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ぐほぉっ( ゚∀゚):∵グハッ!!( ´•̥ ·̭ •̥` )(๑o̴̶̷᷄﹏o̴̶̷̥᷅๑)。゚( ゚இωஇ゚)゚。 えー……。てらーで一番好きな小説ランキング、何回みても飽きないランキング、泣けるランキング、心に刺さるランキング、もう何もかも1番ですわ。もう自分でも何回読んだか覚えてないですもん。神作。
月見。
月見。
月見。
月見。
赤くん→火を操る能力 水くん→植物を操る能力 白くん→毒を操る能力 桃さん→重力を操る能力 青さん→一度見たものを完全に覚えられる能力 黒さん→言霊(言葉で人を操ったり言ったことが現実になったりする)
月見。
注意!! ・地雷さんは今すぐUターン! ・青黒、白水、赤桃前提です ・🎲様能力者パロ ・nmmn ・ご本人様方とは何も関係のないフィクションです ・口調&キャラ崩壊あり ・通報❌
月見。
幼い子供だった。
能力の存在すらよく知らなくて、それがまさか自分に宿っているなんて、尚更。
“いなくなっちゃえ!!”
次の日、君は居なかった。
能力者?本当にいたんだね
言霊使いらしいよ
○○くんがいなくなったのって、もしかして
どういうこと?×したの?
でもアイツが「いなくなれ」みたいなこと言った次の日から・・・
じゃあアイツは、
人殺し
悠佑
荒くなった、不安定な呼吸。
汗でべったりと背中にくっつく部屋着が気持ち悪い。
震えた手を隠す様に、力を込めてぎゅっと強く握り締めた。
悠佑
最近、よくあの夢を見る。
朝5時半。いつも騒がしいこの家も、まだ静寂に包まれている。
きっと後1、2時間もすればアイツらも起きてくるだろう。
昨日の夜に溜め込まれた洗濯物を洗濯機に投げ入れ、洗濯機を回す。
キッチンに入り、さて、と考え込む。今日の朝飯はどうするか。
偶にはりうら待望のポテトでも作ってやろうか。最近大学のレポート作成とかテストとかで頑張ってたしな。
そうと決まれば。俺は早速準備に取り掛かった。
油が弾ける音が寝ているアイツらを起こしやしないかと少し心配だが、ほとけを呼ぶないこのあの爆音の声にもみんな耐性がついてきていたし大丈夫だろう。まぁ最近はほとけの能力上達によってそれも無くなったが。
いやでもりうらは音と匂いで起きてきそうやな。「ぽてと!?」とか言いながら飛び込んできそう。
なんて想像して、くすっと笑う。相当ポテト大好きよなぁ。
人殺し
悠佑
突然、頭の中で囁く声。
途端に、さっきの夢の内容がフラッシュバックしてくる。
違う。俺はあの時、そんな意味を込めて言ったわけじゃ。
───き、 ───にき、
能力を使おうなんて、本当にいなくなるなんて、そんなこと。
俺はっ・・・
If
悠佑
すぐ近くから聞こえて来た大声と掴まれた右腕に、意識を引き戻される。
If
悠佑
If
悠佑
If
悠佑
If
悠佑
If
悠佑
If
If
悠佑
If
自分のことかのように主張してドヤるまろに、くすっと笑みが溢れた。
悠佑
If
悠佑
If
悠佑
言える訳、無いよな。
“お前はいなくならないで”なんて。
りうら
ないこ
初兎
悠佑
初兎
-hotoke-
If
朝から騒がしい食卓。今朝見た夢のことなんて頭の片隅に追いやれるほど、この騒がしさは心地良い。
りうら
悠佑
りうら
If
ないこ
If
-hotoke-
初兎
If
初兎
悠佑
If
ないこ
初兎
服屋の有名なブランドの紙袋を手に下げ、鼻歌でも歌い出しそうな程上機嫌で歩くりうらの隣を、くすっと笑いながら歩く。
