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#魔道具職人
こはる
338
742
#異世界転生
しめさば
6,417
第12話: 【ダンボール】工作で異世界を無双してみた【紙芝居】
村には、箱が足りなかった。
ミチルが来てから、物の置き場所は増えた。
フック。
仕切り箱。
袋。
札。
小さな容器。
それでも、人が増えれば荷物も増える。
荷物が増えれば、入れ物が足りなくなる。
ナギは広場の真ん中で、散らばった木片とひもを見下ろしていた。
「村って、完成してからのほうが作業多いな」
カイが眠そうにうなずく。
「建物は作った。暮らしは別」
ミレナが帳面を押さえながら言う。
「記録小屋に棚はあるけど、小物が転がるの。仕切りが欲しいわ」
リクは腰を見ていた。
「スプーン、どこっすかね」
ロッカが言う。
「腰にある」
リクは腰を見た。
「あったっす」
ロッカはため息をつく。
「収納以前の問題だ」
ナギのスマホが震えた。
転生タイムライン。
ダンボール発明家
投稿傾向
ダンボール
発明
乗り物
アニメ紙芝居
ナギは画面を見つめた。
「来るぞ。たぶん箱の人」
ロッカが眉を寄せる。
「箱の人」
カイが少しだけ目を開く。
「建材になる」
ミチルがうなずいた。
「収納にも使えます」
リクが手を上げる。
「叩けるっす」
ロッカが低く言う。
「まず危険かどうかだ」
その時、村の門の前に、平たい茶色の板が一枚落ちてきた。
ぺたん。
続いて、もう一枚。
ぺたん。
さらに十枚。
ぺたぺたぺた。
最後に、人が落ちてきた。
「痛っ……でも、ダンボールが受け止めてくれた」
茶色の作業エプロン。
大きな丸眼鏡。
背中には平たく畳んだダンボールの束。
腰には定規とひも。
その人物は、地面に落ちたダンボールを素早く拾い、角を確認した。
「折れなし。へこみ少し。湿気なし。使える」
ナギはゆっくり近づいた。
「転生者ですか」
その人物は顔を上げた。
「段巻ツクル。ダンボールで発明するUP主です。乗り物、収納、からくり、紙芝居、だいたい作れます」
ロッカは短剣に手をかけた。
「ダンボールで乗り物?」
ツクルは胸を張った。
「作れます」
「走るのか」
「走ります」
「飛ぶのか」
「飛ばないようにします」
ロッカの目がさらに険しくなった。
「飛ぶ可能性はあるのか」
ツクルは少し目をそらした。
「異世界なので、まだ未確認です」
ナギのスマホが震えた。
能力名
ダンボール発明工房
効果
ダンボールを素材に、乗り物や道具を高速製作する。
派生
紙芝居解説
折りたたみ構造
軽量からくり
補正
設計図の分かりやすさ。
折り目の正確さ。
見ている人の理解度。
子ども達の期待。
注意
濡れると弱体化する場合があります。
ダイチがすぐ言った。
「川辺には置くな」
ツクルは深くうなずいた。
「水は敵です」
ハクトが言う。
「火にも注意です」
ツクルはさらにうなずく。
「火も敵です」
リクがダンボールを軽く叩いた。
ぽこん。
「音、軽いっす」
ソウマが録音機を向ける。
「使える」
ツクルは少しうれしそうに笑った。
「ダンボールの音、いいですよね」
ツクルはダンボールを一枚広げた。
「まず、伝えます」
ロッカが少し身構える。
「長いのか」
ツクルは腰から丸めた絵札を取り出した。
「紙芝居でいきます」
マヒロの目が光った。
「声、当てていい?」
「お願いします」
ツクルは絵札を立てた。
そこには、簡単な絵が描かれていた。
村。
荷物。
困っている人。
そこへ現れる四角い箱。
マヒロが声を変えて読む。
「荷物がいっぱいで困った村に、やって来たのは、軽くて強いダンボール!」
子ども達が集まる。
ひなたが笑顔で座らせる。
ツクルは次の絵を出した。
折る。
差し込む。
ひもで止める。
持ち手を作る。
マヒロが続ける。
「切りすぎ注意! 折り目が大事! 濡らすな危険! 火にも近づけるな!」
ロッカがうなずいた。
「分かりやすい」
ミレナが帳面に書く。
「紙芝居で異世界人にも伝わる」
ナギは小さく笑った。
