普通に過ごしているだけなのに、いつも息がしづらい。呼吸ができないわけではないのに、常に、酸素が足りていない。
私はそんな日々から抜け出したい__
始まれば終わる。終われば始まる。その繰り返しで、無駄な日々を過ごしていく。今日も、いつもと変わらない朝が始まった。
ベットサイドに置いてあるスマホから、デフォルトのアラームが鳴る。友達はみんな、流行りの曲やお気に入りのアーティストの曲を設定しているらしい。デフォルト設定にしているのは私くらいだ。
「おはよう。真奈」
キッチンに立つお母さんは私に笑顔を向けた。テーブルの上には、トースト、スープ、サラダ、フルーツがおいてある。今日も完璧なお母さんの朝ごはん。
「おはよう、お母さん。いただきます 」
そして私は今日も朝ごはんを少し残す。
「行ってきます…」
「行ってらっしゃい!」
お母さんは毎日必ず『いってらっしゃい』を言う。以前、私が何も言わずに学校へ行った時には、電話でひどく怒られた。お母さん曰く「何も言わないままで、もしどちらかが急に死んじゃったら絶対に後悔が残るでしょ?だから、挨拶だけはしっかりとするの」ということらしい。
正直、とても馬鹿げていることだと思う。こんな平凡で、何一つ変わらない日常で、どこに死の危険があるというのだろう。現実はアニメの中とは違う。変化のない、つまらない毎日を送っているのが何よりの証拠だ。
学校に着くと、いつも通り教室に人はいなかった。別に早く来る理由はないけど、家にいるのもあまり好きではないし…。だったら、誰もいない教室で過ごしている方が、何倍も楽。
朝の教室は本当に静かだ。たまに外から、運動部の朝練の声が聞こえてくるだけで、ここには落ち着いた空気が流れている。クラスメイトが来るまでは、読書をしたり、小テストの勉強をしたり、気分によって違う。でも、今日は家に本を忘れてきてしまったし、珍しく小テストもない。何をしようかと考えながら、とりあえず、イヤホンをつけスマホのショート動画を眺める。
高校生にとって、スマホは暇つぶしの一つに過ぎない。中学生で初めてスマホを買ってもらった時には、声にならないくらい喜んでいたのに。今ではスマホがあることが日常になってしまった。あの頃の気持ちは、もうどこかに置いてきてしまったのだろう。
永遠と流れてくる短い動画をひたすら眺める。すると、ある一本の動画で指が止まった。
「…きれい」
自然と口が開く。
イヤホンからは、透き通るような綺麗な声が流れている。今流行りの曲のカバーで『歌ってみた』というものらしい。
そんな情報よりも、私はその歌声に心を惹かれた。何回もリピートしてしまい、登校してきていた友達にも声をかけられるまでまったく気づかなかくて「すごい集中してたね笑」と笑われてしまった。
その日の授業は全く身が入らず、頭の中にはずっとあの声が流れていた。
家に帰りると、真っ先にインターネットでその人を調べた。その人はRioという名前で顔出しをしないで活動をしていた。配信や動画投稿を行っていて、私が聞いた『歌ってみた』の他にも、Rioが作詞作曲をした歌が投稿されていた。
「Rio…!」
“光をみつけた”柄にもなく、そんなことを思った。思っていた。
To be continu…
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