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八雲瑠月
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「ふふ。メタバースとはいえ、凝った演出にしたものだ。だが、これでお前との決着が分かりやすくなったな。そしてお前は私に負け、マンケンが勝利する。部員を引き抜かれたお前は、吸血公女のアバターに血を抜かれたように干物のようになっているだろうからな」
吸血公女のアバターが自ら手首を爪で斬ると、多量の血が紅い沼を作っていき、そこから血で作られた無数の狼がエロお嬢様のアバターを襲う。だが、エロお嬢様のアバターが白翼を広げると、光と共に衝撃波を生んで、血の沼と血で作られた狼は吹き飛ばされ、浄化していた。
「初手で私に勝てると思っていますの? その考え、甘いですわね吸血公女!」
「馬鹿な!? 私の絵が奴の文章と拮抗しているだと!?」
『おっとこれは!? ポイントに差がついていないという事なのか!? どちらの攻撃エフェクトもヒットしない!? 吸血公女の漫画をアップロードしてからの一週間後の閲覧数は7351、ブックマーク数761、いいね数384、コメント数0。対するエロお嬢様は7897、ブックマーク数698、いいね数324、コメント数8となっている。閲覧数とコメント数ではエロお嬢様に軍配が上がり、ブックマーク数といいね数では吸血公女が勝っている状況だ』
『どうしてこのようなばらつきの数値になったのか、疑問だな』
聞姫が少し不思議そうな顔をして言う。
『恐らくはお互いの作品の傾向で、読者がリアクションをとりにくい状況にある。エロお嬢様の場合、ギリギリなエロ描写で攻めているぶん、ブックマークやいいねが押しにくい。ブックマークはコレクションとして表示される。そのギリギリエロ描写の作品をコレクションに加えたり、いいねの足跡を他人に見られるリスクを冒したくないという心理がどうしても働いてしまう。逆に吸血公女のエロ描写が無い作品は他人に見られても問題なく、ブックマークといいねのリアクションをとれるという訳だ』
聞姫の疑問に教子先生が答えた。
『しかし、エロお嬢様の閲覧数やコメントが多いのはなぜですか? しかもこれだけのブックマークといいねが多いのに、コメント数が0というのは……』
聞姫の問いに今度は花美先生が手を上げ、口を開く。
『素描先生、どうぞ』
『流血シーンが多いからというのもあるでしょうね。凄惨なシーンを賞賛したりすると、読者が逆に非難もされたり、その異常性を指摘されたりする事を恐れます。それに複雑な設定もあり、読者はその解釈違いや設定間違いを恐れ、どうしてもコメントをしづらい状況に陥ります。漫画は絵で表現するので、設定を説明するのにはやはり絵だけでは不向きなんです。そういった意味では文字で設定を説明する小説の方に軍配が上がりますね。逆にエロお嬢様のギリギリなエロ描写ですと、コアなユーザーが集まり、もっとこういったシーンを書いて欲しいといいうリクエストで称賛のコメントが増えるのかもしれませんね』
『なるほど……小説も漫画も得手、不得手があるようだ。まだ一週間目ではどうなるか分からないぞ! では、二週間目を見てみようか! 第二戦スタート!』
「やるではないか! さすがレッドムーンのシナリオを担当した事もあってか、私と同じクオリティーで、プロレベルという事か。だが、しょせんはエロで読者を釣っているだけ、短編小説のエロ描写では、物語の質を落とすだけ!」
吸血公女のアバターが目を紅く輝かせ、今度は自らの爪で両手首を切り、血の沼を作る。吸血公女が両手を交差させると、血の沼は二頭の紅い血の龍となり、エロお嬢様にとぐろを巻くようにその巨大な顎で飲み込もうとする。
「貴方は勘違いしてますわ。私は男女の性交を書いている訳ではありません! 貴方も見た事ありますわよね? 魔法少女やヒーローのヒロインが何かに巻き付かれ、ピンチに陥るシーンを! 主人公やヒロインのピンチこそ、読者にエロを掻き立てる。そのピンチを私は少し書き足しただけですわ」
エロお嬢様の真っ裸当然の女神アバターは巨大な光の槍を生み出し、二頭の血の龍を貫き通し、浄化させ、その光の切っ先は吸血公女の頬を掠め、わずかな焦げ跡を残す。
『おっと!? ここで両者の数値が二倍近くになっている!? 吸血公女の二週間後の閲覧数は14328、ブックマーク数1412、いいね数660、コメント数2。対するエロお嬢様は15155、ブックマーク数1399、いいね数655、コメント数16となっています!? 先ほどと同じで、エロお嬢様は閲覧数とコメント数を伸ばしてきた! そしてさらにエロお嬢様のブックマーク数といいね数が、吸血公女に近づいてきている!?』
口姫の鼠耳のアバターが声を上げ、興奮したように実況する。
「馬鹿な!? ヒロインのピンチでエロを引き出したとでも言うのかお前は!?」
頬にわずかな黒い煙を出す吸血公女のアバター。その頬を押さえながら吸血公女は信じられないといった顔でエロお嬢様のアバターを見つめた。
「漫画やアニメでもありますでしょう? 何かに巻き付かれて拘束されたヒロインや主人公達、あれをエロ触手に変え、口や股間に突き込ませただけですわ、おほほほっ!」
まるで悪役令嬢のように高笑い声を上げるエロお嬢様。
「そこまでのギリギリな描写で、よくアカウントが保っているものだな。ここまで読者を引き寄せるエロ描写だ。かなりの綱渡りだというのに……そこまで書けるというのか!?」
『そして三週間目に突入! 二人の数値はどうなっている?』
口姫の鼠耳アバターが躍るように両手を上げる。
「貴方もレッドムーンで働いていたなら、もう少しエロを学ぶべきだったのです!」
エロお嬢様の女神アバターが巨大な光の槍を投げると、その刃は吸血公女の胸を貫いた。さらに新たな槍が光の魔法陣から生まれ、左右の横腹を貫き、数本の光の槍は交差し、十字架となって、吸血公女を宙に貼り付けにした。
「くっ!? 馬鹿な!? これがエロ描写の力だというのか!? 私の漫画がエロ描写の小説に負けるなど!?」
『なんと!? ここで吸血公女の数値をエロお嬢様が上回り完全に圧勝!? 吸血公女の閲覧数は28400、ブックマーク数2801、いいね数1212、コメント数4。対するエロお嬢様は30012、ブックマーク数2822、いいね数1250、コメント数30となっています。先ほどとは違い、エロお嬢様は完全にリード!』
「そう! これが人々の欲望の力、エロスですわ!」
エロスの女神アバターが白い翼を羽ばたかせ、飛翔すると、再び両手から巨大な光の槍を生み出し、投げる。それは巨大な光の巨鳥となって、吸血公女を飲み込もうとする。
『ここで四週間目に突入!? エロお嬢様が完全勝利か……』
こっそりと舞台から現れた黒子が歩み寄り、口姫にメモ用紙を渡す。
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