テラーノベル
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ひどく雨が降っていた。
吐いた息が濁るほどに寒い。
肌を冷たく突き刺し 伝う滴は古傷をえぐる。
雨は大嫌いだ。
夢であって欲しかったあの日を、キレイに蘇らせる。
流れ出る体温も、辺りを漂う匂いも、声も───。
全てを思い出させる。
いつの間にか手にはいる力が強くなっていた。
「車、戻るか」
急いで深呼吸をし、そうつぶやいて後ずさる。
歩くたび地面が水しぶきを上げて足を濡らす。
それを小走りでリアムが追いかけ、傘をさしていない自分に腕を伸ばす。
「風邪を引きますよ」
言葉とは裏腹に感情のこもっていない声色。
後ろにいるリアムに一瞬目をやり、ため息をついてから立ち止まった。
「俺はガキじゃないんだから…」
キョトンとした顔で「はい?」と聞き返してくる。
なぜだかそれが可笑しく笑ってしまう。
「いや別に」とだけ言ってまた背を向けた。
納得いかないような、そんな雰囲気が背中を刺してくる。
少しだけ足取りが遅くなった気がしたが、気のせいだろう。
車の扉を乱暴に開けドカッと助手席に乗り込む。
「あー、さむ…」
「だから言ったでしょう」
「お前は俺の母親かよ」
呆れた、と言わんばかりに視線だけを向ける。
そんな事を言っていると突然、ずずいと顔を近付けてきた。
反射的に身体がのけぞる。
あと数センチで唇がぶつかりそうな程、ふたりの距離が一気に縮まり緊張感が増す。
「なに、急に…」
質問には応答せずただ鋭く目だけを見つめる。
その間雨に反射した都会の光がやけにまぶしく感じた。
しばらくの沈黙のあと服の下に手を突っ込まれ、腹を撫でるように触られる。
驚く俺を見てニヤリと笑い
耳元で囁く。
「風邪、引きますから着替えましょう
続きはそれからです、誠司さん」
コメント
1件
ガチ上手すぎません?師匠😭表現が最高すぎた!