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___ しのぶ が 鬼殺隊へ入隊して1ヶ月もしない頃。
「あらしのぶ?そんなに思い詰めた顔をしてどうしたの?」
生前のカナエの柔らかく暖かい声が縁側に座り項垂れていたしのぶの耳を包む感覚が鮮明に蘇る。
「姉さん…やっぱり私鬼殺隊向いてないのかな?」
そんな甘く優しいカナエの声とは真逆のツンツンと耳を刺激する様な声でしのぶ自身は返した
「どうしたの…?いきなり、そんな事ないわよ?、しのぶはとっても頑張っているわ」
「…今日の任務,私…怪我したよね……?それであんな十二月鬼でも無い鬼にこんな怪我を追わされてる様じゃ…ダメよね……」
カナエが心配そうにしのぶの顔を覗き込めばしのぶはか細い声で告げた。 そう、しのぶは任務先で呼吸が使えない様な隊士でも首を切る事が出来た鬼に傷を付けられてしまったのだ,それに加え御館様はしのぶが首を切れないのを察し,しのぶの任務は必ず首を切る事が出来る他の隊員と合同で与えていた。
「あらあら、もしかして、鬼の首を切れない事に悩んでいるの?」
「…姉さんは良いわよね…。華奢だけど上背はあるし…強いし……」
「しのぶだって十分凄いじゃないッ!最終選別を突破しているし」
「強くないわよッ…!! 最終選別だって運良く生き延びただけだったし……」
しのぶは当時,毒もまだ使えなければ鬼を殺す事も出来なかった。最終選別では賢い頭と知恵を活かし上手く他の隊員のサポートに回った。 突きの威力は昔から他の剣士と違い並外れて強かった為鬼を木の幹に向かって刺し,抵抗出来なくなった鬼を他の隊員が切るという手法で上手く生き残ったのだ。
「そうだッ!なら突きで鬼を殺せる方法を編み出したらいいんじゃない?」
カナエは軽々しくそう告げた。
「そんな事…出来たらとっくにしてる…ッ!!」
「まぁまぁ、しのぶは頭がいいんだからきっと編み出せるわよ」
その時笑ったカナエの笑顔が太陽の様に眩しかったのがしのぶの記憶に残り続けていた。
「さぁ、しのぶ もう寝ましょうッ」
「うん……」
2人は屋敷に入り布団を並べて眠った。しかし、この何気ない会話が後にしのぶを強くする歯車となる事をその時のしのぶは知る由もなく、ただカナエの温もりを感じ目を瞑った。
それから数日、しのぶは任務帰り藤の花を目にする。しばらくその花を眺めていると最終選別で言われた鬼が藤の花を嫌う事を思い出した。興味本位で1房取り、花びらを数枚ちぎって しのぶは口に運んだ。するとたちまち体調が悪くなりしのぶは地面に蹲りしばらくの間吐き気に苦しんだ。体調が緩和されるとしのぶはニヒルな笑みを口元に浮かべ”これは使える……”と思った。これを上手く加工すれば鬼をも殺せる”毒”が作れるかもしれない。しのぶはその1房を持ち帰り 早速 藤の花について調べ 実験を始めた。
実験を始めて数ヶ月もしないうちにしのぶは持ち前の頭脳で鬼に効くであろう毒を完成させた。しかし、それをどう鬼に打ち込むか考え所だった。そこでしのぶが考えたのは”刀を丸々改造する事”だった。
直ちに刀鍛冶の長の”鉄地河原鉄珍”に手紙を鴉を通して送り,«突きに特化し»、«毒が打ち込める»刀を依頼した。流石は長というべきだろうか、数週間のうちにしのぶの元へ刀が届いた。ツバだけ今のしのぶが使う刀とは違うものの形状等は今使っているものと同じものだった。
刀が届いた後日しのぶは早速来た任務に他の隊員と共に行き、毒を試すことにした。 その瞬間は瞬く間に来,しのぶは現れた鬼の首に向かって蟲の呼吸で 刀を突き刺した。突きに特化した刀になった為か扱いやすく、最速で突きを繰り出すことに成功し,同時に毒も打ち込めた。しのぶが反対側に着地をする頃には 算段通り鬼は吐血し苦しみ始めていた、毒を分解されないかが懸念点だったが弱い鬼だった為分解出来ずそのまま体が溶け鬼は消えていった。 それを見ていた隊員は驚いた表情を見せまじまじとしのぶを見ていた。無理もないだろう。彼らの目に映ったのは今まで首を切れなかった剣士が”突きだけで鬼を殺した”瞬間なのだから。
そのあとの事は上手く思い出せなかった。 他の隊員にしつこく詰め寄られ,疲れきった記憶だけが頭の片隅に残っていた。
丁度その頃,柱が1人引退し空席が出来たと報告が入った。その穴埋めとして当時階級が最高の”甲”だったカナエが候補者として上げられた。カナエ自身、柱になる為に力を振り絞り鬼を討伐し続けた。その成果も出てか,カナエは無事に鬼を50体討伐をして”花柱”として昇格を果たした、その日の事をしのぶは今でも鮮明に覚えている。
カナエが50体目の鬼を討伐した任務から帰りボロボロになり屋敷へ入るや否やしのぶに嬉しそうに柱へ昇格した事を話した。2人は抱き締めあい,これでより多くの人々の命を守る事が出来ると涙を流した。
こうしてカナエは15歳という若さで柱になった