悠佑
りうら
悠佑
りうら
悠佑
才能マンでなんでも出来て、こいつほんまに最年少か?なんて思う時もあるが、こう言うところを見るとやっぱり最年少やなぁと実感する。
最近忙しそうだったからこそ、こんなにも嬉しそうにはしゃいでいるのを見るとなんだかこっちまで幸せな気持ちになる。
りうら
ほのぼのと横目で眺めていると、りうらが何やら少し表情を固くして立ち止まった。
悠佑
りうら
りうらの言葉に、その視線の先を追う。
そこには一人の男が立っていた。りうらの様子からするにりうらの知り合いではないだろうし、俺も見覚えが無い。
細められた目に、上がった口角で緩やかに描かれた弧。
言葉にし難い雰囲気を醸し出すその人物は、10メートルほど先で立ち止まって俺達を見つめていた。
りうら
りうらが怪訝そうに顔を顰める。俺も近付きたいとは思わず、思わず眉間に皺を寄せた。
とは言え、ここは帰り道。他の道からも帰れないことはないが、かなり遠回りになってしまう。いむしょーも待たせている訳だし、早く帰って昼飯を作ってやりたいのだが。
悠佑
りうら
能力者狩りは俺達の不意を突いて襲ってくる。あんなにしっかりと正面から姿を見せることは無い。
悠佑
りうら
悠佑
どうしたものか。進むも戻るもし辛くなってしまった。
俺が頭を悩ませていると、不意にそいつは一歩前へと足を踏み出した。
りうら
そのまま、スタスタとこちらへ一直線に向かって来る。
りうら
悠佑
微動だにしない作り物の様な笑顔が不気味で、背中を冷や汗が流れる。
でも見た感じ武器は持ってないし、能力者狩りじゃないことは確かだ。意外と普段からああいう奴なのかもしれないし。疑いすぎるのも。
りうら
悠佑
グルグルと考えていると、りうらの声にハッと我に返った。
いつの間にか、そいつは俺の目の前まで迫っていた。
悠佑
耐えられるかな?
そいつの手が、肩に触れた。
-hotoke-
初兎
-hotoke-
初兎
-hotoke-
初兎
-hotoke-
二人しかいないはずの家が少し、いやかなりうるさい。
ここにないちゃんがいればきっと「バカップルうるせえええ!!」と大声で騒いだことだろう。特大ブーメラン。
チーム戦のレース、無事に一位でゴールした僕はいえーい、と声を上げコントローラーを持つ手から力を抜いた。
初兎
-hotoke-
そう言いながらも二位でゴールするいむくん。やっぱゲームと言ったら僕らやな。
その時、僕のお腹がぐうと小さく鳴った。ちらりと時計を見る。もうお昼だ。
-hotoke-
初兎
いつも僕達のご飯を作ってくれる家庭的男子代表の悠くんは、出かけてもお昼には帰って来てくれる。多少遅くなっても「悪い今から飯作るから!」と流石のスピードで作ってくれる。
初兎
-hotoke-
そう言っていむくんがスマホを操作していると、玄関のドアがバン!!と豪快に開く音がした。
りうら
りうちゃんの張った声が響く。焦燥を含んだその声に、僕達は顔を見合わせ、同時に玄関へと走った。
-hotoke-
初兎
りうちゃんが肩に腕を回させ、支えているのは間違い無く悠くんだ。・・・悠くんなのだが、様子が変で。
りうら
初兎
能力者に、やられた?
聞きなれない言葉に、理解が追いつかなかった。“能力者狩り”では無く、“能力者”に?
りうら
名前も顔も知らない様な、笑顔を浮かべた少し不気味な雰囲気を醸し出すそいつは、するりとあにきに近付いた。
俺があにきに手を伸ばすより先に、そいつの手はあにきの肩に触れた。
“君は、耐えられるかな?”
