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「怪奇はテレビとかによく出てる有名霊能者の木保愛子のゴーストライターでな。いろいろと霊能者の体験談の小説を執筆したりして、それが一万部のベストセラーとなっている」
幽美は教子先生の説明も気にせずにタブレットPCを机に置き、ワイヤレスキーボートを置いた。
「凄いじゃないですか!? なんで怪奇先輩がラノケンに!?」
「中等部の時は作文コンクールで金賞取った。そのせいか、親の知り合い経由でゴーストライターの仕事きた。小説はヒットしたけど、書きたいのはノンフィクションじゃなくて……フイクション、ラノベだから……」
「書也、こいつをプロ作家だと思わない方が良いわよ。肝心のラノベ小説の幽美の人物設定はかなりぶっ飛んでるから」
友美は幽美を馬鹿にしたような笑みを向けて言う。
「むう~友美、お前に言われたくない!」
幽美は頬を膨らませ、友美に反論する。
「それは意外ですね。やっぱりノンフィクションのゴーストライターだと、与えられた筋書きでやっているから、フイクションになると設定の詰めが甘くなるんですかね?」
書也は本当に意外そうに言う。
「う~ん。私も怪奇のプロットや小説を見てはいるが……人物設定というより、人がやる行動の常識を外れているというか……精神的な問題かもな」
教子先生は何かを諦めたような表情で言う。
「えっ? 精神的!? 教子先生、私の何が問題なの!?」
怪奇は青白い顔をさらに青白くし、教子先生を見つめる。
「幽美君、自覚が無いならメンタルヘルスをお勧めするのだけど……どうかな?」
理香が幽美の肩にポンと手を置いた。
「やっぱり皆さん、お互いに小説を読み合って、批評しているんですね」
「そんなの当たり前よ。小説を批評し合うのが、この部活の醍醐味みたいなもんだし」
そう言って本当に楽しそうに友美は笑う。
「それじゃあ、みんな揃ったし、ぼちぼち始めるか?」
教子先生の言葉に部員達が一斉に席につき始める。
「さっそく部活動ですか? 何を始めるんですか?」
「語部、先に注意しておく、このラノケンは小説を批評し合う場でもある。場合によっては運動部よりキツイ、精神的な負荷がかかる。もしかしたらお前が書く小説がズタボロにけなされるかもしれない。お前にその覚悟はあるか?」
教子先生のチベットスナギツネのような瞳が、狩りをする狼のような瞳になる。
「大丈夫です! いけます!」
「分かった……今回は誤植を除き、初めての新入部員もいるという事で自由なお題でSSを書いてもらう。知らない人もいると思うから説明するが、SSとは特に短い小説という意味合いがある。今回は五~十ページで完結してもらう。そして今回はプロット無しで五~十ページで完結させ、書いてもらう。アイデアと文章力を鍛える部分では二年、三年のお前達でも良い機会になるんじゃないか?」
「ページ設定はどうしますか?」
書也が手を上げる。
「そうだな……時間も考えて、四百字詰め原稿用紙の設定にするか。一時間あれば良い作品はできるか?」
「二時間は欲しいところよね」
友美は笑って言う。
「冗談を言うな。批評する時間を考えろ。それと新人もいるし、小説を書く上で教えたい事がある」
「あ……」
書也が大事な会話部分をメモしようと、カバンからノートとペンケースを取り出す。
「運動部のようにトロフィーや優勝旗の獲得を目指すようにライトノベル研究部もライトノベル新人賞をとる事を目的としている。私も編集と作家の経験もあって、この部活でライトノベル作家を多く出したいと思っている。幸いにもここの学院長が元アニメ監督とあってか、期待しているようだからな。本気でラノベ作家を目指してもらうぞ!」
【はい!】
ラノケンのメンバーが揃ったように返事をする。
「本当に運動部のようなノリなんですね」
書也は思わず苦笑いする。
「語部、このノリについてこれないと先が思いやられるぞ」
教子先生が微笑する。
「ラノケンは結構、スポコンだからね。ファイトだよ書也君」
隣の愛が両手をグーにして言った。
「意気込みはここまでとして……初心に戻って私のありがたい言葉だ。SSで書くうえで気をつけて欲しいのは誤字脱字だ。短い文章だからといって甘くみると後悔することになる。ライトノベル新人賞の一次選考で落とされるのはこの誤字脱字だ。見直しはもちろん、辞書を引いて気になった漢字は調べる癖をつける。似たような漢字は特に気をつける。中には調べる事もせず、その漢字を正しいと思い続け、間違った漢字を使い続けていたなんて奴もいた。様々なパターンの漢字がある為、最低でも国語辞書と広辞苑などの二冊は欲しい。文学科は様々な辞書が入った電子辞書を配られていたな。それを使っても良いかもしれない」
「これか?」
書也がカバンから電子辞書を取り出す。
「あとこれもよく言っているが……ネットのウイキなどは頼るな。素人が書いたものだったり、自由に編集できる為に辞書と全く違う答えになる事がある。完成したSSは必ず三回は見直しをすること。文章は声に出して読むと、間違いが無くなる。とはいえ、声を出すのは恥かしい、騒音になるなどの問題もある。そういう時は文字を音声にしてくれるツールもあるので、活用するのもありだ。文章の誤字脱字をチェックしてくれるサイトもあるので、利用するのも良い」
いつの間にかプロジェクターに先ほど説明したサイト名やURL、ダウンロード先が記載されている。ご丁寧に教子先生に教えて貰ったファイル共有サービスの専用チャットにもサイト名とURL、ダウンロード先が記載されている。
「特に誤植、お前は誤字脱字を意識して直せ。前回のSSでも熱情に注意されていたろ」
「は、はい。気を付けます!?」
愛が思わず教子先生に頭を下げる。そういえばネットでやり取りしていたけど、愛の小説は見た事がなかった。いつもラノベの話で盛り上がっていたせいもあるし、プライベートを覗き込むようで、そこまで踏み込めなかった。いや、違う……愛の小説を見る事で自分の小説も見せなければいけない。それが怖かったのだ。自分の小説を見て、くだらない小説だと期待外れだと思われたくなかったのかもしれない。