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第6話:素直になれないふたり

翌日。

朝の教室に入ると、すでに佐倉が自分の席に座っていた。

(昨日、ちょっとからかいすぎたかな……。)

胡々は彼の横顔をちらっと見たが、佐倉は何事もなかったかのように窓の外を眺めている。

(気まずくなったり……してないよね?)

少し不安になったけど、話しかけるタイミングがつかめず、胡々はそのまま自分の席に着いた。

すると、授業が始まる直前――

「おい。」

低めの声が聞こえ、胡々が顔を上げると、佐倉が小さな紙パックのレモンティーを机の上に置いた。

「え……?」

「昨日のやつ。冷たいののほうがいいだろ。」

佐倉は視線を合わせず、ぶっきらぼうにそう言った。

胡々の胸がキュンと跳ねる。

(なんだろう、この感じ……。)

「ありがとう。」

素直に礼を言うと、佐倉は「別に」とそっけなく返し、そのまま前を向いた。

だけど、その耳がほんのり赤いことに、胡々は気づいてしまった。

* * *

放課後。

部活のない日だったので、胡々は早めに帰ることにした。

昇降口で靴を履き替えていると、ちょうど佐倉もやってきた。

「あ、佐倉くんも帰るの?」

「ん。お前も?」

「うん。一緒に帰る?」

思わず口に出した瞬間、佐倉の動きが止まる。

(あ……今、私、誘っちゃった?)

「……まぁ、別にいいけど。」

彼はそう言って、先に歩き出した。

胡々はその背中を追いかけながら、ちょっと嬉しくなる。

学校を出て並んで歩く二人。

春の夕暮れ、少しひんやりした風が頬をかすめる。

「ねぇ、佐倉くんって、いつも放課後なにしてるの?」

「ん? まぁ、適当にぶらついてるか、コンビニ寄るくらい。」

「へぇー、意外と普通なんだね。」

「何が意外だよ。」

「なんか、もっと遊んでそうなイメージ。」

「俺、そんなチャラそうか?」

「うーん……ちょっと?」

「おい。」

佐倉が不満そうに胡々を見る。その表情がなんだかおかしくて、胡々はつい笑ってしまった。

「冗談だよ。でもさ、たまにはこうやって一緒に帰るのも悪くないよね。」

そう言うと、佐倉は一瞬目をそらし、ぽつりとつぶやいた。

「……まあな。」

短いけど、それは彼なりの「同意」だったのかもしれない。

(佐倉くんと過ごす時間、なんか心地いいな。)

そんなことを思いながら、胡々は彼の横顔をこっそり眺めた。

もう少しだけ、この時間が続けばいいのに――。

君はリボンが似合う

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