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「水無瀬さん、何かあった?」
彼女は何処か、辛そうな顔をしていた。
「松井くん、。別に何も無いよ」
「嘘だ。俺、ずっと水無瀬さんのこと見てるから分かるよ。」
「何があったの?」
「それ、告白、?」
そう言う涙目で笑顔の君。
どういう感情なの。
誰を想って泣いているの。
俺じゃだめなの。
「告白、では無いよ。」
「そう」
何処か遠くを見て切なそうに笑っている君。
その横顔も好き。
風でなびいている髪も好き。
穏やかな声、優しい目、周りよりも少し高い背。
全て好きだから。
「松井くんさ、」
「蒼空って、呼んで欲しい」
「あいつは千華って呼んでるんだからさ。」
夕暮れ時。
教室のベランダ。
部活終わりの生徒が帰って行く。
ここには俺たち2人しかいない。
「うん、蒼空くん」
「志乃ちゃん」
傍から見れば付き合っているように見えただろうか。
君を俺だけのものにしたい。
「お姉さん可愛いね。」
「俺らと遊ばない?」
久しぶりに志乃と出掛ける約束をした。
待ち合わせ場所の駅に行くと志乃は大学生くらいの男たちに囲まれてナンパされていた。
助けようと俺は声をかけようした。
「普通にそれ、恥ずくないわけ?」
「は?」
「私高校生。あんたら大学生?」
「そうだけど」
男たちは笑いながら彼女と会話しているが彼女は眉間に皺を寄せている。
なんと言っているのか聞き取れない。
「そうやって、声かけることで女に飢えてるって丸わかり。だっさ。」
「私が可愛いから声掛けたくなるの分かるけど、あんたらじゃ私に釣り合わないかな?」
彼女が何か言うと男たちはつまらなそうに歩いて行った。
千華なら、俺に助けられるまで待っているのかもしれない。
関係の無い千華を思い浮かべている俺に嫌気がさす。
「ごめん志乃、お待たせ。」
「待ってないよ!」
いつもの純粋な笑顔。
だけど君は、俺が居なくても生きていけるね。
私はあなたに抱かれている時あなたと繋がれているから凄く嬉しい。
今もそう。
私の家には今ふたりしかいない。
あなたの気持ちよさそうな声と体温と触り方。
いつもこういうことする時は私の家。
でもあなたがそれがいいなら私もそれがいい。
何回も何回も何回もイッてあなたで満たされて、あなたが満足して。
あなたの気が済んだらあなたは帰る。
昼からデートしてたのにあなたの気合いが入っていたのは行為中だけ。
私はあなたの性処理道具なの?
私はあなたのステータスなの?
なら、誰でもいいね。
「千華、今週末空いてる?」
「空いてます!」
先輩からデートの誘いを受けた。
夕飯でも一緒に食べないかって。
話したいことがあるって。
もしかしたら志乃さんと別れたのかもしれない。
その日のために新しいコスメや服、靴を買った。
前日には早く寝て肌が荒れないように食べ物にも気を使った。
17時に駅なのに30分前には着いて待っていた。
彼は約束の10分前に来て優しく微笑んだ。
「早いね」
「楽しみで、」
学校とは何処か違う雰囲気で、初めて志乃さんにいつもしている顔をしてくれた。
彼はお洒落な雰囲気のレストランを予約していてくれたみたいですごく美味しかった。
適当なカフェに入り談笑して、すごく楽しかった。
少し、沈黙が流れて彼は私にキスをした。
「これも衝動ですか?」
「したいと思った」
偶然バイト先のカフェに桜井と千華ちゃんがやってきた。
ふたりは何処かいつもとは違う雰囲気だった。
窓側に椅子が向いているカウンターに隣合って座って楽しそうに話していた。
ふたりは見つめ合い桜井は千華ちゃんにキスをした。
千華ちゃんは恥ずかしそうにしていて桜井は微笑んでいる。