「口だけより分かるな」
ハクトも真面目にうなずく。
「危険な部分が見えるのは大事です」
ツクルはうれしそうにダンボールを折り始めた。
手が速い。
折る。
重ねる。
差し込む。
ひもを通す。
角を押さえる。
一枚の板だったものが、箱になる。
ただの箱ではない。
持ち手つき。
中に仕切り。
底は二重。
側面に名前札を差せる。
「ぱんぱかぱーん」
ミチルが思わず言った。
全員がそちらを見る。
ミチルは少し照れた。
「つい」
ツクルは真顔で言った。
「いい掛け声です」
ミチルは嬉しそうに笑った。
そこから村中が動き始めた。
ツクルは箱を作る。
ミチルは用途を分ける。
カイは置き場所を決める。
ミレナは札を書く。
リクは完成音を鳴らす。
ソウマは紙を折る音を録る。
ひなたは子ども達にも折れる小さい箱を教える。
レンは玩具用の仕切り箱に目を輝かせる。
ダイチは川辺用に高い場所へ置く箱を作らせる。
ハクトは食料の外箱に使えるものと使えないものを分ける。
ロッカはそれを見回し、ぽつりと言った。
「ただのダンボールではないな」
ツクルは折りながら答えた。
「ただのダンボールです。でも、ただの物ほど、使い方で化けます」
ナギはその言葉にうなずいた。
この村では、それがよく分かる。
ただの桶。
ただの玩具。
ただの家電。
ただの便利グッズ。
ただの言葉。
全部、使い方で力になる。
昼前。
ツクルは広場の端に、大きなダンボールを並べ始めた。
ナギは嫌な予感がした。
「何を作るんですか」
ツクルは目を輝かせた。
「乗り物です」
ロッカが即座に来た。
「危ない」
ツクルはうなずいた。
「だから紙芝居から入ります」
マヒロが前へ出る。
「任せて」
絵札が開かれる。
一枚目。
荷物を運ぶ村人。
二枚目。
疲れる村人。
三枚目。
ダンボールの車。
四枚目。
みんなで押す。
五枚目。
坂では使わない。
六枚目。
川辺では使わない。
七枚目。
乗る前に確認。
マヒロが張り切って読む。
「ダンボールカーは便利だけど、ふざけて乗ると危ない! 速さより安全! 荷物を運ぶための道具です!」
レンが少しうずうずしている。
「レースには?」
ツクルとロッカが同時に言った。
「使いません」
レンは教官車を抱えてうなずいた。
「はい」
ツクルは作り始めた。
大きな箱を重ねる。
丸い筒を車輪にする。
内側に補強を入れる。
ひもで引けるようにする。
底に滑りをよくする板を入れる。
カイが横から補強を足す。
「ここ、弱い」
ツクルがすぐ直す。
「助かります」
ミチルが札を貼る。
荷物用
人は乗らない
坂道注意
リクが完成音を鳴らす。
ぽこん。
桶が言った。
「完成してえらい!」
子ども達が拍手した。
荷物を入れて引いてみる。
軽い。
村人の顔が明るくなる。
「豆袋が運べる」
「水くみ道具も」
「薪もいける」
ダイチが言った。
「川辺まで運べるなら助かる。ただし、ぬらすな」
ツクルは即答する。
「ぬらしません」
その時、見張り台のロッカが森の方を見た。
「音がする」
全員の手が止まった。
森の奥から、ばさばさと葉が揺れる音。
何かが走る音。
さらに、きしむような鳴き声。
ハクトが地面を見た。
「小型ではありません。中型。三体」
ロッカが短剣を抜く。
「来るぞ」
ツクルはダンボールカーを見た。
ナギはそれに気づいた。
「まさか、戦う気?」
ツクルは首を振る。
「逃がす気です」
「何を?」
「村人と荷物」
森から魔物が現れた。
細長い体。
大きな前足。
跳ねるように走る。
背中には硬い板のような殻。
一体が村の門へ向かう。
もう一体は川辺の道へ。
三体目は倉庫の方を見ている。
ロッカが叫ぶ。
「散るな!」
レンが教官車を出す。
リクが音を構える。
マヒロが歌を始める。
カイが壁を作る。
ミチルがかごを抱える。
ハクトが位置を見る。
ダイチが川辺への道を塞ぐ。
ソウマが音源小屋から小さなノイズを鳴らす。
ひなたが子ども達を避難させる。
ツクルはダンボールを広げた。
「紙芝居、いきます」
ロッカが叫ぶ。
「今か!」
ツクルは絵札を掲げた。
一枚目。