そいつがそう呟いた瞬間、あにきは棒立ちになった。
だらりと垂れた腕、脱力した肩。下を向いて微動だにしなくなったあにきに、俺は困惑しながらもなんとか声をかけた。
りうら
返事は、笑顔は返ってこない。
暫くその姿を見つめた後、俺は視線の先をあにきからそいつへと変えた。
りうら
相変わらず崩れないその不敵な笑みが気持ち悪い。
もうすぐ?何が?と思いながらあにきへと視線を戻し、そして、俺は固まった。
悠佑
あにきが両手で顔を覆い、何かに怯える様に背中を丸めて体を小さくしていた。その体が、震えている。
りうら
悠佑
りうら
明らかに只事じゃない。震えながら何かに対して延々と謝罪と許しを乞うのを繰り返すあにきの両肩を掴み、目を合わせた。
りうら
いつもは綺麗な彼の瞳が、暗く、深く、濁っていた。
曇った瞳から、ボロボロと溢れる涙。笑顔が抜け落ちたその表情は絶望に染まっていた。
りうら
平然と言ってのけたそいつに、は?と低い声が漏れる。
音符が付きそうなほど明るい声で、笑いながらそう言う目の前の奴に、俺は理解が至らなかった。
・・・何言ってんだ、こいつ。
意味が、分からない。
りうら
適当に返事をしたそいつは、すっと目を細める。
りうら
あ、でも安心して?にっこり笑って、そいつは言う。
目の前で平然と語られる内容が、同じ人間のものとは思えなかった。
・・・そんな最悪な能力を、こいつは、あにきに?
りうら
辺りをボッと火が覆った。
許せない、あにきをそんな目に合わせて、許さない。
炎に囲まれる前に、さらりと避けて離れたそいつをキツく睨み付ける。
りうら
火を飛ばす。が、軽々と身を翻しそいつは姿を眩ませた。
怒りは収まらない。いつもより火が熱く感じるのはそのせいか。
けどいつまでもそっちに気を取られてもいられない。今の課題は目の前にある。
りうら
悠佑
りうら
青ざめた顔でまたぶつぶつと謝罪を口にした後、あにきはふっと意識を失った。
崩れ落ちる体を咄嗟に支える。目尻に溜まった涙に、隣に居たのに守れなかった後悔に襲われ胸が痛む。
とにかく、俺一人ではきっと何も解決しない。
家に居る筈の二人を思い浮かべ、俺は家へと急いだ。
りうちゃんの話を、混乱する頭でどうにか理解する。
ぐったりとしている悠くんは、気を失っているらしい。
・・・トラウマを、見続ける。
想像して、ゾワリと鳥肌が立った。有り得ない。そんなの地獄以外の何者でもないだろう。
-hotoke-
りうら
悠くんがこんな状態になって、一緒に居た筈の自分に負い目を感じているんだろう。りうちゃんが悔しそうにギリッと奥歯を噛んだのが分かった。
リビングでテーブルを囲み僕達は向かい合った。もうお昼の時間も過ぎたが、この状況。食欲なんて湧きもしない。
初兎
-hotoke-
僕達能力者は少数派。“普通”の人達との差はどうしても生じるし、能力者じゃない人達から蔑みの目を向けられることだってある。能力者狩りなんてその過激派の典型だ。
僕達は六人でいつも一緒にいるから。能力者と能力者は助け合うもの、なんて認識がいつの間にか当たり前になっていた。
りうら
暗い声色で、ぽつりとりうちゃんが呟く。ないふの二人が帰ってくるまでにはまだ時間があった。まだ仕事中だろうが、連絡はした方がいいだろう。
-hotoke-
そう言ってスマホを取り出すいむくん。僕は、スマホの画面を暗い表情で見つめるりうちゃんの名前を読んだ。
初兎
その言葉に、りうちゃんは一瞬目を見張ってから、泣きそうに顔を歪めて頷いた。
仕事中にスマホに届いた通知を見て、俺は一瞬呼吸すら忘れた。
“あにきが能力者に襲われた”
その直後の行動も言葉も何一つ覚えていない。気付けば会社を飛び出して、俺は帰路を走っていた。
If
リビングへの扉を開くと、子供組がハッと俺を見た。そこに、あにきの姿は無い。
If
りうら
-hotoke-
俯いて謝るりうらの背中をほとけが撫でる。その様子を見守っていたしょにだが、俺へと視線を向けた。
初兎
If
