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最高すぎる 頑張れー! ふっかー!
「……待てよ」
楽屋を飛び出したふっかを、俺はすぐに追いかけた。
長い廊下を走り、非常口の前でやっとふっかの背中を見つける。
「ふっか!」
呼び止めると、ふっかがピタリと立ち止まる。でも振り返らない。
肩がわずかに震えていた。
「……もう、放っといてくれよ」
搾り出すような声。
俺は迷わずふっかの肩を掴んで、自分の方に向かせた。
目が合う。ふっかの瞳は赤く滲んでいる。
「ふっか……そんな顔すんなよ」
「……照が、させたんだろ」
「……わかってる」
ふっかの想いを、今までどこかで気づかないふりをしていた。
けど本当は、ずっと気づいていた。
ふっかが最後までしたいと言ってくれたとき、俺と同じ気持ちなんだって嬉しくなった。
けど、好きとか付き合いたいとかいう前に体の関係を持ってしまったから、自分の中にある何かが、気持ちを伝えるのを阻んでいた。
そんなある日、ふっかに関係をやめようって言われとき
「”アイドル”である以上、俺らに選択肢なんてない」
「俺らにはファンがいて、事務所があって、仕事がある。それを壊さないように生きていくしかない」
周囲の期待、ファンの声、事務所の方針。
アイドルとして、俺らには背負うものが多すぎるって。
そんなふうに諭された気がした。
だから、ふっかの想いに気づかないふりをして、自分の気持ちにも蓋をした。
「……ごめん、ふっか」
ふっかの肩に乗せていた手に力がこもる。
「ふっかが苦しんでるのに気づかなくて。俺だけ逃げてごめん」
「……何言ってんだよ」
「向き合うよ、ちゃんと」
ふっかの目が揺れる。
「俺、ふっかのこと大事だから」
「……俺が、”友達として”とか”仲間として”大事って言われても……そんなの、嬉しくねぇよ」
「違う」
俺は一歩踏み込んで、ふっかの顔を覗き込んだ。
「俺の中で、ふっかはそれ以上の存在だ」
ふっかが固まる。
「仕事も、グループも、アイドルって立場も……全部、大事だよ。でも、それと同じくらい、ふっかが大事なんだよ」
ゆっくりと、けれど確実に届くように、言葉を紡ぐ。
その声音に嘘はなかった。
「だから、もう中途半端にしたくない」
「……中途半端?」
「俺らの関係、ずっと”なかったこと”みたいにしてたけど……そうじゃないだろ?」
静寂の中で、ふっかが息をのむ音が聞こえる。
ふっかの視線をまっすぐ捕らえた。
「だからふっかの想い、ちゃんと聞かせて?」