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あたあた新しい作品です
よくわかんないけどとぞ
空に浮かぶ島々がゆっくりと流れる世界――
その中でも一番小さな島に、「風を集める街」と呼ばれる場所があった。
その街では、風はただの空気じゃない。
色も音も、そして記憶までも運ぶ大切な存在だった。
元貴は、その風を集める「風守(かざもり)」の見習いだった。
まだ中学生くらいの年齢だけど、風の流れを読む力だけは大人顔負けだ。
ある日、元貴は街の外れで奇妙な風を見つける。
透明なはずの風が、ほんのり青く光っていたのだ。
「こんな風、見たことない…」
手を伸ばした瞬間、その風は逃げるようにふわっと遠ざかった。
「待って!」
追いかけた先で出会ったのが、涼架だった。
涼架は長い髪を風に揺らしながら、じっとその青い風を見つめていた。
まるで知っているかのように。
「それ、触らない方がいいよ」
突然声をかけられて、元貴はびっくりする。
「え、なんで?」
「その風、“迷い風”って呼ばれてる。
触ると、どこか知らない場所に連れていかれることがあるの」
元貴は目を丸くした。
「え、めっちゃ危ないじゃん…でも、ちょっと面白そうじゃない?」
涼架は少しだけ笑った。
「普通はそう思わないけどね」
そのとき、青い風がふたりの間をすり抜けた。
まるで誘うように。
元貴は一瞬迷ったあと、言った。
「…行ってみる?」
涼架は少し考えてから、うなずいた。
「いいよ。でも、戻ってこれる保証はないからね」
ふたりは同時に、その風に手を伸ばした。
次の瞬間――
世界がぐにゃりと歪んだ。
目を開けると、そこは見たこともない場所だった。
空は深い紫色で、風はささやくように声を持っていた。
「ここ…どこ?」
元貴がつぶやく。
涼架は静かに周りを見渡した。
「たぶん、“風の記憶の中”」
「え?」
「この世界のどこかで消えた風たちが、ここに集まってるの。
つまり――昔の出来事とか、誰かの思い出とかが残ってる場所」
元貴はワクワクした表情になる。
「めっちゃすごくない!?」
「…でも同時に、戻れなくなる人もいる場所」
そのとき、遠くで風が強く渦巻いた。
まるで何かが呼んでいるように。
元貴は一歩踏み出す。
「行こう。あの風、絶対なんかある」
涼架も少しだけ笑って、その後に続いた。
「ほんと、好奇心強いね」
ふたりは、風の記憶の奥へと進んでいく――