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俺たちの出会いは小学3年生の頃。同じクラスになりよく隣同士の席、もしくは同じ班になりまくっていた。少なくて月1、多くて月3で席替えをしていたのだが、3ヶ月に1、2回同じ班になっていたのだ。
初めは虫が好きな子としか認識していなかった。よく学校にイモムシを持ってきて蝶になったら外に帰していた。そんな彼女は人見知りが激しく、そこまで話したことがない。
「だ、大丈夫…?なんで悪いことしちゃったの?泣いてたらおめめ溶けるんだよ?」
小学3年秋だったか…とても寒く、休み時間になるとみんながストーブの前に立っていた頃のこと。外でサッカーをしていて低学年にボールが当たり怪我をさせ泣かせたくせに、そのままサッカーを続けたことで怒られ授業中に伏せて泣いていた俺に彼女は勇気を振り絞って話しかけてくれた。
「あ、でも泣いていたいなら泣いてて大丈夫だよ。ノート後で写させてあげるね。」
彼女は優しかった。だからこそ、今でも後悔してる。彼女に『ありがとう』この一言がこの時言えなかったから。
「なぁ篤志!あいつの怒った姿見せてやるよ!僕が怒らせたら蹴ってくるんだぜ!篤志が好きなら蹴ってこないかもな!」
小学6年冬。呆れた友達からそう告げられた。彼女とはたったの2年だけ同じクラスだった。それでもあの時優しくしてくれた、何かと声を掛けてくれた、よく隣になるあの子が好きになっていた。
2人で彼女のクラスへ行った。だが結果的には忙しいから呼ぶなと怒られ職員室へ急ぐ姿があっただけだった。
ドン!
突然の出来事だった。違うクラスになって2年目。小学校卒業まじかの頃。体育館で遊んでいた時、鬼ごっこをしていた彼女の頭にバスケで遊んでいた俺たちのボールが当たった。一緒に遊んでいた奴らは彼女を嘲笑い、彼女は顔を真っ赤にしながら頭にを手で抑え
「大丈夫!大丈夫!私が、周りを見てなかった私が悪いし!平気だよ!」
と笑顔で答えていた。続けてその時仔白とともに遊んでいた子達は心配しながら話してた。
「そんなことないでしょ!先生に言お!」
「平気だって先生に言わないで大丈夫だかね。」
やはり俺の周りの奴らは嘲笑っていた。「あれぐらい避けきれるだろ」とか「俺ら悪くねぇのに先生に言うなんてインチキだ!」「それぐらいで怒ってたら将来孤独だな」なんて言ってそのままゲームを再開した。
謝りたくてもこの空気感で謝ることが出来なかった。俺は負けた。
その後、俺たちは彼女の担任にこっぴどく怒られた。当たったところが頭ではなくおでこだったからだ。当然勢いの着いたボールだったからアザになっていたそうだ。彼女の友達は正しい判断だったのだ。これが傷が残るものだったらと思うと今でも震えが止まらない。
俺は一体あの時どうすれば良かったのだろうか。もしクラスが一緒なら。あの時仲間に入れてもらって鬼ごっこをしていたなら。何日かはまともに寝れなかった。
中学生入学式。
まだ雪が降り積もる中俺たちはクラス分け表を眺めていた。
彼女と同じクラスになれば結果的にあの事を謝れると思った。なぜ謝ろうとしたかと言うと、あの事件以降ボール、特にバスケットボールが怖くなり彼女の好きな運動がやりにくくなっていた。そして運動しないことで風邪を引くことが多くなった。元々体が弱かった彼女は運動することで免疫力をあげていたのだと実感した。だから謝りたかった。謝って、あわよくば…なんて虫唾が走る。
まぁそんな上手くいくはずなくて中学ではクラスは別々。会える時は体育と学年で集まる時だけ。彼女と話す機会がなかった。だから少しでも彼女を見れるように学級副委員長に立候補した。それで、見ているだけで十分だと思ってしまった。来年はクラス替えだしそのときで良いと想っていた。だが、いつしか謝ることを忘れていた。
