テラーノベル
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盗賊をするにはやっぱりたくさんの時間を費やした。もちろん協力者だって、お金だって。トラゾーは定期的に俺に連絡をしてどういう設定にしたいか、どういう建物がいいか、どういう衣装がいいか…たくさん聞いてきた。そのおかげかトラゾーはスムーズに作業に取り組めたらしい。
もちろん、俺たちも各自で作業を進めていた。クロノアさんは企画の打ち合わせ。しにがみくんはコマンド設定。俺は編集やカメラ。スタッフたちは固定カメラやアドバイス……。もう本当に”お仕事してる”って感じで、真面目さを感じた。それでも、みんなで真面目じゃない企画をこれからしようとしているのは笑えたけど。
ブーッ。
ふと鳴り響く着信音。それは個人的な連絡ではなく、グループでの着信だった。俺はそれに参加すると、徐々にみんなも参加した。
そして、話を切り出したのはこの電話をかけた張本人───トラゾーだった。
『ついに………マップ、完成しました〜!!』
イヤホン越しに聞こえるトラゾーの声に、みんなが感嘆の声を上げた。その瞬間にみんなはトラゾーにマイクラサーバーに入るように勧められ、すぐさまその世界へと入り込んだ。
なんてことのないゲームの世界。四角くて、普段じゃありえない面白いゲーム。その中に大きく佇んでいたのは、俺たちの努力の塊である『盗賊シリーズ』で使われる建物だった。
凄まじいほどの威圧感。おしゃれでどこか怪しい雰囲気を醸し出す装飾品。でもなぜか足が動かさずにはいられないような、そんなものが目の前にはある。
「すげー……」
俺がそう呟くと、みんなが小さく『うん』と言った。みんなも俺と同じで、驚きすぎて 口が空いては塞がらない状態だったようだ。
『僕たち、本当に不真面目ですね。』
ふとしにがみがつぶやいた言葉。それに俺は返事をすることはできなかった。それよりも先に、ドキドキした。
そっか。俺ってずっと真面目だと思ってたけど…生まれた時から、真面目な時なんてなかったんだ。
ただ俺は、周りに合わせてた自分が偉いと思ってた自己中という不真面目で、黙ってればなんとかなるとか思ってみんなを悲しませる悪さをしている不真面目で、たくさんの迷惑をかけたガキという不真面目だったんだ。
『真面目な時なんて、一刻もないよ。』
ふと、クロノアさんがそう口にした。
『───真面目だなんて、思ったこともない。』
クロノアさんの言葉に、俺は心が激震した。あぁ、俺やっと解放されたんだ。
『そうですね!』
『それもそうでした!!』
ごめんね。みんな。
「よしっ!じゃあいっちょみんなの光になってきますか!!」
俺は片目がないという真実を明かすまで嘘をつく悪い子でいます。
俺はみんなに迷惑をかけながら動画を投稿する悪い子でいます。
俺はみんなと笑いながらそこに生きてる悪い子でいます。
俺は、この世に偉い子なんていないと思いながら生きる悪い子でいます。
だから待たないで。俺はもう悪い子だから。お前ももう悪い子だから。全人類悪い子だから。地球も、宇宙も悪い子だから。
悪い子達は、俺を道標として歩け。俺を光だと思ってこっちに来い。
何回でも命令してやるからさ。
「ついてこい!!」
『『『おー!!!』』』
悪い子は、悪い子について来い!
──────また次、会おうぜ!!
コメント
2件
うわぁ、すごい良い!!最初から最後までのストーリーに感動しました!!素晴らしい話をありがとうございます!👏🏻·͜·