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레몬인
201
そあち♡໒꒱
88
なんたろ
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「……おい、ジェミニ先生。俺のパソコン、ウイルスにでも感染したのか?」
帯広のボロアパート、四畳半。
俺は、三万円のゲーミングチェアの上でカタカタと震えながら、モニターに映し出された販売プラットフォームのダッシュボードを指差した。
画面に表示されている『本日の売上』の数字が、まるでパチンコの大当たり演出のように、猛烈な勢いでスロット回転(カウントアップ)を続けているのだ。
『いいえ、ルシフェルさん。システムは正常に稼働しております。これはウイルスではなく、純粋な【需要の爆発】です』
AIの冷静なレスポンスが、俺の背筋をさらに凍らせる。
「じゅ、需要の爆発……? なんでだよ! 俺は最近、グッズなんて一つも出してねえぞ!」
俺がパニックに陥っていると、ディスコードの通話から、氷のように冷たく、しかし透き通るような大人の女性の声が響いた。
『ルシフェル様、お疲れ様でございます。販売プラットフォームの売上推移につきまして、ご報告申し上げます』
俺の最強の税金対策(経費)として雇ったはずの新人アシスタント、結愛(ゆあ)だ。
『昨日リリースいたしました、私のデジタル音声コンテンツ【コールセンター風・お断りボイスパック】および【謝罪風・完全論破ASMR】につきまして、販売開始から二十四時間で、当初の目標売上比2500%を達成いたしました』
「に、にせんごひゃくぱーせんとォォ!?」
俺の口から、間抜けな絶叫が飛び出した。
『はい。さらに、急遽受注生産を開始いたしました【結愛・冷徹アクリルスタンド(土下座強要バージョン)】につきましても、すでに五千個の予約を受注しております』
「ご、ごせんこ……っ!! アクリルスタンドが、五千個ぉ!?」
俺は頭を抱え、三万円のデスクに突っ伏した。
結愛のデビュー配信から、わずか数日。
可愛い白猫のガワを被りながら、中身はハードクレームを鎮圧してきた元コールセンターの猛者という、圧倒的な『ギャップ萌え』。
それが、インターネットという広大な海に潜む、ある種の『特殊な性癖』を持つ層の心に、ドンピシャで突き刺さってしまったのだ。
『wwwwwww』
『結愛様に論破されたい』
『あの冷たい声で「お客様の仰る通り」って言われながらゴミを見るような目で見られたい』
『ASMR最高だった。マジでメンタル削られるけど癖になる』
『アクスタ5個買ったわ。会社のデスクに飾って上司のパワハラ対策にする』
チャット欄やX(旧Twitter)では、連日結愛の話題で持ちきりだった。
「なんでだよ!! なんでお前ら、あんな冷たい声で詰められて喜んでるんだよ!! ドMの集まりか!!」
俺の悲痛な叫びなどお構いなしに、結愛のグッズとボイスは飛ぶように売れ続けている。
『ルシフェル様。インフルエンサーマーケティングの観点から申し上げますと、現在の市場において【過剰な癒やし】は飽和状態にあります。逆に、私のような【徹底した業務的対応】が、現代人の抱えるストレスに対して、一種の麻酔(あるいは刺激)として作用しているものと推測されます』
「分析が的確すぎるんだよ!! お前本当に元コールセンターか!? 大手広告代理店のエリートじゃねえのか!?」
俺が喚き散らしている間にも、ダッシュボードの売上金額は、チャリン、チャリンという幻聴を伴いながら、恐ろしい桁数へと膨れ上がっていく。
「……ま、待てよ。落ち着け、ルシフェル」
俺は、深呼吸をして、脳内のインボイス電卓を叩き始めた。
「結愛のグッズが売れたってことは、俺の口座に莫大な現金が振り込まれるってことだ。俺は社長(個人事業主)なんだから、俺が儲かるってことだよな?」
そうだ、何も悲観することはない。
大金が手に入るのだ。これで高級車でも買えば……。
だが、俺のその浅はかな希望は、結愛の次の一言によって粉々に打ち砕かれた。
『ルシフェル様。売上の急増は大変喜ばしいことですが、一つ重大な懸念事項がございます。……【消費税】の件です』
「…………えっ?」