一通りの説明を受け、俺は呆然と立ち尽くした。
トラウマを、見続ける。
“悪い、なんでもないから”
昔の記憶が蘇る。いつかのあにきが、俺の頭の中でへらりと笑った。
If
初兎
俺はリビングを飛び出し、あにきの部屋へと向かった。
暗い。
何も見えない、暗くて、黒い空間。ここは何処なのだろう。
ぼんやりとその場に立っていると、突然目の前の景色が変わった。
悠佑
見覚えがある、その景色。目の前に立つ、幼い二人の子供。
・・・その一人は間違い無く、昔の俺だった。
揉めているらしい二人の会話に、“俺”はごくりと唾を飲み込んだ。
ゆうすけ
幼い俺は感情を昂らせて喋る。
駄目だ、待って、それ以上言ったら。
体は動かず、声も出すことが出来なかった。止めることが出来ない。待って、言っちゃ駄目だ。
ゆうすけ
視界の景色が変わる。
ランドセルを背負った俺は、一人で道を歩いていた。その表情は暗い。
ゆうすけ
悠佑
突然後ろから現れた数人の小学生達。そのうちの一人が、俺をランドセルごと勢い良く蹴飛ばした。
ケラケラ、ニヤニヤと笑うそいつらの言葉が幼い俺の胸を突き刺す。
人殺し、人殺し、と手拍子と共に投げられる言葉と目の前の光景に、ひゅっと息が詰まる。
コールは止まない。寧ろ大きくなっていく。
視界が暗くなって、俺はその場にしゃがみ込んだ。
違う、やりたくてやったんじゃない。意図的でもなんでもない。能力を知っていた訳でもない。
こんなつもりじゃ、ごめん、ごめんなさい、許して。許して、ごめんないごめんなさいごめんなさいごめんなさい────
勢いに任せ飛び込みたいのを、それで変に起こしたくはないと思い留まり、部屋の扉の前でなんとか勢いを押し殺す。
ふー、と息を吐いて、なんとか心を落ち着かせようと試みる。意を決して顔を上げ、俺は扉を開けて部屋の中へと足を踏み入れた。
If
あにきは眠っていた。しょにだ達から話は聞いていたが、体に傷が無さそうなことにひとまず安堵する。
もっとよく顔を見ようと、枕元へ近付く。すると、彼の表情が歪んでいる事に気が付いた。
悠佑
何やらぶつぶつと、苦しそうに呟いている。
悠佑
息が止まる。
目元に涙を浮かべ、悲痛に顔を歪めるあにきは、何かに怯えるようにしてひたすら謝罪を繰り返していた。
If
その肩を掴んで揺らす。起こさないといけないと思った。このままにしていたら、彼はきっと。
悠佑
薄らと目を開けた彼は、ぼんやりとした顔のまま上体を起こした。
If
そっと声をかけてみると、あにきはぴくっと肩を揺らしたが、返事は無かった。
悠佑
何かが弾けたように、あにきはびくりと体を震わせ、その表情が一気に恐怖へと歪んだ。
悠佑
If
顔を覗き込んでも、曇って涙に濡れた目は俺を映してはくれなかった。
If
震える体を抱き締める。こんなに苦しんでるのに、怖がってるのに。何も出来ない自分が嫌になる。
If
トラウマって、なんなの。
ないこ
部屋に入って来たないこに、心無しか重い体で口を開いた。
If
本当は俺が一緒に入りたかった。心配だし、そばを離れたくなかった。でもないことしっかり話すには、こうするしか無かった。
ないこ
If
無言で頷く。俺は、あにきのトラウマについて何も知らない。あにきが隠し通そうとするのと、トラウマに簡単に触れることが出来ないからだ。
ないこなら知っているだろうと汲んだ。あにき以外の五人の中であにきと一番付き合いが長いのは俺だが、あにきの過去や事情について一番よく知っているのはこのシェアハウスに彼を誘ったないこだろう。
ないこ
少し黙り込んで、ないこは意を決した様に口を開いた。
ないこ
If
ないこ
あにきは、同じ学校の友達と喧嘩をした。
原因なんて覚えてもいないような、些細な喧嘩。よくある子供の言い合い。
小学生なら、理由も無く、意味も考えず、「死ね」とか「消えろ」とか「どっか行け」とか、そんな言葉を吐いたことがある人だっているだろう。
深いことなんて考えず、ただその時の怒りを分散しようと、あにきが相手に吐いた言葉。
“いなくなっちゃえ!!”
