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参話 最終選別
あの後、切り刻まれた蘭の家族を埋葬し、家の中を掃除することにした。家の中はどこを見ても血がついていて、血の匂いが鼻腔を刺した。両親と妹の顔がフラッシュバックする。涙が止まらない。入真も先程から涙を流しながら血で汚れた布団を片付けていた。なんでこんなことに…あの憎らしい鬼は、鬼狩り様が斬ってくれたそうだ。鬼狩り様も片付けを手伝ってくださった。
鬼は血鬼術という術を使うらしい。人を食って強くなり、人の形をしているものもあれば怪物のようなものもいるらしい。手足や傷が再生したりして、大昔から恐れられてきた。鬼を殺す方法は二つ。一つは鬼狩り___鬼殺隊が持っている「日輪刀」という刀で首を斬ること。鬼狩り様は「呼吸」という技を使って鬼を斬るそうだ。二つ目は陽の光。鬼の長、鬼舞辻無惨という鬼を殺せば、全ての鬼は消えると言う。
「あの、俺たちみたいな孤児でも、鬼殺隊にはなれるんですか…?」
さっきまで無言で泣いていた入真が、掠れた声で言った。入真があんな口調で喋るのは珍しい。
鬼狩り様は目を細めて言った。
「なれるさ。鬼殺隊の大半君たちみたいに家族や大切な人を殺されて鬼殺隊になった人が多いんだ。でも、最終選別っていう試験を受けて、生き残れるのはそのうち一握りなんだけどね。」
入真も蘭も、それを黙って聞いていた。
「お、俺たちも、鬼殺隊に入りたいです。入真も___」
「なります。」
入真が食い気味に言った。鬼狩り様は驚いたような顔をして、にっこりと笑った。
「じゃあ、育手を紹介してあげる。」
「俺は虫狩篤。蟲の呼吸を使う育手だ。今日から入真、お前を一人前の鬼殺隊に仕上げる。甘やかすつもりはないから覚悟しておけ。」
入真は蘭とは別の育手に預けられた。もしかしたらもう一生会えないかもしれない。でも、それでも。
俺は絶対に鬼殺隊になってみせる。蘭と再会してみせる。
それからの日々は地獄だった。蝶のように軽やかに舞う方法。飛蝗みたいに大きく跳ねて、着地する方法。蟷螂みたく刀を使う方法。蟲の呼吸は力を使う呼吸ではなく、身体能力が重要視される。蝶の舞戯は蝶のように舞って鬼の心臓を突き刺す。入真はこの型が一番苦手だった。なんどもなんども丸太に向かって刀を突き刺す。
入真は鍛錬を初めて二年ほどで、新たな型を自ら編み出した。「蟋蟀の舞 鈴唄」。虫狩はそれを開発したことに感心してくれた。
↑下手やけど許してや
「入真。お前を俺は一人前として認める。」
嬉しかった。これで俺も一人前に___蘭にも再会できるかもしれない。
________待ってろよ。蘭。