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凛道桜嵐 新
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がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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咲さんはLINEで「直接お会いしてお話したいです」とのことだったので、「じゃあ、夕飯でもご一緒しながらお聞きしますよ」と返信した。そしたら「そちらの駅に行くので、駅のファミレスででも話せませんか?」とのことだったので、俺は駅ビルがある方の駅のサイゼリアを指定した。
待ち合わせの時間にサイゼリアに行ったら、咲さんはもう来ていて「こっちです」と片手を上げた。
「こんばんは。どうかしました? お役に立てればいいですけど」
咲さんは、少しためらうようだったが、やがて言った。
「えっと、すみません、その、今週の日曜空いてますか? その日にお願いしたいことがありまして……」
「空けられます。何すればいいんでしょうか?」
「その、和泉さんは、即売会ってご存知ですか?」
「即売会?」
えーと、コミケが確か即売会だっけ。あと、同人誌を売るような集まりは、だいたい即売会だったような。
「コミケとか、同人誌売る集まりですよね?」
「はい、その売り子を手伝っていただけないかと思って……もちろん、お礼はします!」
「売り子?」
店員さんが注文を取りに来たので、俺と咲さんはとりあえずドリンクバーを頼んで、話の続きをした。
咲さんは言った。
「あの、私、動画編集がうまい友達と組んでYouTubeにメイク動画を上げてるんですね」
「はい」
なるほど、メンズメイク動画に詳しかったのは、自分もそういう事やってたからか。
「で、主に男性にメイクして女装させてるんですけど、それで女装に目覚めちゃう人が多いから、私メイキャッパーメス堕としと呼ばれてまして」
「メイキャッパーメス堕とし!?」
「私、ちょっと冴えない男の人をメイクできれいな女の人にするのがすごく好きで……それで、そういう男の人はきれいかわいいって褒められたことないから、私がメイクすると女装に目覚めちゃうことが多くて……」
「そ、それは……すごいですね……」
そうとしか言いようがない。え、何、俺に女装させたのも俺がちょっと冴えなかったから?
「で、そういうメーキャップ術をたまに同人誌にしてて、今度の日曜の即売会で頒布するんですけど、動画うまい友達のほうが、今激しくネトストされてて」
「え、それは大変ですね」
ネトスト、きっかけがあれば容易に普通のストーカーになりうる。即売会って、そこにその人がいるって確定だから、顔バレとか、尾行されたら住所バレもありうるじゃん!
「えーと、ネトスト相手が怖いから、男を連れてきてガードしときたいってことですか?」
「そうです、そうなんです」
咲さんは激しくうなずいた。
「友達は、かわいそうなんですけど今回参加しないで、私だけが売るつもりなんですけど。私が友達と勘違いされて、なにかされる可能性もあるし、男の人いてくれたらありがたくて……」
「なるほど」
「兄も父も今忙しくて、こんなこと頼めなくて……」
「そうでしたか」
俺は考えた。こんなこと、ある程度信用してる相手にしか頼まないだろうから、咲さんは俺のことをある程度は信用してくれてるんだろう。多分、女装させられても逃げなかった男というのもある。
でも。
「その即売会に参加するのはいいんですが……私、そういう、威圧感ある方じゃないのでお役に立てるかどうか……」
俺は、冴えないガリのアラサー男である。そんなのがいても、執念深い相手が諦めるかどうか。
……いや、待てよ。
「あの、即売会って、何人まで参加してもいいんですか?」
「え? えーと、二人か……多くて三人くらいですね」
咲さんは、話の展開がわからないらしくて首を傾げた。俺は話を続けた。
「あの、私も行きますけど、私の知り合いのマッチョも連れて行くのはどうでしょう。そしたら威圧感あると思うんですけど。で、私は女装してメイクして、このメーキャップ本買ったらこんなになれるぞ! の宣伝をやるって感じで」
知り合いのマッチョ、第一候補はおっくん、第二候補は千歳。おっくんが第一候補なのは、女装男子というヘキに理解があるのは千歳よりおっくんだろうからだ。千歳だと、俺の女装の時点で大騒ぎする可能性がある。
咲さんは戸惑った。
「え、ええと、それはすごく受けるとは思いますけど、そのマッチョの人、どういう人ですか?」
「私の友達で、狭山誉さんの担当さんです。奥武蔵って言います。ラノベの担当やってるような人なので、多少の尖ったヘキなら理解あります」
「え、そんな人いるんですか」
俺の友達、というより、狭山さんの担当、という方が信頼ポイントは高いだろう。予想通り、咲さんの顔が和らいだ。
俺は言った。
「ちょっと今、その人に連絡とってみますね。今OKがもらえるなら、話スムーズだから」
俺は爆速でおっくんにLINEを打ち、事情を説明して協力を求めた。ダメなら千歳に頼もうと思っていたけど、「いいよ、空いてるよ、タンクトップで行けばいい?」と返事が来た。
「協力してくれるそうです。私にはお礼いいですから、おっく……奥さんにお礼をしてください」
「え、いいんですか!?」
「いいですよ、即売会ってちょっと興味あったし」
俺は、咲さんを安心させるように笑った。
その後、改めて食事を頼み、即売会の細かい打ち合わせをした。
咲さんは言った。
「即売会、コスプレの更衣室はあるんですけど、私が入ってメイクするわけに行かないから、当日はうちでフルメイクと女装してもらって、それから会場に向かうんでもいいですか?」
女装して電車乗らないといけないの!? いや、でも、やるって言ったし、断れないな……。
「が……がんばります!」
コメント
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古書研究でいろんなコミュニティを見てきた身としては、この「メイキャッパーメス堕とし」って設定がもうツボです。笑 冴えない男に女装を施すことで目覚めさせるっていう、咲さんの特異なスキルと、主人公が自ら「女装して宣伝になる」と提案する行動力のバランスが絶妙でした。おっくんのタンクトップ参加も含めて、即売会がどうなるか気になりますね。主人公の「がんばります!」の一言に、覚悟と諦めが混ざってて好きです。