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9S視点
敵超大型兵器を自爆攻撃で破壊した僕達はバンカーへと戻るだろう。
僕は自爆直前に2Bのパーソナルデータを全てバンカーにバックアップした。
僕のは間に合わなかったけど…2Bのデータをバックアップ出来たからよかった。
2Bは僕を怒るだろうか。
そんなことを考えながら僕達は互いのブラックボックスを交えた。
気がつくとポッドの声がして僕は目覚めた。
ポッド153「ヨルハ機体9S…再起動完了、おはようございます9S」
僕は自爆して記憶を失うはずだったのに……どうして記憶が残って………
9S「…うんおはよう」
考えても答えが出て来ないなら考えるのをやめて方が効率的だ。
短く返事をし僕は身体を起こす。
すると目の前に2Bがいた。
9S「2B…」
2B「戦闘前に私と9Sのデータをポッド達にお願いしてバックアップしてもらった」
2B「データに不備はない?」
その言葉を聞き僕は一瞬何を言われたのか理解できなかった。
2Bが僕のデータをバックアップしてくれていたなんて…
気にかけてくれていることが嬉しかった。けど同時にこんな疑問が脳内をよぎってしまった。
どうしてB型が…戦闘モデルがデータバックアップを…?
普通ならS型の僕が定期的にメンテナンスを含めバンカーへデータのバックアップをするはずだ。
B型は戦闘モデルだからそういう細かいことは気にかけない機体が多いはずなのに…
僕は考えれば考えるほどに可能性が浮かび上がってきてまた考える、そんな悪循環に一瞬で囚われてしまった。
これもS型の特性なのだろうか。
僕はひとまず思考回路を強制シャットダウンさせ2Bに返事をした。
9S「はい、不備はなさそうです」
2B「そう…ならよかった」
そう言う2Bはどこか不安そうだった。
そんな2Bに見惚れてしまっていた。
9S「あの…2B」
僕が静寂を破り声を上げると2Bは反応してくれた。
2B「なに」
淡々と返事をする2Bは一体何を考えているのだろうか。
9S「僕のデータのバックアップをしてくれてありがとうございます」
そう言うと2Bはいつもより優しい…いや感情の籠った声で呟いた。
2B「9S、貴方はもっと自分を大切にして」
その言葉に驚いた。
ヨルハ部隊はデータさえ残っていればいくらでもバックアップが可能な兵士だ。
何度死んでも蘇る。
だから捨て身の自爆攻撃なんて手段が取れる。
つまり…死んでも敵を壊す、それが僕らの使命…なのに。
それなのに……「自分を大切にしてほしい」なんて矛盾してるじゃないか。
9S「…」
2Bと出会う前の僕ならきっと笑ってその場をやり過ごしていただろう。
でも今の僕は…2Bに救われた“僕”は。
2Bに救われた記憶を、そして2Bを守りたいと言う意志が芽生えていた。
だからだろう僕は迷わずこう答えた。
9S「はい…わかりました」
そう伝えると2Bは立ち上がりドアの前へと歩いていく。
2B「わかったならいい、司令官が呼んでるから一緒に行くよ」
振り返る事なくそう言い残して部屋を出ていってしまう。
僕も慌てて2Bの後を追いかける。
司令部に入ると司令官が僕達を待っていた。
9S「司令官」
僕が声をかけると司令官は振り返り僕達を見た。
司令官「2B…それに9Sか」
司令官「任務遂行お疲れ様、立て続けで悪いが次の任務がある」
司令官「廃墟都市全域で現在機械生命体の動きに変動が見られている、それの調査任務を2人に任せたいんだがいいか?」
2Bが答える。
2B「了解しました」
僕もそれに同調し答えた。
9S「了解しました」
司令官「2B、9Sに飛行ユニットを使用を許可する」
司令官「人類に、栄光あれ」
2B、9S「人類に栄光あれ」
敬礼を終え僕達はデータ取得のためオペレーターさんに聞きに行った。
9S「オペレーターさん、次の任務にあたるためデータを転送してもらえませんか?」
21O「次の任務は廃墟都市全域での調査任務となります、くれぐれも何か行動する際はよく考えてから行動してください」
9S「はいはいわかってますよー」
21O「はいは一回です」
9S「はーい」
21O「では地上降下までのルートのデータの転送を開始します」
僕はオペレーターさんからデータを転送してもらい2Bと共に飛行ユニット格納庫へと向かった。
9S「じゃあ2Bにもデータを共有しますね」
2B「あぁ」
僕は2Bにデータ転送を終えると飛行ユニットに乗り込んだ。
そして飛行ユニット、2Bと共に宇宙空間へと飛び出していった。
地上へ降下する際は敵に襲われる危険性が高い。
だからなのか飛行ユニットには銃火器が搭載されている。
