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「今回は六人いるから、私が見る必要はないな。SSは前回と同じで、隣の席の見せ合う形式にする。時間は一時間、このタイマーが鳴ったら終了だ。では、始める」
教子先生がタイマーのボタンを押すと、ラノケンの部員達は一斉にカタカタとキーボードを打ち始める。
「みんなキーボードを打つの速いな!? だけど、俺だって……」
皆が当たり前のようにキーボードを打つのが速いように書也には思えた。あの愛ですら……いったいみんなはどんな小説を書くのだろう? 正直、自分の小説を見られるのは怖い……だけど、自分の成長の為にも愛の為にもここは覚悟を決める。
「……引っ込み思案になるな書也……俺は書く」
書也は頬を叩くと、馴れない手つきでキーボードを打ち鳴らした。
ピピピッ!?と、タイマーのアラームが鳴り響いた。
「終わり! まだ書き終えていない奴はいないな? あと十分やる。さっき私が言った事を思い出し、小説の見直しをしろ」
教子が説明する前にラノケン部員達は見直しに入っていた。愛は顔を真っ赤にしながら読み、文章を書き直している。それに対し、友美友美は堂々と声を出して読んでいた。エロスはボイスロイドに文章を読ませ、時々なぜか卑猥な言葉が聞こえ、その言葉に悶えるように身体を震わせ、笑みを零している。理香や幽美もワードソフトの音声読み上げ機能やボイスロイドに読ませているようで、イヤホンを付け、パソコンの液晶に睨めっこしている。
「……なるほど……じゃあ、俺も……」
書也は教子先生に教わったサイトで文章を読み込ませ、誤字脱字をチェックする。さらに書也は教子先生に教わったダウンロードしたツールで文章を音声化し、イヤホンでよく音を聞き取り、文章に違和感が無いかをチェックした。
十分が経過したのかピピピッ!? と、タイマーのアラームが鳴り響いた。
「そこまで! できた小説は設定でページ数を表記し、印刷してホチキスで留め、お互い隣の席同士の人と小説を見せ合え。相手の小説に誤字脱字があった場合は赤ペンで校正記号を使え、字の修正が必要な場合はその文字を丸で囲んで赤線を引いて、正しい文字を書く。余計な文字が入っていた場合は赤線を引いてトルの文字、文字の入れ替えについては文字をくるむようにSを書く。フォントの文字が合っていない場合、ゴシックならゴシ、明朝体ならミンとカタカナで表記しろ。コンピューターなど、小さなカタカナのユが大きくなっていた場合は逆のVで包むように書く、かつてなどのつが小さくなっていた場合はVを包むように書く。改行などのミスは赤線を引いて文字を繋げる。文字を下げる場合は凹を書いて文字を囲む。字を上げる場合はTを書くように下げる部分を指示する。まあ、図で記載した方が分かりやすい。詳しい書き方はプロジェクターを見てくれ」
プロジェクターに校正記号と記載された画像が表示される。先ほど説明した赤ペンで文字を囲む校正のやり方が書かれていた。
「これは校正士のやり方だが、編集が誤字脱字を直す時にこういった表記で小説を返される事がある。覚えていて、損はないだろう。一応、共有ファイルにもあげておくので、校正記号の画像をダウンロードして確認してくれ」
【はい】
ラノケン部員が一斉に返事をする。
「あとだ……物語の感想については簡潔で構わない。赤文字で記しても、言葉で言っても構わない。ただし、簡潔と言っても面白かった、つまらなかったの一言で終わりにするなよ。どこか面白かったのか、どこがつまらなかったのか、明確にな」
ラノケン部員達が一斉に印刷を始める。レーザープリンターの為か数秒で十ページ近い原稿用紙が印刷されていく。
「愛……俺の小説……見てくれるか?」
書也が恥ずかしそうにまとめた原稿用紙を差し出すと、愛もなぜか恥ずかしそうに頬を染める。
「わたしもいつか書也君の小説を見たいと思っていたの……でも、わたしの小説なんかで良いのかな? 間違いだらけかもしれないし……」
愛はよりいっそう頬を染め上げ、まとめた原稿用紙で顔を隠す。
「そこ! 二人して、なにラブレターを渡す的な感じになってるのよ! とっとと批評しなさいよ」
友美が怒ったような口調で言う。
「愛、わたしのは!? わたしのは見てくれないの?」
幽美は子供がねだるように愛のセーラー服の袖を引っ張り、せがみ続ける。
「ごめんね愛ちゃん、今日は書也君の小説を見たいの」
「いやだ。愛のが見たい」
友美は立ち上がると、幽美のセーラー服の襟を引っ張り、引きずって愛から引き離す。
「ほら、あんたはわたしの小説を見なさい。じゃないと、わたしの小説を見る人がいなくなるでしょ!」
「いやだ! いやだ! 友美の設定が破綻している小説なんて見たくない!」
「は? 幽美……いい度胸ね! だったらわたしの設定のどこが破綻しているのか、ちゃんと説明しなさい!」
手足をジタバタとさせながらも、幽美は抵抗もむなしく、友美の席へと移動させられる。
「いやだ! いやだ! いやだ!」
「……はい」
友美がまとめた原稿用紙を押し付けるように渡すと、嫌々ながらも幽美は受け取り、読み始める。
「……前より……破綻してない……けど、この設定が駄目……」
「なんだかんだ言って批評する時はするんだな」
書也が幽美の変わり身の早さに感心していると、教子先生の目を細めた顔が書也と愛の間に入り込む。
「お前たちも早く批評しろ。時間は有限じゃないんだぞ」
「は、はい!?」
書也は教子先生にせかされ、愛に慌てて小説の原稿を渡す。すると、愛の方は覚悟が決めることができないのか、もじもじしながらも、小説の原稿を渡した。
「書也君……わたしの小説を見ても幻滅しないでね」
「しないさ! 俺の方こそ、幻滅させられるんじゃないかって……ずっと小説を見せる事ができなかった! けど、今なら見せる事ができると思うんだ!」
「……書也君」
「何をそんなに熱く語ってるのよ。あんた、もしかして中二病?」
友美が呆れたように言う。
「そういうんじゃない!? これは意気込みをだな……」
「良いじゃない。とってもエロスを感じるわ」
エロスが本当に面白そうに言う。
「いいから早く見せ合え! 始まらん!」
教子先生が思わず声を上げる。
「見て……」
愛が苺のように真っ赤に頬を染め、原稿を叩き付けるような勢いで小説原稿を渡した。
八雲瑠月
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