ずっと尊敬していた友人だからこそ鳥肌と苛立ちで頭がパンクしそうになった。
俺はどうするべきなのだろう。
彼は私と手を繋いで歩いてくれた。
大きくて暖かい手に包まれてすごく幸せだった。
「千華、俺我慢できない。」
そう言うと先輩はカラオケに入り私にキスをした。
きっとこれからそういうことをするのだろう。
「ね、ねぇ先輩」
「大丈夫、優しくする」
「違う、彼女さんは?」
「あー内緒ね」
悪い顔をしていた。
でもその笑った顔がすごくかっこよくて何も拒否できなかった。
私の胸をゆっくり触ったり、下の方に指を入れたりしている。
「好きだよ、千華。」
「私も」
その音しか私の耳には入ってこない。
「千華、俺のも」
そう言うと先輩は私にそれを咥えさせてスマホを開いた。
「もしもし、志乃」
私とシている最中なのに彼女に電話をかけて楽しそうに話している。
そのまま私の中に先輩は入れてしまった。声が乱れながら彼女さんと話している。
私も声が我慢できなくなってしまう。
先輩は私の口元を手で抑えて何度も何度も私の中に出した。
「じゃあねおやすみ、志乃。」
電話を終えると先輩はすぐにズボンを履き、お金を財布から出し机に置いた。
「ちゃんとピル飲めよ。」
「あと会計もよろしく」
先輩は扉を開け出ていってしまった。
机の上を見ると1万円札とピルが置いてあった。
私の中はまだ脈打っている。
私は先輩に良いように扱われているだけなんだと悟った。
帰りにドーナツをコンビニで買った。
甘いはずのドーナツは虚しくて苦かった。
「志乃ちゃん、ちょっと」
放課後。
彼女に教室で待っていて欲しいと言った。
部活を早めに終わらせて俺は教室へと急いだ。
何かの本を読んでいる彼女。
その横顔が今まで見たことないほど幸せそうだった。
「志乃ちゃん、お待たせ」
「大丈夫だよ蒼空くん。」
「あのさ、俺見ちゃったんだけど」
「うん」
あのことを考えている時に彼女の気持ちになった。
言わない方が幸せなこともあるんじゃないか、と。
でも彼女に言わないと幸せとは程遠いのでは無いか。
「桜井と千華ちゃんがこの前ふたりでいて、キスしてた」
「え?」
たぶん、彼女の頭の中でこの言葉を理解するのに時間がかかっているのだろう。
「なんで」
無意識だろうか。
彼女の目からゆっくりと涙が溢れていく。
「大丈夫、志乃ちゃん。大丈夫だから。 」
彼女は俺に顔を近付けてきた。
「だめだよ」
「それじゃあ、アイツらと同じになる」
彼女は声を上げて泣き始めた。
「本当は、ずっと知ってた」
「莉央くんは私のこと好きじゃないって」
「でも、それを自覚したくなくて気づかないふりしてた。 」
俺は彼女をそっと抱きしめた。
彼女の体温と声が俺の身体に直で伝わってくる。
だめなのは分かっているけど好きな女の子が泣いていて何もしないなんて出来るわけがない。
「ねぇ、蒼空くん。」
涙で濡れた顔をこちらに向けて言う。
「今日は家に帰さないで」
俺は彼女を家に入れた。
俺の家は両親共にあまり帰ってこない。
ひとりっ子でいつも家には一人だった。
「お邪魔します」
「お風呂入りな」
「うん」
海外で仕事をしている父と母。
夫婦仲は良く俺のことも愛してくれる。
だけどその愛をいつも受けている訳では無い。
俺はクローゼットから母のスウェットを取り出し洗面所へ持って行った。
「ありがとう」
父も母も料理人で俺はふたりからよく料理を教わった。
だからふたりがいなくても生きてはいける。
お金だって困ってない。
彼女はお風呂から上がると俺の作った料理を見て驚いた。
「え、これ蒼空くんが作ったの?」
「うん、食べよ」
「すごい」
彼女は「いただきます」と可愛らしい声で言って俺の作ったスープを一口、口に運んだ。