まぁ…使用するには司令部の許可が必要だけどね。
そんなことを考えていると案の定敵が僕達に攻撃してきた。
姿は見えないがきっと目の前にいるのだろう。
高圧力のレーザーが僕達の横を過ぎてゆく。
誘導レーザー攻撃だ。
僕達の飛行ユニットから出されるエネルギーを検知し自動で標準が設定されて一定間隔で発射される新型敵兵器、前回の243次降下作戦時もこのレーザー兵器で2B達の部隊が壊滅寸前まで追いやられたんだっけ。
ホログラム通信画面を開き2Bに通信を繋げる。
9S「2B、敵が誘導レーザー兵器を使用している可能性が高いので僕が敵システムにハッキングを仕掛け一時的にシステムをダウンさせたいのですが…ハッキング中僕を援護をしてもらえませんか?」
2B「了解、ハッキング中の9Sを援護する」
2B「9S、機体制御を私に渡してほしい」
9S「ありがとうございます!ポッド、機体制御権を2Bに移譲して」
僕の飛行ユニットの権限移譲を確認してから僕は敵システムのハッキングに移った。
9S「ハッキング!」
データ空間へ意識を移動させ敵の防壁システムを破壊する。
9S「思ってたよりも単純な構造なんだな…」
「これならばすぐにでもハッキングによるシステムダウンはできそうだ」なんて思いつつシステムのハッキングを続ける。
すると見たことのないデータ空間へのポートが開いていることに気がついた。
9S「これは…」
僕は気になった。ほんの好奇心だった。少しだけ、少しだけならいいだろう。ちょっとデータを覗くだけだ。
自分の欲望を抑えきれず手を伸ばした…その瞬間だった。
ポッド153「9S」
ポッドの声で僕は正気に戻った。
9S「…」
ポッド153「ハッキングプログラムに不備が出ている、速やかな確認」
9S「…わかった」
僕はハッキングプログラムの再確認と実行進度を確認した。
プログラムに不備はない、進度も順調に伸びている。
問題はなかった。
9S「ポッド、問題はないよ」
そういうとポッドは僕に催促をしてきた。
ポッド153「速やかなハッキングによる敵システムのダウン」
9S「わかってるわかってる」
9S「もうじきできるからもう少し待って」
ハッキング進捗データを確認する。
システム掌握率…78%
83…95……97………
99……100%
9S「システム掌握完了、敵攻撃システムの強制ダウンを開始」
僕の命令に従い敵システムは全てダウンしていく。
ついでにプログラムの改変をしておこうかな…
思い立ったが吉日という言葉があるように思いついたならば行動するべきだ。
僕は敵の識別回路を弄り機械生命体をターゲットに設定し防壁プログラムを強化させた。
簡単に言えば敵の兵器をハッキングして僕らの物にしてしまったということだ。
9S「よし…これでいいはず」
9S「ポッド、僕のボディユニットとの再接続」
ポッド153「了解」
データ空間から弾き出され現実世界へと戻ってくる。
9S「2B、敵のシステムのダウンに成功しました」
9S「今のうちに地上へ降下しちゃいましょう」
2B「了解、9Sに機体制御権を返還」
僕の手元に制御権が帰ってくる。
僕達は地上の降下地点へと飛行ユニットで飛んでいった。
降下後オペレーターさんから通信が来た。
21O「9S、無事降下できたみたいですね」
9S「僕にかかればこんなこと朝飯前ですよー」
21O「無駄口はいりません、次は地上にいるレジスタンスと合流してください」
9S「レジスタンス…」 ボソッ
21O「合流後に作戦行動を伝えます」
9S「了解しましたー」
21O「通信終了」
プツリと通信が途絶える。
9S「2B!次はレジスタンスと合流するみたいです」
僕は2Bの名を呼びながら振り返る。
2B「あぁ、そうらしいね」
2B「ポッド、マップにマークをお願い」
ポッド042「了解」
2Bは場所を確認してから「行こう」と言った。
僕達は高いビルの上からポッドを使ってゆっくり地面へと降下していく。
すると2Bが近場のアクセスポイントに向かって歩いていった。
9S「2B?」
2B「アクセスポイントで定期的にバックアップすることは大切」
2B「9Sもするべき」
そう話す2Bはどこか遠いものを見ていた。
僕自身、調査任務でロストすることが多かったからあまりバックアップをする事はなかった。
だからS型の中でもよくロスト(大規模破損)する機体だと思われているのだろう。
9S「そうですね、今までバックアップはあまりしてきませんでしたが2Bとの同行任務ですし…」
9S「僕も定期的にバックアップしようと思います」
僕はアクセスポイントに近づき自身のデータバックアップをとる。
バックアップが完了した。
9S「じゃあ2B、レジスタンスキャンプに向かいましょうか」
2B「あぁ」