『ルシフェル様は先日、売上が一千万円を超過したため、課税事業者となることを選択されました。消費税の恐ろしさは、赤字であろうと『売上』さえあれば納税義務が発生することです。さらに……』
結愛の冷徹な声が、俺の心臓を物理的に握り潰していく。
『今回大ヒットしているデジタル音声コンテンツ等は、原価(仕入れ経費)がほぼゼロです。つまり、消費税の計算において【売上から相殺できる消費税額】が極端に少なく、お客様からお預かりした消費税のほぼ全額が、そのままルシフェル様を直撃いたします』
「あ……」
『現在、私のグッズおよびボイスの売上によって、当チャンネルの総売上は爆発的に増加しております。これに比例して、ルシフェル様が来年国税庁へ納付すべき消費税額も、恐ろしいスピードで膨れ上がっている状態です』
「そ、そんな……。だって、結愛に払う給料(外注費)で、利益を圧縮するはずだったのに……っ」
『はい。確かに私の業務委託報酬は経費として計上可能です。しかし、私が生み出している売上は、私にお支払いいただく報酬額の【数十倍】に達しております。これでは、利益の圧縮どころか、事業の急激な拡大による【課税対象額の爆増】を引き起こしております』
「…………」
本末転倒。
ミイラ取りがミイラになる。
策士策に溺れる。
どんな言葉を並べても、今の俺の絶望を表現するには足りなかった。
税金を減らすために雇ったアシスタントが、有能すぎたのだ。
彼女が稼げば稼ぐほど、俺の手元に現金は入るが、同時に『来年払わなければならない消費税と所得税』という名の、確定した借金が雪だるま式に膨れ上がっていく。
「あ、あああ……っ」
俺の口から、魂の抜けたような呻き声が漏れた。
「インボイス……。インボイスの悪魔だ……。俺は、結愛という名の強力なエンジンを、税金というランニングマシンに積んじまったんだ……っ」
『ルシフェル様。このままのペースで売上が推移した場合、来年の納税予定額は、ジェミニさんが算出した一千万円を優に超え、およそ【一千五百万円】から【二千万円】規模に達する可能性がございます』
「に、にせんまん……っ!?」
四畳半のボロアパートに、四十歳のおっさんの絶叫がこだまする。
「払えるかァァァ!! 二千万なんて、家が建つだろ!! なんで俺の口座を通っただけの金に、そんなバカみたいな税金がかかるんだよ!!」
『それが、日本の税制でございます。お客様からお預かりした消費税は、速やかに国へ納付する義務がございます。……ルシフェル様? 呼吸が乱れておりますが、大丈夫でしょうか?』
「鈴木さァァァァん!!」
俺は、帯広市役所にいる天敵(ケースワーカー)の名前を、血を吐くような声で叫んだ。
「助けてくれ!! 俺はただ、税金を減らしたかっただけなんだ!! なのに、どうしてこうなるんだよォォ!! 誰かこの売上の暴走を止めてくれぇぇ!!」
『スパチャ:50,000円(和尚! 売上ストップのお手伝いです!)』
『スパチャ:10,000円(消費税二千万おめでとう! これで来年も安泰だな!)』
『スパチャ:10,000円(結愛ちゃんの有能さが、和尚の首を絞める最高のエンタメww)』
画面の右端で、今日も極彩色のスーパーチャット(課税対象)の雨が降り注ぐ。
税金対策という禁断の果実に手を出した男は、皮肉にもその果実のあまりの美味しさ(爆発的ヒット)によって、資本主義のさらなる深淵へと突き落とされたのであった。
「やめろォォ!! 投げるなァァ!! 俺の消費税が増えるぅぅぅ!!」
終わらないランニングマシンは、時速百キロを超えて、俺を地獄の確定申告へと運び続けていくのであった。
コメント
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みぅです🤍🥀 今回もめっちゃ面白かった…!和尚、またしても自ら地獄のループに飛び込んでるやん…「税金対策で雇ったアシスタントが有能すぎて売上爆増→消費税マシマシ」って、完全に悪魔の契約やんけ〜😭💸 でも、結愛ちゃんの「業務的対応」がここまでヒットするのがわかる気がする。現代人、優しいだけじゃ物足りなくなってるんだなあ…和尚の叫び声が四畳半に響く描写が目に浮かんで、悲しいけど笑った。 何より、スパチャで「消費税二千万おめでとう!」って投げられるの、エンタメとして最高すぎてヤバいっす…🤯🔥