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「リリー?」

その様子にランディリックが不思議そうな顔をするから、リリアンナは理由わけを答えた。

「出発の時、いつもなら彼がいる位置にセレン様がいらしたから。――ディアルトは居残りかな? って勝手に思っていたの」

自分たちの少し前を兵士らとともに歩んでいるセレンの背中を見つめながら言ったら、「見知った者がいるのは安心?」と尋ねられる。

「はい!」

その通りだったので、リリアンナが弾けるような笑顔で答えると、ランディリックが呆けたように自分を見つめてくる。


「ランディ?」

「ああ、ごめん。リリーがあんまりにも嬉しそうな顔をするから見惚れてしまった」

「えーっ。なにそれ!」


クスクス笑うリリアンナに柔らかく微笑み返しながら、ランディリックは彼女に気付かれないよう小さく吐息を落とした。


一瞬リリアンナの笑顔に見惚れてしまったのは本当なのだ。それと同時、心の中でひっそりと(僕だけではダメなのかい?)と思ってしまったことも。


ランディリックは吐息とともにその不満を振り払うと気を取り直したように言った。


「……もう少ししたらもう一人、リリーの見知った顔が見られるよ」

「え?」


ランディリックの言葉の意味が分からなくて小首を傾げたリリアンナだったけれど、駅舎を出たあとで、その意味を知ることになる――。



***



ゴツゴツとした石畳の感触が、王都の空気を確かに伝えてくる。ランディリックの統治する辺境ニンルシーラには当たり前のように残っていた雪も、王都エスパハレにはない。


というより、真冬でも滅多に雪なんて積もらないのがここなのだ。


(すごい人……)


そうしてやたらと人が多い。


油断していたらランディリック達とはぐれてしまいそうで、ナディエルと二人ギュッとくっ付いてランディリックのあとを追う。


幸いなのはランディリックが周りの人たちより頭一つ分は背が高いこと、そうして黒髪が多いイスグラン帝国では少数派の銀髪なこともよい目印になってくれた。


もっとも――。


(お年寄りも銀髪に見えちゃうんだけど!)


もちろんランディリックの輝くような銀髪とは違うけれど、パッと見た感じ、白髪が増えてロマンスグレーになられたお年寄りは銀髪に見えないこともない。


(背の高さが違うから問題ないか)


そんなことを思ってクスッと笑ったら、

「お嬢様、何か良くないことを考えていらっしゃいますね?」

すぐさまナディエルにそう指摘されてしまう。


「べ、別に……はぐれないようランディの髪を見つめているだけよ!?」

「髪を、でございますか?」

「あ、違っ。えっと……頭! そう、頭を見つめているの!」


リリアンナが視線をきょろきょろと泳がせた先に白髪の老紳士を認めたナディエルは、「白髪と銀髪は違いますからね?」と小声で耳打ちしてくる。


「なっ、何でそれをっ」


言ってしまって慌てて口を覆ったけれど後の祭り。バツの悪い顔をして「ランディには内緒ね?」と囁いたら「どういたしましょう?」とクスクス笑われる。


「リリー、よそ見をしていたらはぐれてしまうよ?」


話しているうちに少しランディリックから離れてしまったらしい。

背後を振り返った話題の主からそう声を掛けられたリリアンナは慌ててナディエルの手を引いてランディリックへ駆け寄る。


「王都はやはりニンルシーラよりかなり温かいね」


言いながらランディリックが襟元を緩めるのを見て、リリアンナもうなずいた。

温かい空気で満たされていた汽車から降りた直後こそ少し肌寒く感じられた外気だったけれど、慣れてしまえばむしろ暖かいくらい。

手袋を外してそっと手持ちの革鞄マルレのサイドポケットに入れてからふと前を見遣ると、人波の先で、ひときわ目を引く人物がいた。


(わぁー、すごい長身!)


恐らく自分のすぐそばに立つランディリックと並んでも引けを取らない背の高さだろう。


ヤンデレ辺境伯は年の離れた養い子に恋着する

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