だけどそうだとすると、私だけがこの部屋へ連れて来られたことが、尚更不思議にも思えてきて、
「……だったら、なんで私は最初からここに……?」
と、釈然とせずに、疑問を投げかけた。
「そうですね……、」と、彼が一瞬言いにくそうに顎に手をかける。
「……実は、初めてホテルで食事をしたあの時、酔ってしまったあなたを抱えるようにして、ラウンジから出たら……」
彼が話しながら、ふっと思い出し笑いを浮かべたようにも窺えて、何だろうと思う。
「酔った君が私の胸に抱きついて、そのままもたれるようにして眠ってしまって……」
告げられたエピソードに、自分は酔っ払ってそんなことを……と、思わず赤面する。
「その無防備な寝顔が可愛くも思えて……、ホテルにでも泊まれたのをついこの部屋まで連れてきて……」
彼が、じわじわと赤くなる私の顔を見つめ、
「ただ、自分のものにしたいようにも感じて……」
ワイングラスを手に、そう口にすると、
「……忘れる程だったんです。ここには誰も入入れることはないと思っていたのを……君を、自分だけのものにしたくて……」
わずかに目の縁を朱く染めた──。
「……そんなのはエゴだとも思っていたのですが……本当は、あの時からずっと、
私は、あなたのことが気になっていたのかもしれないですね……」
そうして、まさかの本心を告げると、彼はワインで潤した唇を引き上げ、私に柔らかに微笑んだ。
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