テラーノベル
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たとえ劣悪な環境だったとしても、人は殺人を犯さない。例え頭が真っ白になって逆恨みで殺したとしても、大体の人は反省する。
中には自分を正当化して、殺したことが正しいと思い込むかもしれない。とはいえそのような思考だとしても、人はまた殺人を起こしたがらない。なぜなら一度捕まったことを経験し、大概の人間は二度と捕まりたくないと思うからだ。
だが例外も存在する。一度殺人を侵したことがあり、快感を感じてしまったら人は殺人を繰り返す。自分の快感に従って彼らは、次々と人を殺す。
彼らには人間を肉としか見えなくなり、やがてエスカレートしていく。
レイス・ドレインも劣悪な環境で育った。彼が生まれた時は大飢饉が発生しており、たとえ生まれたとしても三歳になる前に死んでしまう貧しい環境だった。
食べるのもやっとで、食料がない時は人や動物の肉を食べていた。それを見た彼は信じられない目つきで眺めていた。しかし、腹が減っては戦はできぬ。共食いが横行した中、彼は初めて人の味を知る。
それから彼を叱る人がいないために、倫理観が欠如していった。人のものを勝手に盗んだり、平気な顔で人を何度も刺した。そして肉を貪り食った。
彼は父と母の顔も知らない。愛し方も全く知らないので、全て殺人で済ませていた。
そんな彼が一番したいことといえば、誰かを愛することだ。彼は全く愛を知らず、快感に沿って生きてきた。だが、実際のことを言えば愛について知りたかった。
「やあ、こんにちは」
血まみれのナイフを握りしめた状態で、男の子に向かって話しかける。顔も真っ赤に染まり、彼の手の中には首が折れた人を握りしめていた。
少年はその様子に怯えているようだった。彼は笑顔のまま話しかける。
「大丈夫、怖くないよ」
「ひっ……」
「ねえ、君の名前は?」
「マ、マオ……」
「マオくんか。いい名前だね。お兄さんと二人で暮らさない?」
「は、はい……」
レイスは少年の手を握りしめ、そして自分の部屋に連れて行った。この少年のことなら愛することができるかもしれない。なぜならとても優しそうな雰囲気がしたから。
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