テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
数年前
昼間なのに暗い小屋に手を引かれた。
警官も人もいないからと油断していた。
「あぁ…ルドくん」
男だから大丈夫だと思ってた。
「可愛いねぇ、ルドくん」
なのに…
外気に晒された状態の肌を舐めまわし、弄る手。その手は徐々に下へ下へと下降していく。
息は徐々に荒々しくなって肌に伝う手の熱も嫌悪感が走るほどに生暖かい。
「ねぇ?ルドくん」
「おじさんと良いことしようか」
ね。と口元だけの下卑た笑みを向けた顔が近づいてくる。
喉奥が小さくヒュッと鳴いた。
固く閉じた口に触れるカサついた皮膚、目の前のソイツの顔を見たくなくて目を力強く閉じた。
「可愛いね、おじさんのことを受け入れてくれてるんだね」
そんなわけがないだろうと言おうにも、口は塞がれている。止めていた息が苦しくなり息を吸おうと少し開けた唇に捩じ込まれたベロは息苦しさを加速させるだけで、快感なんてものは一つも無かった。
苦しい、苦しいーーー。
酸欠なのかおれは、意識が遠くへと飛ばされた。
霞んだ天井が見える、なのにその視点は微妙に揺れている。
ズッ、と何かが擦れる音が下から聞こえる。腹には異物があり、不快感によって朦朧としてた意識が戻される。
「あっ、ルドくんおはよぉ」
痛い、なんでこんなに痛い。
本来なら聖行為に使われるはずのない場所が男の肉棒によって広げられて擦られる。
こんなのおかしい…
「な、にしてんだよ」
こっちの問いなんて聞こえてないかのように腰を振り続ける男。ふざけんなよ。聞けよ。なんで…やめろよ。
「や…ろ」
「…や、めろよ…」
一音話すごとに目尻には涙が溜まっていった。怖い。ゴミ捨て場に忍び込んで盗むよりも。殺人鬼の子だと後ろ指刺されるよりも。
溢れた涙が頬を伝って流れ落ちた。床に小さな水溜りを作っていくルドの涙。
「あー、ルドくん泣いちゃった…」
「ごめんね〜まだこういうことしたことないもんね。」
「じゃあ、今日で非処女だねぇ〜」
落ち続ける涙を舐めながら肉棒を大きくする。
「もう、出すね」
腹に熱い物が吐き出されて、挿されていた物を引き抜いて満足そうに笑う。
「おじさんの性液がルドくんの中にあるなんて嬉しいな」
吐き出された、おれの今の体内にあるこれは精液なのか…
気持ち悪い…
「またおいでね、ル〜ド君♡」
重い体を引きずってレグドの待つ家へと向かった。
これが1番最初のこと
掃除屋アクタの社内、夜遅くで非番の人間は寝ていて起きているのは夜勤と警備の人間のみ。
そんな中廊下を歩く1人の人影。
新人として入ってきたルドは夜風にでも当たろうかとウロウロとする。
(あぁ、なんだろうこの違和感)
額に浮かぶ汗を拭う、熱い…っていうか。
ベランダに出れば涼しい風が体表を冷やすけれど芯は熱がおさまらない。
よくわからない不快感が体を纏う。何処へ行き着くでもなく何処へ行くわけでもなくただ歩く。
(……良いや、戻ろ)
踵を返し寝れなかろうとベットで横になろうと考え遠い部屋を目指す。
「はぁ…」
口から溢れる吐息は熱を帯びている。熱でもあるのだろうか、風邪でも引いているのだろうか。真実はわからないが体が熱いことに変わりはない。
この角を曲がれば自室はすぐそこ、地面をぼーっと見ながら歩けば誰かに当たる。
「ご、ごめんな…なんだザンカか」
「なんだ、ってなんじゃ。失礼な奴じゃのぉ」
「何しに来たんだよ」
ザンカの部屋は教育係という事もあってオレの部屋のすぐ近くにあるはず、何にこんな時間に何をしているのだろうか。
「隣のやつがガタガタ騒がしかったのに急に静かになって、心配になったけぇ見にいっちゃったらドアが開いとるしお前がいねぇから探しに来ちゃってたわ。」
「…わ、悪かった」
遅い時間という事もあり起こすのは忍びないし起こしてしまった事自体は謝らなきゃいけない。
「なんじゃ、風邪でも引いとるんか?お前が素直に感謝するなんて珍しいのぉ」
イヤミを言いながらマジマジと顔を見つめてくるザンカ、一瞬引いたはずの熱が再び蘇るような感覚に陥る。
「大丈夫か?」
「ルドくん」
『ルドくん』
思い出した。ザンカの声と重なった。
この熱はオレに纏って絡んで取れない鎖と同じ物だ。名前も知らないアイツに何度も何度もオレは犯された。
今なら分かるけれど、オレは体を打っていたんだ。
一度も楽しくもないし、気持ち良くもないのに、気持ち良いと嘘ついて鳴いた。
なんでなんで忘れていたんだろう。
訝しげに眉を顰めたザンカが面倒臭そうに差し伸べてきた手に触れる。
ずっと相手したから、触れ方も誘い方も知ってる。
「なぁ、ザンカ…」
「良いこと、しねぇか?」
「良いこと、しねぇか?」
触れられた手先は本当に熱があって、指をなぞるように緩やかにルドの指が手の甲を撫でる。
熱を含んでいる吐息に混じった声で名前を呼ばれる。
「なぁ…ザンカダメ、か?」
熱で染まった淡い赤の頬と同じ色の目でじっと見つめる。けれど所々その白髪で隠れている。
不意に喉がなった。
「ザンカがダメなら、オレ…1人で我慢するけど…さ」
「ザンカの好きにして良いから、さ」
首の触れて通信機をなぞる。
いつ、こいつはこんなことを知った。
天界人って全員こんなんなんか!?
「…後悔しても知らんけぇな。俺は止めた」
首を撫でるグローブ越しの小さい手を握る。