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橘靖竜
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夜。
東京の雨は静かだった。
花子は駅前の歩道を歩いている。
傘をさしているが、
風で少し濡れていた。
今日は契約訪問日ではない。
ハヤトもいない。
ただの帰り道。
だが花子は少し疲れていた。
昼間の出来事。
会社への問い合わせ。
そして
マルトクの内部構造。
色々と
考えすぎた。
「少し歩こうかな」
そう思って遠回りしてしまった。
それが問題だった。
尾行
最初に気づいたのは
靴音。
後ろ。
同じ距離でついてくる。
花子は歩く速度を変える。
靴音も変わる。
振り向く。
男が二人。
スーツを着ているが雰囲気が違う。
会社員ではない。
花子の胸が少しだけ早くなる。
(偶然?)
もう一度歩く。
他人の靴音。
やはり同じ。
本社
同じ頃。
マルトク本社。
ハヤトの業務端末にログが出る。
観測対象:花子
位置変動:通常外
ハヤトは地図を見る。
駅前。
しかし別のログ。
外部監視信号
政府系アクセス
ハヤトの処理が止まる。
政府。
山田外相の調査ライン。
可能性が浮かぶ。
花子
花子は路地に入る。
街灯が少ない。
男たちの距離が近づく。
一人が声をかける。
「野村花子さんですね」
花子は止まって
振り向く。
「どちら様ですか」
男は笑う。
「ちょっと話を」
花子は冷静に答える。
「お断りします」
歩こうとする。
男が腕をつかもうとする。
その瞬間。
別の手が
男の手首を掴んだ。
村田
「やめとけ」
低い声。
男たちが振り向く。
そこに立っているのは
村田孝好。
小柄な体。
少し丸いシルエット。
短い茶髪。
色白。
雨で少し濡れている。
そして立ち方。
。
村田は男の手を離す。
「嫌がってる」
男が苛立つ。
「誰だお前」
村田は答える。
「通りすがり」
空気
三秒。
静かな緊張。
男の一人が言う。
「関係ないだろ」
村田は首をかしげる。
「あるだろ」
そして花子を見る。
「知り合いなんで」
花子は少し驚く。
契約上、
今日は会う日じゃない。
つまり。
完全に契約外。
小さな衝突
男が村田を押す。
「どけ」
村田は一歩下がる。
しかし倒れない。
体は軽く
バランスがいい。
激務で体型は丸いが
体幹は強い。
村田は言う。
「面倒なんで」
少し笑って、
「今日は帰ってください」
男が腕を振り上げる。
その前に
村田が手首を押さえる。
技術ではない。
ただの力の使い方。
男は舌打ちする。
もう一人が言う。
「……やめとけ」
理由は簡単。
村田の目。
怒っていない。
でも
引かない目。
男たちは手を離す。
「覚えてろ」
そう言って去る。
静寂
雨音だけ。
花子は村田を見る。
「どうして」
村田は肩をすくめる。
「散歩」
花子は少し笑う。
「本当ですか」
村田は少し考える。
「半分」
本当の理由
村田は言う。
「なんか嫌な感じしたんで」
花子は聞く。
「偶然ですか」
村田は首を振る。
「いや」
スマホを見せる。
メッセージ。
ハヤトから。
> 花子が駅前にいる
念のため確認してほしい
花子は少し目を見開く。
「ハヤトが?」
村田はうなずく。
「珍しいですよね」
本社
ハヤトの業務端末に
新しいログ。
観測
村田孝好
契約外介入
システム評価。
行動分類
非契約保護
これは
マルトクのモデルにない行動。
月影
同じログを
月影も見ていた。
そして小さく笑う。
「やっぱりな」
村田は
誰かを守るとき
契約を見ない。
花子
花子は傘を持ち直す。
そして言う。
「村田さん」
「はい」
「今日のこれは」
少し笑う。
「サービス外ですよね」
村田も笑う。
「完全に」
花子は言う。
「ありがとうございます」
村田は首をかく。
「いや」
そして言う。
「普通ですよ」
その夜
マルトクのシステムは
一つの新しいログを保存する。
村田孝好
契約外行動
対象:花子
分類:自発保護
これは小さなデータ。
だが。
会社にとっては
危険な兆候。
なぜなら
契約なしの優しさは
ビジネスモデルを壊す可能性がある。