テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
煙
108
284
はるねこ
733
鈴之助はクラスの人気者だった。
数学は苦手でも、国語と体育は得意分野だった。
4人の中でも一番身長の高かった彼はみんなの憧れだった。
でもそんな彼が最も怯えるものは日常生活に欠かせないものだった。
「今思ったんだけどよ。」クラスメイトが鈴之助に聞いた。
「隔絶っていっつも同じ飯食ってんよな。あきねぇの?」
「うーん、飽きるか飽きないかっていう話じゃなくて、お母さん忙しいし、、」鈴之助は苦笑いする。
「忙しいんだったらコンビニ弁当にしないのか?体にはわりーけどお袋が忙しくなくなった時に作って貰えば、、」でも、そんな声を鈴之助は真剣な声で途切れさせた。
「僕はそんな簡単に何でも食べれるわけじゃないんだ。」、と。
「え、お前あれだったか?あの、アレルギーってやつ。」クラスメイトは言った。
「そうだよ。」
「わりーけどよ、そういうの初めてみた気がするわ。」
鈴之助は目を細めて前を向いた。
なんて言ったかは覚えてない。
(わかってるよ。僕はみんなとは違うんだ。好きに物を食べれない。物に触れられない。行けない場所だってある。何かが人と違うって、何かいけないことなのかな?)
「知らなかったらいいんだけどさ、何アレルギーなの?猫の。」
そう言われてハッとした。
時は現在。
修学旅行の夕飯の時に僕の前に座っていたのは咲苗だった。
僕が転校してきた日から、彼女は目立った、理解不能な行動しかとらない。
僕を恋愛対象としてみているからその行動を取る、というのではなさそうな、変なこと。
「どういうこと?」隣にいたまつりは聞き返した。
「お父さんがひどい動物アレルギーだからさ、調べてみたのよ。猫だっけ。動物アレルギーの場合、唾液や細胞、猫に不可欠な細菌までがアレルギー対象だったりするの。まあやっぱり大元はそれに含まれる成分なのだけれど。」
(驚いた。僕が知りえないことも知ってるのって、やっぱり)
「変でしょ?」咲苗は僕の思考を読んだようにつぶやいた。
「いつもそう。人は勝手に作り上げた常識の型に私を嵌め込もうとするの。人はお互いが完璧な模倣体じゃないんだから。この世に正しい人の型なんてないって、前の学校の人たちにも言えば良かったんじゃないの。」咲苗はそう独り言のようにつぶやいた。
僕はしばらく考えて微笑んだ。
「でも、その中でも咲苗はずば抜けた変形だと思うよ。」
そしてその数日前。
「追加料金50万、、修学旅行ってこんなにするの?」咲苗は机に座ってHRで出された紙を覗き込んでいた。
修学旅行に海外を選択する洒落た学校には、追加料金が必須であるという。
「どれだけ俺らが金持ってると思ってるんだよ、永瀬みたいな令嬢じゃねぇ限りそんな簡単に払える額じゃねぇだろ。」真央は愚痴を吐いた。
「ただでさえ学費でも150万を超えるからね。」咲苗は苦笑った。
超エリート学校である。
「その様子だと、真央は行かないの?」まつりは目尻を寄せて聞いた。
「行かねぇ選択肢はあんのか?」真央は妙なキラキラで応えた。
「ある。」咲苗は即答。
「そこはせめて乗せろよ!」真央は叫んだ。
「やっぱあたしらは全員行く?」まつりは笑った。
「行く。」と、咲苗。
「行くよ〜」と、鈴之助。
「行く以外ない」と、真央。
当日。飛行機の中にて。
「約60名の生徒から50万をかき集めて約300万の予算があるというのに航空便の中でも安い深夜3時の便に乗るのっておかしいと思わない?」咲苗はつぶやいた。
「同感だけどそこまでボロカスには言わない、、」鈴之助は苦笑いした。
深夜3時だから眠いのは当然であり、咲苗の前の席である真央はイヤホンをつけて寝ていた。
一方、他の3人とは少し離れた席に座っていたまつりも寝初めていた。
「まつりちゃん、もう直ぐご飯の時間だから起きて!」
「ご飯、、?炊き込みご飯、、寿々〜。。」と寝言を言い始めておきやしない。
頭に来たのか、まつりの隣の席の広瀬寿々はガツンとまつりのデコを打って目を醒させた。
「痛った!何?!」まつりは額をさすりながら寿々に聞いた。
「しーらない。起きなかったまつりちゃんが悪い。」寿々はそっぽを向いた。
「ねえ、私なんかしたぁ?」まつりは嘆く。
コメント
1件
第6話、読みました!鈴之助のアレルギーと「みんなと違う」という感覚、そこに咲苗が「正しい人の型なんてない」と応える流れがすごく響きました。彼女の「変形」という言葉に、むしろ自分らしさの肯定を感じてほっとしたんです。修学旅行の準備で金銭感覚のギャップがちょこっと見えたり、寝ぼけたまつりちゃんへの寿々のツッコミで空気が軽くなったり、日常と個性のバランスが絶妙でした。次も楽しみです!