「…私、指治ったよ」
彼女は僕の手を握り涙を押しつぶすような笑顔を浮かべていた。
指?なんでそんな事をいきなり……
『私、指が治ったら絶対依織くんと手繋ぐ!それが夢!』
入院中、れいかがよく言っていた言葉。
その言葉を思い出した瞬間、僕の目には自然と涙が流れていた。
「れい…か…?」
「やっと気づいた?」
呆然とする僕を置いて、彼女は何かをゴソゴソと探しているようだった。
「はい、私と依織くんが離れないおまじない」
そう言いながら僕の手にかけたのは、僕が退院前日に渡した最後のミサンガだった。
「で、でもれいかと矢城さんは名前が…」
声を絞り出して出た1つの疑問。
彼女の顔は変わらず笑顔だったが、何処か悲しそうだった。
「私の名前、星叶だから。」
「え? 」
「私、村の伝統の『セイカ』と同じで、いつも周りの大人に『気味が悪い』『犠牲なんて可哀想』って言われてきたから、依織くんにはそう思って欲しくなくて…嘘、ついた」
あぁ、だからか。
初めて会った日、『せいか』という名前に既視感を覚えたのは。
でもなんでセイカを連想させるような名前に『気持ち悪い』『可哀想』なんて言葉が出てくるんだ?
寧ろ、幸運の子っぽくて素敵じゃないか。
「セイカには闇があると言われていて、1人の子供の生命力や運を犠牲に他の人の願いを叶える…なんて言われているんだよ」
そう…だったんだ。
「私、こんな名前で事故とかに会ってるからこの子の近くにいたら不幸になる、なんて噂が流れて『気持ち悪い』『犠牲の子』なんて…言われて…」
そう語る彼女の瞳にはまた、涙が込み上げていた。
「気持ち悪くなんてない!不運でも犠牲の子なんかでもない!」
そんな彼女の顔を見た僕は咄嗟にそう言ってしまった。
「矢城さんは…星叶は、こんな僕にも優しく接してくれて、素直で、何より!誰かの事を誰よりも考えているどうしようもないくらいお人好しで優しいんだ 」
「はは、そこまで嬉しい事を言われるなんて…初めてだよ」
僕が見えない所でずっと苦しみに耐えてきた矢城さんにはもう自分を責めてほしくないし、傷ついてほしくない。
「本当、漫画みたいな青春してるね。私たち」
先程とは違い、心から安心したような笑顔を彼女は僕に向けていた。
コメント
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え、好きです() せいかとか良い名前すぎてなりたかった((殺 周りの人酷いな…顔が見てみたいものd…( 投稿ありがとうございます‼️