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今日は一日中走り回っていたせいか、いつもに増して疲れている。
ヘトヘトな状態でやっと家へと辿り着き、家の中に入ったとたん力尽きる。
だというのに着信が鳴る。
仕事の呼び出しか?せっかく帰ってきたというのに。内心そう思いながらスマホの画面をのぞく。
そこには“リアム”という文字が。
一瞬の身構えから一気に全身の力が抜ける。
だが結局コイツでも疲れるものは疲れるし、なんなら仕事より。
あれこれ考えていると無意識にため息が出てしまう。
今ある力を振り絞り電話に出ると、落ち着いているがどこか嬉しそうな声で話し出す。
『やっと出てくれた。疲れているのは分かりますが───』
と話すリアムに適当に相槌をうつ。
眠い、寝たい、腹が減った、シャワーも浴びたい…そんなことばかりを考えていて内容は一つも頭には入っていなかった。
『──というわけですが…聞いてます?』
「あ?」という返答に少し呆れたようなそんな声が小さく入る。
『あっ、今からあなたの家に行ってもいいですか』
突然何かを思いついたかのように声のトーンが上がる。
「まあ……え?は?今から??」
ぼーっと返事をしていたせいで一瞬何を言われたか理解できなかった。少しゆっくりと心で復唱してみる事にした。
答えは家に行ってもいいか。しかも今からだと。
気づいた時には遅かった。
『ありがとうございます』とだけ言ってガチャ切りされる。
「待てって!…あいつは都合のいいことばっか言いやがって…!!」
こっちは疲れているというのに。
何を言ってももう遅い。
半分諦め、身体を床から引き剥がしリビングへと向かう。
二十分もしないうちに玄関のチャイムが鳴る。
玄関までお出迎えするのは面倒なので鍵は開いてるからとだけメッセージを送る。
ガチャと扉が音を立てながら開くのが聞こえ、次に「おじゃまします」と聞こえてくる。
「たく、こんな時間に来るなっての」
「こんなってまだ八時半を回ったばかりですよ」
着ていた薄手のコートを脱ぐとすっかり私服姿のヤツが目にはいる。
普段の仕事着からは想像など付かないであろうほどゆるい服装。
「ジャケットくらい脱いだらどうです、シワになりますよ」
「来てそうそうお説教かー?俺にはもうそんな気力ありません」
「あなたって人は」
いつものことだが、自身も座る決して小さくはないソファでわざわざびったりと隣にくっついて座ってくる。
するとしばらく手で遊ばれる。
握ってみたり揉んでみたり、重ねてみたり。
まるで五歳児が暇つぶしでするような事を突然しだす。
ギャップ…とやらだろうか。これを動画に撮って、職場の女にでも見せれば一撃ではないか。
重ねられたふたりの手を見ると男女ほど差がある。
相変わらずデカい手だこと。
手だけではない。足もだ。そして──。いや何でもない何でもないと頭に浮かんだ言葉を打ち消した。
「巨人め」
「ふふ、言うほどではないですよ?私より身長がある人たちも周りに何人か」
ぎょっとする。
リアムで195センチもあるというのにそれ以上がいるというのか…。
「そしたら俺は小人か」
「かわいらしいことを言いますね」
「うっせ」
小さく笑うと今度は、ちゅ、と先ほどまで遊ばれていた手と、デコにキスをされる。
頬に手を当てられ目が合う。
お互いの唇が軽く、長く触れる。
すると舌をねじ込まれそうになりとっさに押し退けた。
「やめてくんねそういう気分じゃない」
少し残念そうに「そうですか」と呟く。
だが少し目を逸らしたその時だった。
襟元を掴まれ視界がブレる。
直後口が塞がれまた舌を入れようとしてくる。
絶対にさせまいと抵抗をするが、抵抗もむなしく無理矢理口を開けられ深いキスへと変わり、身体は押し倒される。
相手の熱を直に感じ顔が一気に熱くなる。
抵抗する腕の力も段々と弱まっていくのがわかる。
キスが終わると首元に口付けをしだす。
行為一歩手前というところで、待てを出してから言う。
「そのー、ほら…腹すいたし後に…」
どうにかこうにかやらないためにはと精一杯考えた結果のひと言。
もちろんそんなものは聞いてもらえるわけもなく「それが後じゃダメなんですか?」の一点張り。
手が胸辺りからするりと腹の辺りまで落ちベルトに手をかける。
「悪くはしませんから」
逃がしやしない。そう、目が声が強く言う。
