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広い空間に漂っていた強大な魔力が消える。
消えていった魔女に向けていた杖を構えていた腕の力が抜け、だらりと杖を下ろすニティア。
「ステラ様!」
全員が唖然とし立ち尽くす中、奥に続く通路に視線が行ったエラリスがそう叫ぶと、そのまま奥へと走り出していった。
緊張が一気に解けた他のメンバーもその発言に頭のスイッチが切り替わり、エラリスに続いて走っていく。
薄暗いはずなのに薄暗く感じない。先ほどの戦いで身体は火照っているはずなのに、不快に感じない。そんな不思議な通路をしばらく走り続けた後、視界が一気に開けるような空間に辿り着いた。
「ここは……?」
ドーム型の広い空間。中央に見えるのは祭壇らしき台座。エラリス達が立っているドームの入り口からは、その中央へ続く一本の道のみ。
そして、その中央のエリアから、複数に分かれた道があり、それぞれその先にも小さな台座が設置されていた。
「はぁ……はぁ……不思議な構造をしてますね……」
体力が無いアルテアが膝に手をつき、息絶え絶えにあたりを見回す。
「とりあえず行こう」
ルシオが中央に向けて歩き始め、皆がそれに続く。
「荒れた様子もない……魔女はここで何を……」
中央の台座まで辿り着いた5人。その台座を見ても、遠目でそこから続く他の台座を見ても、特に荒らされたり壊れていたりしている様子もない。
中央の台座をくるりと見回してみても、特に特別な何かがあるわけでもない。ただ何も記載されていない石板が置かれているだけである。
「おーい」
皆が中央の台座を調べている中、中央から延びた細い道をさらに奥へと進んだ、入口とは反対側に置かれている小さな台座。その台座を調べていたフィニスが手を挙げていた。
皆がフィニスの元へ近づくと、小さな台座の前に置かれた石板を指差した。
「中央の石板には何も書かれていなかったよな?」
全員がフィニスの指に釣られ、小さな石板に視線を落とす。
【種子を運び、生命の息吹を世界に吹き込む者】
「何でしょうか……」
「分からん。他のところも見てみるか」
他の4箇所の台座を確認する為、エラリスがその場に残り、各々が別の台座の元へと足を運ぶ。
「【生命の源にして、命を守り育む者】と書かれています」
「こっちは【生命を育み、世界の礎を築く者】ってなってるな」
アルテアとルシオが皆に聞こえる様に石板に刻まれた文章を読み上げる。
「【刺激と変転をもたらし、世界に躍動を与える者】だって」
「【熱を生み、世界を動かす力となる者】だとさ。全く分からん!」
続けてニティアとフィニスが文字を読み上げる。4人が読み上げた文章と、自分の手元にある文字を見て考えるエラリス。
【その奥にはステラ様の祭壇がある……でもここに来る過程と同じで、ボクらがいないとステラ様は呼べないはず……】
ここにきた時のリヴァレーのセリフを思い出し台座に手を翳す。
「……そういうことね」
翳した手に魔力を込めるエラリス。ピカッと翡翠色の輝きを周囲に撒き散らし、台座の上にゼフィリアを召喚した。
「種子を運び、生命の息吹を世界に吹き込む者。あなたでしょ?」
ふわふわとその場で飛んでいたゼフィリアが、台座の上に着地する。
『ちゃんと来れたんだ。それじゃ……後はもう分かるわよね?』
ゼフィリアの言葉に小さく頷くエラリス。
「うん」
エラリスが台座のひとつに精霊を呼び出したことで状況を理解し、中央に集まるフィニス達一同。
ちょっと待っててねとひとこと残し、エラリスは次の台座へと向かった。
コツコツと響き渡るエラリスの足音。次に向かった台座の前でエラリスが再び手を翳し、強い瑠璃色の光を発生させる。
『お前達、大丈夫だったか?!ステラ様は!?』
台座の上に現れたリヴァレーが、キョロキョロと周りを見渡す。
「生命の源にして、命を守り育む者」
目の前のエラリスの言葉にハッとし、冷静さを取り戻すリヴァレー。
「魔族は1人だけだけど倒したよ。その後魔女と共に他の魔族も消えちゃったけど」
『そうか……ひとまず祭壇が壊されたりしてなくて安心したよ。あとはステラ様に聞いてみよう』
「そうだね」
そう笑うと、リヴァレーに背を向けて次の台座へと向かった。
「生命を育み、世界の礎を築く者」
黄金色に輝く光と共に現れたのはモラティ。
『よくここまで来れたな』
「フィニス達と……貴方達精霊のおかげだよ」
『まだ終わりではないぞ』
「うん。分かってる」
小さく頷いたエラリス。そのまま振り返り、次の台座へ。
「刺激と変転をもたらし、世界に躍動を与える者。これはあなたよね?」
菫色の光と共に現れたのは、台座の上には乗りそうもない大きさのライナ。
「う……うん……。ってことは……私も小さくならないと……ですね……」
バチバチ
身体から幾度となく放電をした後、台座の上に浮かぶライナが徐々に小さなぬいぐるみの様な姿へと変わっていき、台座の上へと着地した。
後ろの方からアルテアの可愛いという声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
「そっちの姿も似合ってるね」
『人間と話すの……苦手だから……あの姿の方が人間も近寄ってこないし……』
「そうだったんだ。それなのについてきてくれてありがとね」
『わ……私の方こそ……あり(バチバチッ)』
肝心なところがいつも聞き取れないライナにくすりと笑うエラリス。
そして、最後の台座へと足を運ぶ。
「熱を生み、世界を動かす力となる者」
紅の光を纏わせながら現れたのはニック。
『うぬ。妾もこの台座に座るのは初めてじゃの』
一度だけ翼を大きく羽ばたかせると、ライナ同様に徐々に身体が小さくなっていくニック。小鳥のような愛らしい姿へと変わってゆく。
後ろの方から興奮したアルテアの声が聞こえた気がしたが、気のせいだと思うことにした。
『威厳が無くなるからあまりこの姿は好みではないのじゃがな……』
「かわいいじゃん」
『やかましいわ』
5体の精霊を台座に召喚したエラリス。ニックが台座へと降り立った瞬間、それぞれの台座が強く輝き出し、中央へ向かって光が集まっていった。
「うぉ!なんだこれ!?」
突如迫り来る光に驚くフィニス。その光が中央の石板へと集約されていく。
ピカーッ!
強い光と共に現れる文字。
「石板に文字が!」
エラリスがみんなの元へ合流をし、石板に刻まれた文字を読み上げる。
「すべての生命の循環を司り、世界の存在を繋ぎ止める者……」
エラリスが言い終えると同時に、中央の台座から大きな光の塊が上空へと打ち上げられ、輝きを増してゆく。
『みんな……無事に辿り着けたようですね』
コメント
1件
うわっ、やっと来たか!って感じの112話だったな。戦闘後の静かな謎解きパート、めっちゃ好き。エラリスが精霊たちをひとつずつ台座に呼び戻していく流れが丁寧で、それぞれの属性と役割がリンクしてるのが美しい。ライナが小さくなるシーンとニックの「威厳が無くなる」ってツッコミ、クスッときたわ。アルテアの興奮した声が聞こえた気がするけど気のせいって処理、笑った。ステラ様の石板、ようやく文字が浮かんだし、次が楽しみすぎる🔥