
つまり…
ノノ
サタンを呼んでいたのは、太郎くんだった
サタン
うむ
ノノ
サタンを呼ぶための通行料は太郎くんの側に居た人たちだった
サタン
うむ
ノノ
そこまでは、”召喚者”が太郎くんだった
サタン
うむ
ノノ
でも、いざ呼び声に応えて現れたら
ノノ
”召喚者”である太郎くんは死んでいた
サタン
うむ
ノノ
そうなると悪魔との契約ってどうなるの?
ノノ
私の目には契約しているようには見えないんだけど…
タナキエル
それが正解だろ
ノノ
へ?
タナキエル
”召喚者”が死んだ時点で契約は破棄になる
タナキエル
というか、呼び声に応えただけなら”仮”契約状態で
タナキエル
”本”契約を結んでいないからな
ノノ
あ、なるほど
ノノ
そういうことか
ノノ
っとなると、なんで太郎くんはああいう状態に?
サタン
うむ、それがよくわからんのだ
サタン
気が付くとベランダにいたはずの太郎は部屋にいて
サタン
泣いておった
サタン
しかも、あやつはサンタさんにお願い事をしておったようで
ノノ
まさか…
サタン
うむ、サンタとサタンを間違って呼んでしまったようでな
ノノ
いやいやいやいや!!
ノノ
気軽に呼べない存在じゃなかったの!?
ノノ
めちゃくちゃ人違いで呼ばれるじゃん!!
サタン
う、うぅむ…そこはなんとも弁明のしようもない…
ノノ
ひょぇぇえ
ノノ
そんな凡ミスある?
タナキエル
あるみたいだな
サタン
ま、まぁ、それだけ太郎の想いが強かったということだろ
ノノ
そ、そういうことにしていいのかなぁ……
サタン
それで、そのままにしているのも気が引けてな
サタン
連れ帰ったというわけだ
サタン
すぐに死神が迎えに来るだろうと思っておったが…
サタン
これも、我の魂に寄り添っているせいなのだろうか?
タナキエル
つぅか、そもそもこの管轄の死神は何してんだ?
ノノ
いやぁ、”一般”の死神までノノちゃんは把握してないよぉ
ノノ
だいたい、私、謹慎中だしぃ
タナキエル
会ったことないのか?
ノノ
うん、無いよ
ノノ
”特殊班”は”一般”から冷たくあしらわれちゃうから
タナキエル
なんだそりゃ
サタン
どうにか、太郎を上に連れて行ってはくれないだろうか?
ノノ
……
ノノ
申し訳無いけど
ノノ
現状だと難しいかなぁ
サタン
なぜだ?
ノノ
太郎くんが自分の死に気付かないと
タナキエル
自分が死んだことに気が付いてない奴なんてゴマンといるだろ
ノノ
いるけど、その大半が地縛霊とか
ノノ
悪霊になってるんだから
ノノ
太郎くんを綺麗な魂のまま上に持っていってほしいなら
ノノ
①自分が死んだことに気付かせる
ノノ
②サタンと別れる覚悟をさせる
ノノ
それが絶対条件だよ
サタン
……そうか、わかった
サタンは大きく頷いて、
ソファーで眠っている太郎に目を向ける。
ノノ
私もここの管轄の死神捕まえて
ノノ
話しはしておくからさ
サタン
うむ、宜しく頼む
サタンは深々と頭を下げた。
・
・