その言葉に、偶々言霊の力が宿ってしまった。
自分に能力が宿っていることも、それが言霊だなんてことも、幼いあにきには知る由もなかった。
次の日から、その友達は忽然と姿を消した。
死体が見つかった訳ではない。生死はわからない。誰も行方を知らない。ただそれから、その姿が見られることは一生無かった。
最初はみんなその子のことを心配していたけど、一週間程経って流石におかしいと思い始めた。
そんな中、二人が喧嘩をしていたのを知っていた一部の他の子供達が、良からぬ噂をし始めた。
能力者って知ってる?
聞いたことある!何人かに一人しかいないやつだよね!
能力者?本当にいたんだな
悠佑くんが能力者なの?
言霊使いらしいよ
○○くんがいなくなったのって、もしかして
どういうこと?×したの?
でもアイツが「いなくなれ」みたいなこと言った次の日から・・・
じゃあアイツは
人殺し
そこから始まった仲間外れ、悪口、いじめ。
あにきは完全に学校で孤立した。
自分を責める言葉、人殺しと笑う言葉が、心に永遠の傷を付けた。
その友達がいなくなったのは自分の言葉が原因だという罪悪感にも駆られて、考える度に胸が痛み苦しくなって。
それから、今も時々あの頃の夢を見る。
無意識のうちに止めていた息を、は、と吐き出す。
なんだそれ、そんなの、そんなの。
If
心も体もまだまだ幼い小学生だ。心無い言葉をその場の勢いだけで吐き出してしまうことなんて日常茶飯事だし、能力の存在も知らない方が多い。そもそも小学生が自分にそんな能力が宿っているなんて何処で知るというのか。
それを、人殺しだなんてあにきを責め立てて、傷付けた。
彼に、トラウマを植え付けた。
If
顔も名前も知らない、きっと今あにきのことなんて覚えてもいないだろうそいつらに怒りを感じる。無邪気は、時に人の心を殺すんだ。
ないこ
If
ないこ
十年以上抱え続けて来た、彼の過去。
心の傷を、癒すには。
それから数日間、なんの収穫もない日が続いた。
俺とないこは仕事を休み、俺はあにきのメンタルケア、ないこはあの日二人が遭遇した能力者について情報収集に力を入れていた。
あにきは精神的にかなりやられているのもあって、食べる量がガクンと減ってしまった。俺がリビングに連れて行って食べさせない限り自分から食べようとはしないし、食べさせてもすぐにもうお腹いっぱいだと顔を逸らしてしまう。
あにきの笑顔が無くなり、家の中はなんだか暗くなった。
そして、何よりも影響があったのが。
りうら
ないこ
圧倒的家事。
料理も洗濯も、今まであにきが一人でやってくれていた。洗濯とか掃除とかは時間があればなるべく手伝ったりはしていたつもりだったけど、料理に至っては毎食あにきが作ってくれていたから、俺達の能力なんて乏しく。
リビングやキッチンから聞こえてくる騒がしい声に溜息を吐きながら、俺はココアの入ったマグカップを持ってあにきの部屋へと入った。
If
悠佑
あにきはベッドに上体を起こして座っていた。俺の声に反応して、そっと顔を上げる。
表情は暗く、触れれば壊れてしまいそうな儚げな雰囲気を纏っているが、今はまだ俺を瞳に映してくれていた。今日は落ち着いている方だろう。
If
悠佑
If
差し出したマグカップを受け取らず、俯いてしまったあにきに首を傾げる。ココア、嫌いではなかったと思うのだが。やっぱりいらないのだろうか。
悠佑
If
能力をかけられてから言葉少なになってしまった彼に、滅多に呼ばれなくなった名前。
それが今突然呼ばれて、喜ばない訳がない。嬉しさに口元を緩ませて、どうしたの、と返そうとした時。
悠佑
予想もしていなかった言葉が、その口から飛び出した。
If
理解が至らず、反応が遅れた。
If
有り得ないほどに動揺して、上手く喋れない。あにきは依然俯いたまま、俺と目を合わせてはくれない。
悠佑
If
悠佑
If
“俺のせい”だなんて、そんな言い方して欲しくない。これは俺の意志だ。義務感なんて感じてすらいない。俺がしたくてしていること。ないこだってそう言うだろう。
悠佑
If
表情は上手く見えないが、あにきが小さく嘲笑の笑みをこぼした気がした。
If
悠佑
If
俺が守りたいから。漸く手に入れた、戦闘向きな能力。あにきを守る為に使う力。
悠佑
If
それは、あにきを守って?それとも、あにきの能力?
