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一日半くらいだろうか、ケイシが城に帰ったのは、門には兵士が何人も死んでいる、
全身から汗が噴き出てブルブルと震えるのが自分でもわかった
城内に入るとなんとか生き残った者達が地べたに頭をつけ泣いている
「殿、殿、お許しを」
「リーシは!」
「ダリンが..連れ去り..何人かで追跡しましたが..殿..」
ケイシは全ての考えを巡らせた
「父様ー!父様ー!」
そこに泣きじゃくるセイカが走ってきケイシに抱きついた
「父様ー、母様がー母様がー」
「大丈夫だ、父様が今から母様を助けにいく」
「私も行きます!母様を助けにいきます!」
ケイシはしゃがみこみセイカと目線を合わせた
「お前はここで弟を守るのが仕事だ、よいな?」
「..はい、わかりました、父様、必ず母様を連れて帰ってくださいね」
「もちろんだ」
直ぐ傍で赤子のユイを抱っこしている侍女に当時の状況を聞き出し、リーシが子供達と自分を守るため自ら犠牲になったと知る
(あの下衆め!普通の殺し方では殺さぬぞ!)
「ケイシ軍!ジーファのダリンを追うぞ!我が妻を奪還するため全身全霊で突撃だ!」
「おお!」
ダリンの馬の跡をなんとか追いながらの追跡だった
(ジーファ国は馬の脚で一月はかかる、きっとまだこの辺りに潜んでいるに違いない、リーシ、リーシ、リーシ!我が最愛の妻リーシ!俺がいなかったために本当にすまない、リーシ!今助けに行くぞ!)
そこからもう暫く進んだところで怪しい茂みを見つけた隠れるには打ってつけの場所だ
ケイシはバッと手で静止の合図を送った
「ここにいる」
ケイシには感じるのだ、最愛の妻の悲痛の叫びが
一瞬不気味な静けさが漂う、そして次の瞬間
「突撃だー!」
茂みの奥にはやはりダリンと配下達がいた、そして縄で括られているリーシの姿が見えた
「リーシ!」
「あなた!」
圧倒的な兵力の差と鬼に化したケイシの姿を見てダリンは負けを瞬時に悟った
「わしはここまでか!ウワハッハ!ならばお前も連れていきそしてとうとうわしのものだ!」
ダリンはリーシの腹を深く深く刺した
「あ、ああ!あー!ああー!」
ケイシは下馬しフラフラと脚がもつれ何度も倒れながらリーシの元へいった
「あ、あ、ああーリーシ、リーシ!」
隣にいるダリンの事などもう頭にはなかった、ダリンの首はケイシの側近が斬った
声が出ない嗚咽..大きく口を開け気が触れてしまったかのようにみえる
リーシは即死だった、最後に最愛の夫と言葉を交わす事もできなかった
ケイシはリーシを抱き抱えただ声も出ない嗚咽をあげている
ケイシ軍一同皆泣き崩れた
カンレイの宝石、ケイシ軍の宝石が死んだのだ、リーシは本当に優しかった、側近達は勿論一般兵士達にもいつも気遣いの言葉をかけていた、
そして我が主の今の姿を目の当たりにし、悲しみにくれない者はいなかった
「殿..リーシ様が寒がっておられます、早く城へ帰りましょう」
涙を堪えながら側近がケイシに言った
「リーシ、リーシ、」
馬に乗る事も今は無理だと判断した側近は言った
「皆で殿のお心が戻るまでここにいるぞ」
どのくらいの時が経っただろうか、もう日は暮れて夜になった
カンレイ全土夜は極寒だ
「殿、殿?リーシ様が寒いと言っておいでですよ、リーシ様が早く城に帰りたいと言っていらっしゃいますよ、殿」
気が触れたようにずっとリーシを抱き抱えユラユラと揺さぶっていたケイシはその言葉で少しハッとした
側近にリーシの身体を預けフラフラしながら馬に乗りリーシを受け取りだいじにだいじに抱き抱えながら城へと帰っていった