テラーノベル
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自由になった彼女の指、明かしてくれた大切な秘密。
時間の流れと共に、実感した。
この人は僕の大切で、大切にしなければいけない存在なのだと。
「また明日!」
以前よりも大きく、心から晴れた顔をして手を振っている彼女に僕は彼女とは対照的にそっと小さく手を振り返した。
次の日、朝にテレビを見ていると速報が流れた。それには、
『速報です。女子高校生1名と20代の男性4人が鉄骨の下敷きとなり……』
嫌な予感がした。
無我夢中で走っていたからか、当たりが全く見えていなかった。
あの時の顔は周りから見れば酷かったかもしれない。
テレビでやっていた場所、家の近くにある、まだ建設途中の建物へ向かった。
サイレンの音、警察の話す声、カメラの音。
全部無視して走った。
どこかで「止まってください」なんて聞こえた気がするけれど、今はそんな状況じゃない。
だってそこにいたのは、正真正銘僕の初恋の人だったから。
「あの人は…誰ですか」
絞り出したような声で近くの警察に聞いた。
「…矢城星叶さんのご家族ですか?」
嗚呼、やっぱりそうか。
驚きと悲しみと少しの怒りで先程までおかしくなりそうだったのに、何故かその名前を聞いた途端、嘘のように冷静になった。
ただ、周りの目も音も何も気にしていないということだけ、変わっていなかった。
「矢城さ…あ、星叶って呼ばないと怒られちゃうかもな……」
彼女の安否も確認せず、いつものように第2音楽室で独り言をぼやいていた。
“確認をしなかった”というよりも”確認したくなかった”というのが正しいのだろう。
どうしても頭の中に最悪なもしもを浮かべてしまうのだ。
───ピコン
「あれ、僕スマホ持ってきちゃったのか…てか誰だ?」
『現在、矢城さんのスマートフォンをお借りしています。家族の連絡先が無かったので”恋人”という名前で登録されていた貴方へ連絡しています 』
恋人…え?
というかロックはどうやって開けたんだ?
『矢城さんの状態について少し話したいことがありますので、今日中に仙樂病院へお越しください』
矢城星叶と書いてあるトーク画面から星叶の医者だと思われる人物から連絡が届いた。
怪しい気もするが、仙樂病院はこんな田舎 では珍しい大きな病院だし、大丈夫だろう。
魂が抜け落ちたかのようにフラフラと歩いた。
病院の受付まで来ると、顔色の悪い白衣をまとった人物が近づいてきた。
「貴方が矢城さんの恋人の方ということであってますでしょうか?」
恋人ではないがめんどくさくなりそうなので黙って頷いた。
「こちらへどうぞ」
通されたのは”会議室”と書かれた少し小さな部屋だった。
「…誠に申し上げにくいのですが、矢城星叶さんは亡くなりました 」
少しためらいながら発した言葉は、僕が思っていた以上に心を抉られる言葉だった。
「星叶が…亡くなった?」
医者は気まずそうな顔で少し俯いている。
でも正直僕は信じられなかった。
昨日元気に手を振っていた彼女が昨日の今日で亡くなるなんてひんじられるわけがない。
信じたくない。
「そして貴方宛のものだと思われる手紙が…」
コメント
2件
別垢から失礼します‼️ ぇしんだ!!?( せいかちゃーん!!!! 「恋人」…?何があったんだ… 投稿ありがとうございます!