「なぁ篤志。さっき仔白が帰る準備してたの見たぜ。今行けば実質一緒に帰ってるみたいになるんじゃね?」
「そうか?不審者って思われない?」
「大丈夫だろ!同級生だぜ?」
そんなこんなしてるうちに中学2年になっていた。彼女と話すことはなく、結局、義務教育最後のクラス替えは一緒のクラスになれず諦めていた。
彼女の後ろを友達と下校する。彼女はクラスの中で唯一の前髪のない女の子だ。その代わり触覚?と言われるものを分け目から少しだけタレ下げて、腰よりも少し長めの真っ黒い後ろ髪を高めの1つ結びでまとめていた。
「こっちゃん髪伸びたねぇ〜。邪魔じゃないの?私この長さでも邪魔だよ?」
そう話すのは彼女の友達、星 雪羽(ホシ ユキハ)。胸元までありそうな髪を下の方に結び前髪を目の近くまで伸ばしている。
「あぁ〜。昔さ髪をショートカットにいてもらったことあってさ、その時隣町の高校の野球部に一緒に走ろとか、アニメのキャラの名前呼ばれて。そのキャラさ太ってるんだよね。それで太ってるって言われてる気がして。それ以来ショートカットとワンピース。特に黄色い服が苦手になっちゃって…」
「は?」
「ちょ、篤志!聞こえちゃうだろ!!そんなガチトーンでイラつくなって!」
ついイラついてしまった。彼女たちは気づいてないみたいだった。それにしても何年も前の先輩か…オット、もう良そう。これ以上思い浮かべてると殺りかねん。
「じゃ、また明日ね〜」
「うん!また明日ぁ〜!」
彼女たちが別れた。どうやらもう雪羽の家の前だったらしい。
「じゃぁな篤志」
「おう!また。ゲームするか?」
「やるに決まってんだろ?やろうぜ!」
あぁ言ってなかったな。今別れたのは俺の友達、星 凪李雪(ホシ ナリユキ)。雪羽の双子の兄だ。
凪李雪はゲームが好きで小学生の頃ネットで知り合った。出会いはネットでだったが、ひょんな事から近くに、しかも同じ学校だと知った。それ以降、ゲームの事も家庭事情も、勿論恋愛も相談に乗ってもらっている。お返しに勉強を教え上位に入れたことがある。それくらい仲が良い。
2人と別れたあと、ほとんど仔白と2人で帰っていた。流石に離れているからと言っても気まずい。2人っきりだから話しかけたいが、もう何年も2人っきりで話していない。最近の好きな物も分からない。同じ習い事の時は仲良く家まで帰っていたのだが…。まぁ結局いつも俺の家の近くまでだった。
彼女の家は俺の家より離れており、学区ギリギリの所に住んでいた。そして厄介なのが国道向かいに家がありどこに行くとしても信号を渡らないと行けないことだ。だから彼女の家まで行ったことがない。誰かしらが遊ぶ時は彼女の家では遊べないのだという。それは遠すぎるからなのだが、噂では彼女の両親は神なのだという。
彼女は神なし子だ。勿論これからというケースもあるかもだが、彼女には能力が、いや第六感が鋭いらしい。
ピコーン!
「明日小テストかも…」
「え?小テスト?なんのさぁ。」
「急にやる社会のテスト。なんか先生が今問題作ってる気がする…」
「ガチか!勉強しなくちゃ!」
「この範囲苦手なんだよねぇ〜…誰かしら教えて!!」
「はいはーい!ここ俺得意だからみんなの先生やるよ!とりあえず先生が問題に出しそうなところ教えるな!」
なんてことがよくあった。次の日本当にテストが出てきたり、先生が休んで結局やらなかったりとあるらしいが基本はやっていた。勘が鋭い彼女は神の御加護がないだろうと言われている。本人は御加護について気にしていないようだけど…。
結局、今日は遠回りして帰って行った。彼女のスカートが風でなびき何がとは言わないでおくが一瞬見えた気がして気まずくなったからだ。ハーフパンツだった。それでも見たことには変わりなく、何となく逃げた。また謝れなかった…。