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八雲瑠月
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VR世界に入ったアバターのラノケンメンバー達はアンティークな鉄製の鳥籠のような巨大エレベーターが高速で動く中、円陣を組んでいた。シェヘラザードの書也、キューピッドの愛、サラマンダー娘の友美、少女人型ロボットの理香、幽霊の幽美、女神のエロスのそれぞれが手を重ねていた。
「いきますわよみんな! ラノケンメンバーの誇りにかけて……いえ、愛さんを守る為に全力で戦いますわよ!」
そしてラノケンメンバーが同時に声を上げ、手を掲げた。その手の先には巨大エレベーターの天井に太陽の彫刻が施されていた。それはまるで皆が気を練って作った太陽のようでもあった。
『さて、ラノケンメンバーもマンケンメンバーも準備ができたようだな』
巨大エレベーターが動く中、微かな歓声の声と共に聞こえてきたのは口姫らしきアナウンスの声だ。
インジケーターの針が止まり、巨大エレベーターのボタン上部には階の表示ではなく、バスや列車の方向幕のようにラノケンメンバーの各ペンネームが回っていき、エロお嬢様で止まると同時にチーンというレトロなエレベーターの音がして、鉄格子のような扉が軋むような音を立てて、開いた。
「では、行って参りますわ」
目が眩むほどの照明と共にライブイベントの盛り上がりに負けない歓声が、エロスの言葉を飲み込みそうな音量であった。
「エロス……エロ対策は完璧なの? 私が見た限りではかなり危ない……私が指摘した部分さえまともに修正できてない」
肩を掴む幽美アバター。幽美の怪奇現象がそうさせるのか、振り向くエロスの笑顔で表示されるアバターの画像が乱れ、消えかけ、死を予感させるほど不吉だった。
「大丈夫ですわ幽美さん。エロは不滅……あくまでも私のポリシーは貫きさせていただきますわ!」
エロスのアバターはそう言って。髪を払い、巨大エレベーターを出ていた。
「さすがにそれは……一般向けをエロで通しちゃいけませんよ先輩!」
書也の声もむなしく、エロスには届かず、歓声で掻き消えていた。
『ラノケンメンバーの先鋒はなんと、いきなり部長のエロお嬢様だ!』
エレベーターが開いた先は前回と同じ現代国語学院の体育館をオペラ劇場のように改造したような施設内だった。さすがVR世界といったところか、体育館の舞台とエレベーターは繋がっているようだ。そしてこちらも前回と同じで、実況席と記載された長机には新聞部の聞姫、解説席にラノケンの現語教子先生、素描花美先生が座り、舞台にはMCの口姫が立っている。
『対するは……おっと!? これは部長対決だ! マンケンもいきなり先鋒は部長!? 吸血公女の登場だ!』
エロスの向かい側の別のエレベーターの扉から吸血公女こと、カーミラ・赤月のヴァンパイア少女アバターが現れる。
「見せてもらおうか。社長令嬢のシナリオが何処まで私の絵に通用するのかな!」
吸血公女がマントを翻し、楽しそうに八重歯を出し、笑みを浮かべた。
「いいですわ! 見せて差し上げますわ! 私のギリギリなエロスなラノベを!」
『エロお嬢様の《スープを覗き込んだら擬人化食品少女の異世界だった》を長編予定だったものを短編に仕上げた作品になっていますが……こちらの作品は上手くまとめられた感じになっていますでしょうか現語先生?』
聞姫が教子先生に質問する。
『本来、小説では長編を短編にするのは難しい事ではあるが、エロお嬢様はゲーム会社でシナリオの補助をやった事もあってか、問題なくまとめている。ただし、私の指摘した部分が直せているかどうかで、変わってくるだろう』
『エロお嬢様の作品に教子先生が指摘した部分が直せていない可能性があると?』
聞姫が不思議そうな顔をして教子先生に聞く。
『そうだ。表紙絵と挿絵はエロお嬢様とドジっ子食いしん坊が担当している。絵が不慣れなラノケンではこの二人が絵の主力だ。自分の小説だけでなく、他人のイラストを担当するとなると、負担が大きくなり、小説の修正も手が回らなくなる。せっかく小説が完成してもな……エロお嬢様はギリギリのエロ描写を書きたがる傾向がある。それを修正せずにあげた場合、吉と出るか凶と出るか……』
聞姫の質問におでこを押さえて、悩ましい表情をする花魁風の着物姿のアバターの教子先生。
『なるほど……エロお嬢様がエロ描写を修正できているかで、勝敗が決まってくるわけですね。では、吸血公女の方はどうでしょうか? 素描先生』
その聞姫の質問にアルラウネ娘の素描が答える。
『そうですね。学生ながらも、プロの意識が強く、プライドが高いのが弱点でしょうか? 絵なら誰にも負けないというプライドがあってか、私のアドバイスもぜんぜん聞いてくれなくて』
目を押さえて、子供のように泣き声を上げる花美先生に聞姫も思わず呆れ顔になる。
『ええと……つまりアドバイスを聞けば必ず勝てる可能性があるということですね。吸血公女の作品はどんな仕上がりですか?』
聞姫の質問に花美先生は少し泣き止む。
『そうですね。彼女の漫画、BLOODQUEENは読む人に癖がありそうな気がしますね』
『癖というのは?』
首を傾げる聞姫。
『吸血鬼を題材にしているせいか、流血シーンが多くあります。その描写部分で読者が離れていく可能性が充分にありますし、それと主人公が二重人格で、男性と女性に別れる部分があり、その謎が伏線の回収が短編では難しく、最後に明かされています。その部分で読者が理解できずにつまらないと思ってしまう人が出てくるのではと、心配しています』
『なるほど……難しい課題はどちらも多くありそうですが、お互いに頑張ってほしいですね。それでは集計の準備ができたようなので、解説は口姫にお願いする』
『じゃあ、説明させてもらう。一週間ごとに集計させたものを表示させていく。つまりは順に一週間、二週間、三週間、四週間後の数値を表示させていく。なお、分かりやすく面白くする為にゲーム風な攻撃エフェクトで表示されるようになっている。では、バトルスタート。レディーゴー!』