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わをん
85
M_Yuzu
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コメント
6件
かわいいやりとりだこと🤭

突然のコメント失礼します。 にゅうひん✩さんの描くいわあべが大好きです。何度も読み返しています。続きも楽しみにしています!
オフの日の早朝。
海が見たいと言う阿部の呟きに従って、2人は車で都内を出発した。
時折、渋滞に巻き込まれながら高速を抜け、しばらく走ると、道路沿いに海が見え始める。
「海だ〜」
車窓の景色に阿部が楽しそうに言う。岩本はそんな阿部の様子に目を細めた。
途中、人気店なのか、行列の出来ているカフェを見かけた。
並んでいるのは女性が多い。
「…阿部ってさ、女子と付き合ったことあるの?」
岩本は、ふと湧いた疑問を口にした。
「あるよ」
サラリと阿部が答える。
一瞬の間。
「え、あるの?」
「うん、あるよ」
聞き返すと、再び阿部は言う。
沈黙。
「…え、どうてぃ」
「童貞じゃねーわ」
岩本の言葉を遮って、阿部は笑った。
「何、急に」
「いや、え、いつ?いつ頃?高校時代?」
岩本は更に質問する。
「大学の時」
阿部が答えると、再び彼は黙り込んだ。
「…阿部は、その頃、俺が好きだったんじゃ無いの?」
しばし考えた後、一応確認する。
「そうだね。ひかるのことが好きだったよ」
「でも女子と付き合ったってこと?」
阿部は、ちらりと岩本を見る。
彼が少し機嫌を損ねたのが分かり、苦笑した。
「えぇ…浮気じゃん…」
「いや、浮気…では無いでしょ」
浮気か?と一瞬考えて、阿部は答える。
「何人?何人と付き合ったの」
「まだこの尋問続くの?…2人だよ」
「………」
尋ねておきながら、ついに岩本は黙り込んだ。
「過去のことに嫉妬されても」
呆れたように阿部は言う。
「阿部からいったの?」
「いや、告白されて」
答えて阿部は、その頃に思いを馳せる。
けれどどれだけ記憶を探っても、彼女達の顔は思い出せなかった。
「…付き合ったら好きになれて、忘れられるかもと思ったんだよね」
窓の外に目をやって、ぽつりと言う。実らない恋だと思っていたから、早く諦めたかった。
「ひかるのこと、諦めなきゃって思って」
でも結局、諦めることなんて出来なかった。
自分を好きだと言ってくれる相手と、手を繋いでも、キスをしても、セックスまでしても、岩本への気持ちが断ち切れなかった。
「…どれくらい付き合ったの」
「2人とも半年くらいかな。で、俺がフラれたの。”優しいけどつまんない”、”私のこと好きじゃないよね”って、2人とも同じ事言って」
阿部は苦笑する。が、すぐ真顔になり、分かっちゃうんだねぇ、と呟いた。
「今思うと、俺ってクズだね。好きでもないのにセックスまでして。フラれた時は、ホッとしたし」
「まあまあクズだね。いや、間違いなくクズ」
阿部の言葉に岩本は、ここぞとばかりに言う。
「しかも顔も名前も覚えてない」
「うわあ、クズの発言だ」
いやホントにね、と阿部は苦笑いで言った。
「…あの子達の時間、無駄にして悪かったなあ」
「向こうは今、お前を見るたびに、つまんない奴だったって言ってんだろうな」
「…ひかる、さっきからめっちゃ言うじゃん」
阿部は、口を尖らせ不満げに言う。
「ひかるは俺の味方であれよ。なんで彼女達側なの」
岩本は声を上げて笑い、不貞腐れる阿部の頭を軽く撫でた。
「で、その2人の後は、誰とも付き合わなかったんだ?」
「そうだね。告白されても断った。お互い無駄な時間になると思ったから。だから、」
阿部は岩本を見て、にっこりと微笑む。
「その頃からずっと、ひかるのことだけ好き」
そして言った。その言葉に岩本の表情が、だらしなく弛む。
「そっか」
言葉少なに返したが、声音に喜びの感情が溢れていた。
「でも、阿部は良く我慢したよね」
岩本は改めて思って言った。自分なら気持ちを隠して、友達の顔をして、そんなに長い間耐えることが出来ただろうかと思う。どこかのタイミングで諦める選択をしたかもしれなかった。
「執念深いよね」
阿部は自虐っぽく言う。
「一途なんだよ」
岩本は言った。
その言葉に阿部は、胸の奥が温かくなるのを感じ微笑む。今までの時間を肯定された気がした。
切なくて、苦しくて、どうすることも出来ない気持ちを持て余していた過去の自分を思い出す。もしあの頃に戻れるなら、自分を抱きしめていってやりたい。
その気持ちは必ず報われるから、と。
「ねえ、ひかるは?ひかるはいつ、俺を好きだと思ったの?」
阿部は、ずっと聞きたかった事を聞いてみた。聞かれて岩本は改めて考える。
「いつ、ってのは正直なところ分かんない」
そしてそう言った。
「阿部のことは、友達として、仲間として好きだったんだよ。けど、いつの間にか”あれ?これなんか違うな”って、なってた」
自然と目で追って、笑ってくれると嬉しくて、自分以外と仲良くしてるのがなんだか嫌で。
「でも、自覚してからは、隠さないとって思って。だから必死にみんなと同じにしないとって、頑張ったんだけど…そういえば、ふっかにはすぐバレたんだよね」
唐突に”阿部ちゃんのこと好きだろ”と突っ込まれた時の衝撃は忘れられない。
あまりにも狼狽えてしまい、誤魔化し切れず、語るに落ちた。
それでも、彼にはバレて良かったと思う。相談にも乗ってくれたし、いろいろ気を利かせてくれたから。
「ふっかは、他人のこと興味ないようでちゃんと見てるからね」
気の置けない同期を思って、阿部は微笑む。
「でも、俺もその時、ひかるの気持ちに気づけたらなあ。そしたらもっと早く、好きって言えたのに」
「これから、今までの分も言えば良いよ」
岩本が穏やかに言う。そうだね、と阿部は返した。
それから、あ、そうだ、と呟く。
「ねえ、ついでだから、これも聞きたい!俺のどこが好き!?」
そして、前のめりに聞いた。
突然の質問に、岩本は照れ臭くなり視線を泳がせる。
「えっ?いや…色々…あるけど、……あ、ほら、着いたよ」
砂浜へ降りられる駐車場を見つけ、彼は話を逸らした。
車を停め、そそくさと降りる準備をする。
「行くよ」
「もう〜」
答えを誤魔化されて、阿部は口を尖らせながら、シートベルトを外して車を降りた。
「教えてくれたって良いじゃん」
「そんなの一言じゃ済まないから。あとで、あとで」
食い下がる阿部に、笑って岩本は言う。
そして、隣に並んだ阿部の手を取った。
阿部はちょっと驚いた顔をして、それでも一瞬後には笑顔になって、手を握り返す。
寄せては返す、波の音だけが聴こえる静かな砂浜へ、2人は肩を寄せ合い降りていった。