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るあさん、第2話読ませていただきました! 夢の中で過去のトラウマと向き合いながらも、「だからって私がここに来ちゃいけない理由にはならない」って踏み出すゆきさんの一歩が胸に響きました。合格後のピンク髪の少女の空気感も不思議で続きが気になります。ゆきさんの緊張と決意が繊細に描かれていて、本当に好きな回でした🌷
「翼くんはすごいね。」
誰かの声が聞こえた。
「やっぱり兄弟でも違うな。」
「結希斗も頑張らないと。」
聞きたくない。
やめて。
『ゆき』
声がした。
振り向く。
そこには翼が立っていた。
「っ……」
そこで目が覚めた。
見慣れた天井。
ゆきはしばらくぼーっとしたまま横になる。
嫌な夢だった。
何度も見たことがある夢。
「……またか。」
小さく呟く。
時計を見る。
まだ朝だった。
重い体を起こしてベッドから降りる。
顔を洗いながら鏡を見る。
いつも通りの自分。
少しだけため息をついた。
でも今日は違う。
今日から結び屋に所属する。
翼がいる場所。
少し緊張する。
でも。
少しだけ楽しみでもあった。
「……よし。」
気合いを入れるように頬を軽く叩く。
今日は始まりの日だ。
ゆきは支度を終えると家を出た。
受付を済ませる。
渡されたカードを握りながら廊下を進んだ。
思っていたより静かだ。
目の前には大きな扉。
新人はこの先へ進むらしい。
ゆきは小さく息を吐く。
そして扉を開いた。
その瞬間だった。
「やっぱり翼くんはすごいね。」
聞き覚えのある声。
ゆきの足が止まる。
目の前には見慣れた教室が広がっていた。
中学生の頃の教室。
クラスメイト。
先生。
そして翼。
「また表彰されたんだって。」
「すごいよな。」
「結希斗も頑張れよ。」
胸が苦しくなる。
知っている。
何度も聞いた。
何度も比べられて。
「兄みたいになれるといいね。」なんて。
やめて。
聞きたくない。
足が震える。
帰りたい。
逃げたい。
扉を閉めてしまいたい。
でも。
ここで帰ったら。
また同じだ。
ゆきは拳を握った。
爪が食い込む。
痛かった。
だから。
これは現実じゃないと。
そう、信じて。
「……知ってるよ。」
小さく呟く。
「翼がすごいことくらい。」
胸はまだ痛い。
苦しい。
悔しい。
それでも。
「だからって。」
ゆきは一歩前へ進んだ。
「私がここに来ちゃいけない理由にはならない。」
次の瞬間。
景色が砕けた。
教室も。
声も。
翼の姿も。
全部消える。
気付けば目の前には本物の扉があった。
静かな廊下。
握ったままのカード。
乱れた呼吸。
「合格です。」
声がした。
ゆきが顔を上げる。
そこには一人の少女が立っていた。
淡いピンク色の髪をした少女が立っていた。
優しそうな笑顔。
けれどどこか不思議な雰囲気をまとっている。
「ようこそ、結び屋へ。」
「今のは……」
思わず尋ねる。
少女は首を傾げた。
「試験ですよ。」
それだけ言った。
まるで当たり前のことみたいに。
「合格です。」
少女はそう言うと歩き出した。
「来てください。」
ゆきは慌てて後を追う。
廊下は思っていたより広かった。
すれ違う人もいる。
誰もが忙しそうだった。
「緊張してますか?」
前を歩く少女が聞いた。
「……少し。」
「大丈夫ですよ。」
少女は振り返る。
優しい笑顔だった。
「皆、始めはそうですから。」
しばらく歩く。
やがて一つの扉の前で少女が立ち止まった。
「こちらです。」
プレートには名前が書かれていた。
黒羽力也。
「失礼します。」
ゆきは部屋へ入った。
机の向こうに座る男性が顔を上げる。
「君が長瀬ゆきか。」
低く落ち着いた声だった。
「はい。」
「座ってくれ。」
ゆきは緊張しながら椅子へ腰を下ろした。
黒羽力也は資料へ目を落とす。
そして。
「試験はどうだった。」
「……正直、嫌でした。」
思わず本音が漏れた。
力也は少しだけ笑う。
「そうか。」
「皆そう言う。」
そして資料を閉じた。
「改めて歓迎する。」
力也は真っ直ぐゆきを見る。
「結び屋へようこそ、長瀬ゆき。」
ゆきは小さく頷いた。
自分がここで何を得るのか。
まだ分からない。
ただ一つ。
もう逃げたくなかった。