カナエが柱になってからは時間の進みが異様に早くなったとしのぶは感じた。
___ カナエが柱になってどれ程経っただろうか。後に”カナヲ”と名付けた少女を胡蝶家の養女として迎えた。彼女は言われないと何も出来ず、カナエはコインを投げて決める事を提案した。そのため カナヲが見よう見まねで花の呼吸を習得し勝手に最終選別を突破したと知った時には腰を抜かした。そんな何気ない幸せな日々を送っていた、しかし カナエが 柱になってわずか2年もしないうちに悲劇がしのぶを襲った。
しのぶはその日,カナエが任務の為1人で眠っていた。柱でありとても強いカナエの事だ、きっといつもの様に かすり傷 すらせずに朝には戻って来ると思って居た。その時だった,バサバサと鴉の羽の音が聞こえた。その瞬間しのぶは全身から嫌な汗が吹き出し、上体を起こした。鴉の正体は鎹鴉だった。鎹鴉は基本、寝ている隊士には近付かない。余程の緊急事態でない限りは…
その鎹鴉はカナエの鎹鴉で主人であるカナエが危ない状況をしのぶに伝えに来たのだ。しのぶはその報告を受けた瞬間、酷く吐き気がして 直ちに布団から飛び起きて隊服へ着替え日輪刀をもって蝶屋敷を飛び出し鎹鴉の案内に従い走り続けた。 しかしカナエの任務地は屋敷から非常に遠くしのぶがどれだけ懸命に走っても付いたのは夜が明け始めた頃だった。間に合わなかった。 しのぶは今でもあの時もう少し早く来れてれば…と酷く自分を責めている。 到着したしのぶの目に映ったのは地面に血を流し倒れているカナエの姿。そして鼻腔を刺激する鉄の様な血の匂いだった。慌てて駆け寄りカナエを抱く。しのぶの頬に触れたカナエの手は指先から徐々に冷たくなっていく感覚がした。
しのぶはあの日のカナエの言葉と血の匂いを一生忘れる事は無いだろう。
____ カナエはその後、そのまましのぶの腕の中で息を引き取った。最期まで見事な戦いぶりだったと鎹鴉は後にしのぶに語った。 カナエが息を引き取ってから数分もしないうちに隠しが来てしのぶから遺体を引き受けた。