死ぬ前の、生きている時からずっと考えていたことがあった。
死んだら私はどうなってしまうのだろう。
親や友達はどんな反応をするのだろう。
葬式が開かれたりするのかな。
生まれ変わることってできるのだろうか。
平凡な日々を過ごしながら漫画のようなことを考えていた。
私が死んだ日
夏のある雨の日に私、|遠野莉々《りり》はいつも通り学校に登校していた。靴は雨でびちょびちょになってしまい、かばんに替えの靴下いれていたかな、と考えながら学校に向かっていた。
人が死ぬ時は案外あっけなくて、でもそんなことその時の私にはわからなかった。
私の死に方はよくある死に方だった。
信号無視をして突っ込んできた車に轢かれた。
見ていた人達が、すぐ救急車を呼んでくれて運ばれたけれど重症で間に合わなかった。そのまま息を引き取った。
らしい。
私は実際に見ていないので詳しいことはわからないが、為す術もなく死んだそうだ。
私は死んだ後、学校の前で目を覚ました。
初めは気づかなかった。
学校の前で目が覚めた理由がわからなくて、教室に行ってみることにした。
自分の教室、2年3組に入ってはっとした。
私が知っている教室とは空気か違っていたから。
妙にしんとしていて、私の机の上に花瓶に刺さった花が置かれていたのだ。 白の何にも染まっていない花。純白の花が。
私の幼馴染で1番仲の良い紗依が数人の女の子に囲まれて泣いているのを見つけた。私はすぐ駆け寄った。
「紗依!どうしたの?!」
返事は帰ってこなかった。
周りの女の子達が紗依に向かって声をかける。
「紗依…泣かないで…」
「莉々が亡くなったなんて信じられない…」
私の名前だった。
最初は冗談だと思ってみんなにずっと話しかけていたけれど、目も合わせてくれなかった。ふと足元を見てみるとかすかに私が透けていた。やっと理解した。私は死んだのだと。
理解してからはなんだか不思議で、何をすればいいのかもわからなくてずっと教室で座っていた。ふと家族の様子が気になって家に帰ってみることにした。
「ただいま…」
誰にも聞こえてないであろう言葉をいって、ドアをすり抜けて家に入ってみる。本格的におばけみたいだなぁなんて考えていた。リビングから話し声が聞こえた。お父さんとお母さんだ。
「莉々…なんで…」
「・・・」
私が棺で寝ている前で、お母さんが泣いていた。泣いているお母さんの背中を、お父さんが何も言わずさすっていた。私の両親は普段あまり話しているのを見なかったので、初めて見る光景で衝撃を受けた。
私が死んだ3日後の土曜日、葬儀は行われた。
紗依や学校の友達が何人か来ていた。その中に気になる人がいた。紗依と同じく幼馴染の田幡春樹がいた。
小学生低学年の時、私たち3人は仲が良かった。泥団子も作った。かけっこもした。たくさんの時間を共有した。だが高学年に入って男女の壁ができはじめ、春樹とはどんどん遊ばなくなってしまった。
葬式にきてくれるんだ。と意外に思ってしまった。