魔物が来る。
二枚目。
みんな慌てる。
三枚目。
ダンボールの壁。
四枚目。
逃げ道。
五枚目。
分かりやすい矢印。
マヒロが即座に声を当てる。
「魔物が来たら、まず道を見る! 逃げる人と守る人を分ける! 矢印を見る! 走りすぎない!」
村人達が絵を見る。
子ども達も、矢印を見る。
混乱が少し減った。
ナギは息を吸った。
「お題! 急な避難で一番助かるダンボールとは!」
魔物が迫る。
ナギは答えた。
「見ただけで行き先が分かる、親切すぎる箱!」
ダンボール箱の側面に、大きな矢印が出た。
避難所はこちら。
倉庫はこちら。
川辺は今だめ。
子どもはこっち。
箱がぴょこぴょこと少し動き、道を示す。
ロッカが目を丸くする。
「箱が案内している」
ミチルが感動している。
「収納と案内の組み合わせ……」
カイがすぐに道を作る。
こん。
ツクルはダンボールカーに荷物を積む。
「食料を下げます!」
ハクトが手伝う。
「軽いものから。重いものは下に」
ダイチが引く。
「任せろ」
リクがリズムを刻む。
とん。
ぽこん。
とん。
ぽこん。
ダンボールカーが軽く進む。
だが、魔物の一体がそれを見つけて突進してきた。
ロッカが走る。
間に合うか微妙。
ツクルはダンボールを一枚つかむ。
折る。
立てる。
差し込む。
一瞬で、薄い壁ができた。
魔物がぶつかる。
壁はへこんだ。
だが、衝撃を吸った。
ツクルは後ろへ転がる。
ナギが叫ぶ。
「ツクル!」
ツクルはすぐ起き上がった。
「へこみました。まだ使えます」
「そっちの心配か!」
ソウマがつぶやく。
「いいへこみ音」
ロッカが魔物を横へ誘導する。
レンの教官車が前へ出る。
ぴ。
この先、工事中。
魔物が少し止まる。
ナギはすぐに叫ぶ。
「お題! ダンボール壁を見た魔物が、急に慎重になった理由とは!」
答える。
「壊したら自分で組み立て直さないといけない気がした!」
魔物の動きが鈍る。
ダンボール壁を見る。
自分の前足を見る。
また壁を見る。
その顔は、少し面倒そうだった。
ロッカが横から追い払う。
リクの音が足を乱す。
マヒロの歌が村人を落ち着かせる。
カイの壁が進路を森へ向ける。
ツクルはさらに大きなダンボールを広げた。
「乗り物、もう一段階いきます」
ナギは不安になる。
「今度は何?」
「避難用スライダー」
ロッカが叫ぶ。
「滑るな!」
ツクルは紙芝居を出した。
マヒロが読む。
「急いで逃げる時は、転ぶより滑る方が安全な場合があります! ただし一人ずつ! 押さない! 途中で立たない!」
ミレナが言った。
「紙芝居がないと危なかった」
ツクルはダンボールを斜めに組む。
カイが支える。
ミチルが滑り止め札を貼る。
ひなたが子ども達を順番に座らせる。
するん。
子どもが安全な場所へ降りる。
「もう一回!」
ひなたが優しく言う。
「避難だから一回ね」
桶が言った。
「一回でえらい!」
最後の魔物が、スライダーへ向かってきた。
ナギは前へ出る。
「お題! 避難用スライダーに突っ込んだ魔物が困った理由とは!」
答える。
「思ったより安全設計で、ちゃんと順番待ちさせられた!」
魔物の前に札が出る。
一列に並んでください。
魔物は止まった。
周囲を見た。
列を探した。
なぜか最後尾を探した。
ロッカがその間に横から追い立てる。
「森へ帰れ!」
教官車がぴっと鳴る。
出口はこちら。
カイの道が開く。
リクの音が背中を押す。
ソウマのノイズが森の方へ流れる。
マヒロの声が村側へ戻る気を削る。
三体の魔物は、ダンボールの案内と道に誘導され、森の奥へ逃げていった。
広場に静けさが戻る。
ダンボール壁はへこんでいた。
スライダーは少し曲がっていた。
ダンボールカーは泥だらけだった。
でも、壊れきってはいない。
ツクルは一つずつ確認する。
「修理できます」
ロッカが短剣をしまった。
「使えるな」
ツクルは顔を上げる。
「はい」
「危ないが、使える」
「そこは否定しません」
ナギは笑った。
「ロッカが認めた」
ロッカは顔をそむけた。
「安全を伝える紙芝居があったからだ」
