テラーノベル
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パッチリと目覚めると部屋の中は薄暗くて、まだ夜中だった。傍には私の手を掴んだままのルティが眠っている。その姿にドキッとしたけれど、零れ落ちる涙を見てそっと涙を拭った。
寝顔はあどけなくて、少しだけ幼く見える。眉を寄せて辛そうな姿を少しでも和らげようと目元にキスをして、おまけで額にもキスして見た。悪夢が見なくなりますように、と祖国のおまじないだ。
(さっきのって意識共有……? 《片翼》だから魂が惹かれ合った感じなのかしら? ブリジットの時はなかったのではなく……魂が触れ合うほど心の距離が遠かった? それとも気づかなかった?)
色々考えている間に喉が渇いたので、飲み物と軽食を準備しておこうとベッドから起き上がった。
「ルティ、すぐ戻りますからね」
頬にキスをして、そっと部屋を出た。階段側の窓から差し込む満月は、とても大きくて綺麗だった。カシミロ殿下たちも各々の部屋で休んでいるのだろう。一階には誰もいなかった。大きめの水差しに、檸檬とオレンジそれと蜂蜜とちょっぴりの塩を混ぜる。水分補給にちょうどいいわね。
(うーん、少し小腹も減ったし軽食を。フルーツにするか、チーズとか燻製とか食べられる物……)
キッチンで悩んでいると、カタンと音に振り返る。
(誰か起きてきた?)
「……シズク!」
「ルティ、目が覚めたんで──ゲフッ」
タックするような勢いで、ルティは私を抱きしめ──いやこれ確実に捕獲みたいな感じなのは気のせいではなさそうだ。
「あんなキスしておいて、私を放置するなんて酷い人です」
「(あんなキス? ……ハッ!?)もしかして起きていたの!? いつから!」
「シズクが涙を拭いてくれた時ぐらい」
「ほぼ最初から!?」
ルティはぎゅうーーーっと抱きしめつつも、どさくさに紛れて頭や頬にキスをしてくる。もはや遠慮もなにもないわ。
「シズクから唇のキスですよ? 気付きます。寝たフリをしていたら、あんなにキスをしてくれるなんて思いませんでしたし……。でも現実だって実感したら、嬉しすぎて、夢じゃないって確認したくて、部屋で待っているのができませんでした。他のことなら我慢できるのに、シズクのことになると私は……自分が上手く制御できません」
「んー、制御する気がないとかではなくて?」
「違います。本当はこれでも結構我慢していているのですからね。実際はもっといっぱいシズクに触れたいですし、キスだって痕を残したい……それ以上のことも……」
(赤裸々すぎる!)
テンションは高いし、明るい口調だけれど、ルティの指先は震えたままだ。私が転生して、この世界に戻ってくるか分からないまま、三百年以上待っていた。
「約束した通り、勝手に居なくなったりしませんよ」
「……っ、本当に?」
掠れた声に泣きそうになる。
「はい。……ルティはルティで、一人で無茶しないで、私に相談してくださいね?」
「ええ……。そうします……シズクとずっと……寄り添って、他愛のない話をして、一緒に食事や散歩して……暮らしたいってずっと願っていたことが、やっと叶ったのですから」
コツン、と額を合わせるルティはポロポロ涙を流しながら笑った。鼻先が触れて吐息が掛かる距離で、唇にキスしようとするルティの唇を片手で覆って防いだ。
「ふがが(シズク)?」
「今キスしたら、水分補給がだいぶ先になる予感しかしなかったので、まずはグラス一杯飲みましょう」
「ここは完全にキスの流れでしたでしょう。酷い人です」
「じゃあ、触れるだけのキスで止まりました?」
「無理です」
即答である。私は脱力しつつ二人分のグラスに柑橘水を注いだ。
「はい。ルティもたくさん泣いたのですから、ちゃんと飲んでくださいね」
「うん……。シズクとのキス……」
落ち込み方がおかしい。チラチラと目配せをしているので、全力で無視しても良いと思う。その場合180%の確率で、凹む気がする。現在進行形でかなり拗らせているし……。
「ルティ」
「……ちゃんと飲むから──ん」
(不意打ちのキス成功!)
面白いぐらい固まっているので、チュ、チュ、と唇にキスを試みる。今世でのファーストキスはもっとロマンティックな感じを夢見ていたけど、こういうのも悪くない。
そのままリビングのソファに水差しごと持って移動する。ルティは固まっていたけれど、すぐに追いかけてくると思い、座ってからグラスに口をつけた。
達成感を味わいつつ、柑橘水を口にする。ヒンヤリして、ほどよい蜂蜜の甘みと檸檬とオレンジの味わいが美味しい。もう一杯飲もうと水差しに手を伸ばしたのだが、その手をルティが掴んだ。
「シズク」
「ルティもちゃんと飲んでくださいね」
「もう十分飲みましたよ」
耳元で囁く甘い声にドキリとしてしまう。しかも私がルティを好いていると宣言して、両思いで過去のことも夢で見たことで謎が解けて──。ふと疑問を思い出す。
「そういえば、ルティはどうして《片翼殺し》と呼ばれているのですか? 私を殺そうとしたのは性格の悪い幼馴染みと義弟で、最終的に私の自殺だったかと」
「……この雰囲気でその話を持ち出すなんて……」
「ルティ、答えてください」
熱の帯びた眼差しをブリジットは、よく知っている。ルティ──ヴィクトルが私に触れて安心したいように、私だって謎を謎のままにしたくない。
「……あのままブリジットが自殺したら、『やっぱり呪われた《片翼》だった』だと周りが思いかねない。そしてそれは後世まで語り継がれる可能性があったので『ダニエラが嫉妬のあまりブリジットを洗脳して、国王を殺そうとしたため、咄嗟に私が《片翼》を殺してしまった』という大罪を被る形でブリジットを『呪われた《片翼》』から『悲劇の《片翼》』に印象操作を行った。もう一つはどんな形であれ《片翼》を守れなかった。その罪を形として残しておきたかったのです」
そう告白するルティは、私と再会するまでどれだけ自分を責めてきたのだろう。
コメント
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第39話読みました…もう、ずっと胸がぎゅっとしてた😢💞 不意打ちキスのシーン、シズクの「今世でのファーストキスはもっとロマンティックな感じを夢見てた」って心情が可愛すぎて笑ったけど、その後のルティの「《片翼♡♡♡》の真相」が重くて泣けた…。自分を罪人に仕立て上げてまでシズクを守ろうとした300年の想い。震える指先が全部物語ってた。 甘くて切なくて、凄く好きな回でした。続きも大事に読みます🌙🤍
#恋愛
#長編