こうなったらもう止まらないことを自分が一番よく知っている。
何かを察したかのように言葉をつなげた。
「家に入れなきゃよかった、電話の時点で断ればよかったって?いまさら後悔ですか」
図星でぐうの音もでない。そうさ、そうだよ。
もうとっくに頭も身体も諦めていた。
「…わかったから…せめてベッド行かせて」
ソファだと身体が痛くなる。ならばせめてと、お願いをしてみる。
意外にもリアムは何も言わずに離れてくれた。そして身体がふわりと浮いたのがわかる。抱きかかえられたらしい。
成人男性そしてお世辞でも軽いとは言えない体格の男を軽々と持ち上げるものだから正気かと驚くと共に、自身の身体つきには自信があったものだから男のプライドが傷付いた気がした。
それに…今されているのはお姫様抱っこというやつだ。
俺が女なら嬉しかったろうが、あいにく俺は男だ。
寝室に着くと丁寧に降ろされる。
「お前といると調子が狂うな…」
「なぜ?」
「なぜってお前──」
言い終える前にキスをされる。
軽いものからどんどん深く深く息継ぎすらも許さない勢いでじっくりと口の中を舐め回される。
やっと離れたかと思えば服を脱がされそうになる。
「やめろ自分でやる」
そう言うとなぜか笑われた。
「大人しく寝転んでればいいものを」
理解ができないという顔をしていると外しかけのワイシャツのボタンを一つずつ外される。
それまた理解ができなかった。
「自分で脱ぐなんてのりのりじゃないですか」
思わず「えっ」と声が出る。
「な、いやっそういうわけじゃ…そのだから…プライド…的な?まじで違うから」
まるでガキの言い訳のように次々と言葉が出てくる。
「したくないのは本当だし…なんならこのまま寝たいわ!」
実際今日は性行為などもってのほか気分ではない。
けどもコイツは違う。
後ろに倒されベッドに押さえつけられる。
「じゃあそんなこと言えなくなるほど気持ちよくしてあげますよ」
のどがヒュッと鳴った気がした。
これは本気だ。今晩で死ぬかもしれない。
そう本能が理解したのだ。
ーーーーーーーーー
あれから何分…いや何時間だろうか。そんな事今は考えたくもないが、あぁそうだと腹が鳴る。
寝てしまえばいいがシャワーは強制的に浴びなくてはならなくなったし、それなら夕飯も一緒にとってしまおう。
眠い目を擦りながらゆっくりと上体を起こすと背中と腰と関節とが痛くて仕方がない。
手加減しろよ、と愚痴を垂れる。けど悔しいことにしっかりと宣言通り良くされてしまった事も事実である。
スマホを手に取り時間を見てみると意外にもまだ11時前であることが分かった。
「そういえばリアムのやつどこだ…」
行為を終えてからしばらく頭が空っぽだったのでいつの間にかいなくなっていたリアムに気づかなかった。
あちこち痛いし疲れてる身体を頑張って起こして立ち上がる。
「いっっってぇぇ…あーもう本当…体硬いって何度言ったら!」
そう文句をぶつぶつ言いながら寝室を出てリビングの方へとおぼつかない足取りで歩いてゆく。
リビングにつくとそこにはソファに腰を掛けてテレビを流しているリアムが目にはいる。
「ひっで。散々俺で遊んどいて放置どころかテレビ見てくつろいでやがる」
こちらを見やると軽く笑ってから自分の座るソファの隣をぽんぽんと叩いて合図する。座れという意味だと理解する。
何笑ってんだと思いながらとぼとぼ歩いて大人しく隣に座る。
腹減ったんですけど。あー風呂めんどくさい。寝たかったのに。身体痛ぇ。とわざとらしく大げさなリアクションを取りながら訴えかけてみた。
流石に悪いと思ったのかすぐさま謝られる。
「そんなに怒らないでくださいよ
それにあまり喋るといじめたくなっちゃいます」
一瞬なんのことか分からなかったが、教えられ気付く。自分が想像するよりも声が枯れていたらしい。
ハスキーボイスでかわいい、今度はその声で聴きたいなど色々言ってくるものだから、ふざけんなとだけ言いめんどくさいとため息をつきながら風呂場へと向かう。
シャワーの熱が、先ほどまで密着していた相手を思い出させそれだけで自分の体温も上がり、のぼせそうになる。
ああ最悪。本当に最悪。最悪なのに一度味を知ると求めてしまう。そこらの薬物なんかよりよっぽど酷い。
出たらいっぺん殴ってやる。殴ったあとは何をしてやろう。夕飯でも作らせようか。
そんな事を考えているうちすっかりのぼせきっていたが、無視をした。