マヒロが紙芝居を掲げる。
「私の読みがよかった?」
「それもある」
マヒロは目を輝かせた。
「褒めた!」
ロッカは黙った。
桶が言った。
「褒めてえらい!」
ロッカは桶を見ないふりをした。
夕方。
村には、新しいダンボール道具が増えた。
荷物運び用のダンボールカー。
子ども用の工作箱。
音源小屋の防振箱。
玩具の整列ケース。
食料外箱。
紙芝居台。
避難案内箱。
折りたたみの簡易椅子。
川辺から離して置く乾いた道具箱。
ツクルは全部に札を貼った。
ぬらさない。
火に近づけない。
重すぎ注意。
乗らない。
一人ずつ。
使ったら直す。
ミレナがそれを見て言う。
「注意書きが多い」
ツクルはうなずく。
「発明は、注意書きまでが発明です」
ハクトが静かに言う。
「命に関わりますからね」
ミチルも笑う。
「使い方が書いてある道具は強いです」
カイはダンボールカーを見ながら言った。
「建築とは違う強さ」
ツクルはカイを見る。
「大きな物は作れないけど、軽くてすぐ直せます」
カイはうなずいた。
「それも強い」
夜。
広場では、紙芝居が始まった。
ツクルが絵札をめくる。
マヒロが声を当てる。
リクが効果音を入れる。
ソウマが音を録る。
ひなたが子ども達と笑う。
レンの教官車が、紙芝居台の横でぴっと鳴る。
ダイチは木製カップを持って聞いている。
ハクトは危険な部分だけ補足する。
ミチルは道具のしまい方を実演する。
カイは紙芝居台の角度を少し直す。
ロッカは見張り台から聞いているふりをしながら、しっかり見ている。
ナギはスマホを開いた。
転生タイムライン。
ダンボール発明家
映像には、ツクルが箱を作る姿。
紙芝居で村人に伝える姿。
ダンボールカーで荷物を運ぶ姿。
避難用スライダーで子ども達を逃がす姿。
魔物を案内と順番待ちで追い払う姿が映っていた。
コメント欄が流れる。
段巻ツクルきた!
ダンボールで異世界防災してる。
紙芝居うまい。
マヒロの声当て合ってる。
ナギの順番待ち大喜利、強すぎ。
ダンボールは濡らすな。
ロッカが認めた!
ツクルはコメントを見て、少し目を細めた。
「見てるんですね」
ナギはうなずいた。
「見てる」
コメントが続く。
帰ってきたら新作待ってる。
ダンボールカー作りたい。
安全第一で頼む。
ツクルはダンボールの端を撫でた。
「安全第一」
遠くで名札が叫んだ。
「安全第一!」
皆が笑った。
ツクルも少し笑った。
「いい村ですね」
ナギは村を見た。
変な村だ。
大喜利で動く。
桶がしゃべる。
音が魔法になる。
玩具が教官になる。
便利グッズで暮らしが変わる。
ダンボールで避難路ができる。
でも、いい村になってきている。
スマホがまた震えた。
次の転生者を準備中。
投稿傾向
魔改造
モルモット
玩具融合
最新AI
ナギは画面を見たまま固まった。
レンがのぞき込む。
「玩具?」
ミレナが読む。
「魔改造……モルモット……最新AI……」
ロッカが見張り台から降りてくる。
「嫌な予感がする」
ツクルはダンボールを畳みながら言った。
「防壁、増やします?」
カイが即答する。
「増やす」
ミチルもかごを握る。
「収納では済まなそう」
ハクトは森の方を見る。
「生き物か玩具か、まず確認が必要ですね」
ひなたは子ども達を抱き寄せる。
「次は、少し怖いかも」
ナギはスマホを閉じた。
「お題、考えたくないな」
桶が小さく言った。
「考えなくてもえらい」
夜風が、ダンボールの端をかすかに鳴らした。
かさ。
その軽い音の向こうで、転生タイムラインは次の投稿を準備していた。
コメント
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みぅ🤍🥀です。第12話のダンボール回、めっちゃ好きだった…! ツクルが紙芝居で安全を伝えるスタイル、めちゃくちゃ丁寧ですごくいい。ナギのお題回答で魔物が「順番待ち」しちゃうところ、思わず笑った。ダンボール壁が衝撃吸うシーンもツクルの職人感あってかっこよかった。次回予告の「魔改造」「モルモット」…ちょっと怖いけど楽しみにしてます🌙