💚「今夜の満月は、ストロベリームーンて言うんだよ」
深夜の誰もいない公園で、阿部ちゃんは、そう言うと、大きな目をくりくり輝かせて、俺の手を握った。ロマンチックなこと、可愛らしいことに本当にこの人は詳しい。
以前、なんでそんなに詳しいの?と聞いたことがある。
だって俺たちアイドルなんだよ?10代から20代の女の子が好きそうなものは必要な知識でしょ、とこともなげに言われたのを覚えている。
でも今この知識を披露されてる俺は、30代で、男だ。
もともと阿部ちゃんは、色んなことに好奇心が旺盛だ。知らないことを学ぶのは、とても刺激的で大好きなのだという。だから、こうして少女趣味なことにも偏りなく詳しいのは、知識を深掘りしていき、たどり着いてしまった阿部ちゃんなりの境地なのだろう。
🩷「何が言いたいの?阿部ちゃん」
え、わかんない?
と阿部ちゃんは意外そうな顔をした後で、ちょっと俯き加減になった。長い睫毛が影を落としている。
💚「俺がこの月を佐久間と見たい理由」
🩷「……苺がどうかした?」
💚「……もういい。そんなんじゃ翔太と変わんない」
🩷「なんでそこで翔太の名前が出て……あっ」
俺は、我がグループで最も恋愛に疎い男の名を聞いてやっと阿部ちゃんの意図に思い当たった。
🩷「なんか恋の話されてる?俺」
💚「だよっ」
舌をちょろりと出して、あっかんべーをして見せると、阿部ちゃんはわざわざ遠く離れたベンチに軽やかに移動した。
やることがいちいち嘘みたいに可愛らしいのに、それを成立させてしまう乙女な世界観を、阿部ちゃんは持っている。
慌てて追いかけて、隣りに座った。
🩷「それって、期待していいの?俺がその、阿部ちゃんと」
💚「どうしようかな。付き合うのに鈍い彼氏とか困るしなぁ」
阿部ちゃんは腕組みをして本気で悩んでいるようにみせた。俺はずっと阿部ちゃんが好きで、阿部ちゃんしかそういう相手に考えられなくて、もしその念願が叶うなら最高に幸せなんだけど。
🩷「ねぇ、俺、本気で阿部ちゃんと付き合いたいんだけど」
💚「言ったね?」
阿部ちゃんはふふふ、と笑う。
満月に照らされて、笑った阿部ちゃんは、その持ち前の可愛らしさに妖艶な美しさまでをも孕んでいた。とにかく、ものすごく綺麗に見えたってことだ。
💚「じゃあ、お受けしましょう」
阿部ちゃんはそう言うと、月明かりの下、そっと目を閉じた。
おわり。
コメント
14件
や〜〜💜💚からの🩷💚って😭😭😭 まきぴよさんのお話で読めるなんてめちゃくちゃ嬉しいです〜ありがとうございます💓 🩷💚かわいいよー、さっくんがわたわたしてるのが🥺一見💚🩷ぽそうな🩷💚って一番理想です🥹💓
きゃーーーーーーー💚💚💚💚💚 共通点ゼロの両思いってなんでこんなに可愛いの。駆け引きしてるようでできてないのも可愛い🥺
ぎゃーー無理我が推しかわいいすぎる💚🩷