「美味しい、すっごく美味しいよ」
目にはまた、涙が溢れている。
「泣かないで。志乃ちゃんが泣いたら俺まで悲しくなるよ」
いつもひとりで食べていた料理は誰かと食べると普段の何倍も美味しく感じた。
ご飯を食べてふたりで映画を見た。
彼女はミステリーが好きと言って殺人事件が主な内容の映画を見始めた。
純粋で可愛いと桜井はよく言っていたが彼女のそれは多分、あいつ用につくっていたのだろう。
「蒼空くん、眠たいの?」
「んー」
「寝る?」
「寝よう」
俺は彼女を母が使っていた部屋に連れていき洗濯したシーツをかけた。
「ここで寝てね」
「え?ひとりで寝ていいの?」
「当たり前じゃん。」
「なんだ、そういうことこれからするのかと思ったよ」
当たり前かのように性行為の話をしだす彼女。
俺の顔が熱くなる。
やはり、彼女は純粋じゃなかった。
「俺、付き合ってる子としか出来ないから」
急いで部屋へ戻りすぐに目を閉じた。
朝になった。
起きてリビングへ行くと手紙が置いてあった。
「昨日はありがとう。けじめ付けてくる。」
母の部屋へ入ると確かに彼女はいなかった。
「ねぇ先輩、志乃さんと別れてよ」
私の家の私の部屋のベッド。
行為が終わりふたりでベッドに寝ている。
「あぁ、別れようと思ってた。」
「千華、俺と付き合おっか。」
「え?ほんとに?」
やっぱり、 ヒロインは必ず結ばれる。
あなたの隣は私しかいない。
彼は私の頬を撫でて私に優しいキスをしてくれた。
いつもとはどこか違うキスだった。
「もう1回しよ」
彼が私を求めて私の名前を呼ぶのがこの世でいちばん幸せなことだと思った。
彼に昨日、連絡した。
明日話したいことがある、と。
よく私たちが学校終わりに行っていた公園。
ベンチに腰かけて1時間程待った。
春の匂いがして愛おしい。
「志乃、ごめんおまたせ。」
「いいや、待ってないよ」
どうしてそんなに悲しそうな顔をするの。
あなたは別の子が好きなんでしょう。
「隣座りなよ」
「うん」
沈黙が流れる。
前までは心地よかった沈黙も今では地獄と化している。
「千華ちゃんとキスしたんでしょ」
「え?なんで」
「知り合いが教えてくれた」
「そっか」
少し期待していたんだと思う。
してないよ、嘘だよって。
「本当はあの時駅で抱きしめたのも莉央くんからなんでしょう?」
「そう、だね。」
バレるくらいなら下手な嘘をつかないで欲しかった。
どんどん私はあなたを好きになっていくのに。
「なんで怒らないの」
「別れようって言えばいいだろ?!」
「俺、浮気したんだよ?」
どうしてあなたが怒るの。
どうしてあなたは私を必要としないの。
「言ったでしょ。」
「私からは別れを告げないって。」
そう言うと君は切なそうな顔をする。
泣き虫な君。
なのに今、君は泣いていない。
それは俺との別れを惜しんでいないから?
「別れよう」
「うん、今までありがとう」
そう言うと彼女は小説を差し出した。
題名は”嘘と愛”
彼女と出会った時のことを鮮明に思い出した。
あの時から俺は、君に。
「ありがとう」
彼女は振り向いてそのまま歩いて行った。
振り向きざまに見えた君の顔は赤くなっていて目から涙が溢れていた。
それと同時に俺はずっと気づかないふりをしていた感情に向き合ってしまった。
君のことがずっと好きだった。
これは間違いなく恋だ。
俺は君に気付かぬうちに恋をしていたんだ。
「だめだ、俺。」
好きだと理解してしまえばそれは虚しく意味の無い感情で、だけど抑えることができない。
今まで一度も好きだと伝えていなかった。
言ってしまえば俺は君から離れられなくなるから。
俺は君に相応しくない。
だから、君はこの世でいちばん幸せになって。