悠佑
If
悠佑
If
悠佑
いつまでも俯いているあにきの肩を掴んで、無理矢理こっちを向かせた。戸惑いに揺れる瞳と目が合う。マグカップが落ちてココアが溢れたが、今はそんなもの気にしていられない。
If
悠佑
If
悠佑
If
瞳が大きく見開かれ、揺れる。
If
思えば、悠佑は自分の意志を強く示したことが無かった。
それも、彼の能力とトラウマが関係していると言うのなら。またあの頃の様に、無意識に能力を使ってしまったらと怯えているのなら。
そんなの、見逃してやるものか。
If
勢いで最後まで叫びそうになり、小さく息を吐き出して勢いを殺した。大事なことは、そんな勢い任せに言いたくない。
しっかりと目を合わせて、口を開く。
If
とっくの昔に、君は能力を完全に扱えるようになっているのに。
昔の記憶がその事実を有耶無耶にして、今も心の言葉を隠してしまっている。
ねえ、声に出して。君の本当の願い。
悠佑
瞳がじわりと潤んで、くしゃりとその表情が歪んだ。
遠慮がちに開かれた口が、短く息を吸い込んで。
悠佑
If
悠佑
────いなくならないで。
If
初めて聞く、彼の言葉。心の願い。
悠佑
ボロボロと涙をこぼして、吐き出された彼の本音。
If
悠佑
ああ、格好良くいたかったのに。
滲む視界で、悠佑が驚いた表情を浮かべた。
If
そんな過去に、縛られないで。口を閉ざさないで。
If
くしゃっと笑った拍子に、目から涙がこぼれ落ちてシーツを濡らした。
悠佑
If
悠佑
If
ぎゅっと力強く抱き締める。過去の出来事も心無い誰かの声も、全て掻き消してしまうくらいに。
漸く聞けた本当の気持ちも、背中に回された腕も、全てが愛おしい。
離してって言われても、もう離してあげない。
If
目を開ける。ぼんやりとした頭のまま視線を動かすと、俺はベッドで寝ていた。昨日、あのまま泣き疲れて寝てしまったらしい。
あれ、でも俺、昨日ベッドに入っただろうか。ご丁寧に布団までかけられて・・・
If
そうだ、ここはあにきの部屋。昨日散々泣き合って抱き締め合った彼が、隣にいない。
何かあったんだろうか。そう思えば眠気なんて一気に吹き飛び、俺は部屋を飛び出した。
If
飛び込んだリビング。瞬間、鼻を掠めた空腹を誘う匂い。
キッチンに立つのは、エプロンを付けた、
悠佑
振り返った君が微笑む。
窓から差し込む光を写して輝く瞳。柔らかく微笑む優しい表情。
待ち望んだ、朝。
If
声を出すより先に、体が動いていた。
きつくきつく抱きしめる。昨日あれだけ泣いたのに、やっぱり涙は溢れてしまうものなんだな。
If
悠佑
震えている体も、暗い表情も、曇った瞳ももう何処にも無い。
If
悠佑
抱き締め返してくる体。あにきがこぼす笑み。それだけで、こんなにも心が満たされて。
りうら
-hotoke-
初兎
ないこ
バタン!!
If
全開になった扉から雪崩れ込んできたメンバー達を、顔を顰めて見つめた。
ないこ
初兎
りうら
-hotoke-
初兎
昨日の苦しさも、ついさっきまでの二人だけの静けさも、あっという間に掻き消され。
いつも通り、騒がしい日常が戻って来た。
きょとんとしたあにきと、目を合わせて、同時に吹き出して笑い合った。
こんなイレギュラーな生活を、この先もずっと、君と一緒に。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。